「その純粋さを利用されないようにするんだな」
彼が発した不吉な言葉。
その理由が俺にはわからなかった。
だけど、彼は頼れる人で尊敬できる先輩だ。
その人が言う言葉なのだから何かしらの意味があるのだろう。
アンデット……
一万年前に地球の覇者となる権利を駆けて争いし52体の始祖。
そいつらは不死性を持ち、近代兵器すら凌駕する戦闘力を持っている。
やつらは封印が解放され外の世界に解き放たれた。
アンデットたちは人間がこの世界の覇者であることに納得していない。
無差別に人を襲う。
そこに一定の目的は存在していない。
ただ、目の前で他種が繁栄しているのが許せないという怒りの発露に過ぎない。
アンデット同士の戦いの片手間に行われる殺戮だがそこには確実な被害者が出る。
そんな人たちを護るために俺は仮面ライダーになった。
BORADが開発したアンデットに対抗するシステム。
アンデットと融合することにより同等の力を得られる画期的なシステムだ。
その力でアンデットを封印し人々を守るこの仕事に誇りを持っている。
辛く厳しいけれどもそれだけにやりがいがある。
だけど……そんな理想も一夜にして潰えた。
俺が所属する組織BORADが一体のアンデットに破壊されたのだ。
緊急収集に駆けつけたが既に研究所は破壊されアンデットの眷属が暴れている。
俺は仮面ライダーに変身すると眷属を叩き落し、元凶を追い詰めた。
だけど、未熟な俺はそのアンデットに敵わなくて……
倒れた視線の先に見えたのは先輩の姿だった。
物陰で俺のことを見つめている。
彼は俺がやられているのを見ていて何もしない。
ただ、見ているだけだ。
そして、その姿が消えた。
「何故、何故見てるんです!?」
剣崎は布団を跳ね除け目覚めた。
目の前に広がる風景は壊滅した研究所ではなく和室。
殺風景な一部屋だった。
「……ここは?」
全身が汗で濡れていて気持ちが悪い。
恐らくは先ほどの悪夢のせいだろう。
自分の所属していた組織の壊滅。
信じていた先輩の不可解な行動。
そして、気付けば見知らぬ部屋。
訳が分からない。
確かローカストアンデットはどうにか封印したはずだが……
「気付いたようですね」
襖が開けられ一人の少年が顔を出す。
赤毛でクセ毛が目立つ単発の少年。
目つきが少し悪いが口元は落ち着いており印象として悪くは無い。
「君は一体……?」
剣崎はこの見知らぬ少年に尋ねる。
彼が自分をここまで運んできたというのか。
だとしたら何者だというんだ。
「俺は衛宮士郎って言います」
「君が俺をここに運んだのか?」
「それについては食事でもしながら話しましょう。お腹、空いてないですか?」
士郎の問いに剣崎は自分が空腹状態であることを自覚する。
アパートを追い出されたせいもあって昨日から何も食べていなかった。
「俺は居間にいますんで落ち着いたら来て下さい」
彼はそういうとそのまま、去っていった。
何者かは分からないが敵意は感じられない。
でも、BORAD関係者でもないようだが……
疑問を浮かべていても仕方ないと思い、剣崎は立ち上がる。
彼は居間の位置を言っていかなかったがまぁ、一つの家だ歩いていれば否応なしにたどり着くだろう。
ANOTHER PLAYER…
LogNo002 <<衝撃の機動>>
剣崎が居間にやってくるとそこには二人の少年が座っていた。
赤い目の少年……シンは剣崎の顔を見ると立ち上がる。
「あんたがBORAD唯一の生存者か」
「君は……?」
「俺はシン=アスカ。ザフト軍のものだ」
「ザフト……コーディネイターの軍隊か。それが何のようだ?」
「あんたにって訳じゃないけど、BORADに用があったんだ。
でも、BORADは壊滅しちゃったし、この際、アンタにでも……」
剣崎は急にシンの胸倉を掴み上げた。
頭一つ以上違う、身長の差からシンの体が持ち上がる。
「BORADが壊滅したのか!?」
昨日の惨状は覚えているがそれでも本当になくなったとは信じられなかった。
考えてみれば先ほどの唯一の生存者と言っている。
全滅したというのか……
その絶望感が彼を暴力的に振るわせる。
だが、シンは剣崎の手を強引に振り解いた。
「何するんだよ!」
「本当にBORADが壊滅したのか聞いてるんだ!」
「そんなのあの状況を見れば分かるだろ。あの化け物に襲われてたんだ。」
「誰も生き残ってなかったのか!?」
「そんなの知るかよ。俺だって昨日、あの化け物に気絶させられて気付けばここにいたんだ」
「だったら、誰か生存者がいたかも知れないじゃないか!?」
二人は次第に感情的に言葉を振るっていく。
剣崎の不安による怒りにシンが過剰に反応していた。
このままでは殴り合いにも発展しかけない。
「おい、二人とも止めろ」
その状況を見て士郎が二人の間に入る。
「どけよ、士郎!」
シンが叫ぶ。
士郎はその目を睨んだ。
「落ち着けよ。何でお前とこの人が喧嘩をしてるんだ」
「……それは」
冷静に考えれば喧嘩する必然性も無い。
「……そうだな」
そもそも、何であんなにヒートアップしたかも良く分からなかった。
士郎が中間に入ることにより二人は落ち着くことになる。
「とりあえず、朝食でもとりながら……」
「士郎〜、今日の朝食はなに〜」
そこに一人の女性がやってきた。
ショートカットの見るからに明るそうな女性だ。
彼女は剣崎とシンに挟まれている士郎を見て固まっている。
「あら、昨日に引き続きなんか増えてるわね」
「色々とあってね」
これが女性でなくて良かったと士郎は内心、ほっとする。
その場合は色々と他に問題が出てくるからだ。倫理観的に。
そのまま、五人は朝食をとることとなる。
「この二人は士郎とはどういう関係なの。どっちも随分と美形だけど」
先ほどやってきた女性。
士郎の知人で藤村大河と言い。昔から彼の姉代わりをしているらしい。
良くここにはご飯をたかりに来るとだけ二人に説明していた。
「昨晩、翔が連れてきたんだ」
「えっ、また倒れてたの?」
「それは翔に聞いてくれよ。俺だって彼らが何者なのか知らないんだからさ」
士郎にとってもこの二人の来客は完全なイレギュラーであった。
そもそも、昨日のことからにして色々と問題があったのだが。
偶々、通りかかった道で士郎は倒れている翔を発見した。
何事かと彼は慌てて、駆け寄る。
息があるのを確認し気絶しているだけだと知ると救急車を呼ぼうとした。
その矢先に翔のお腹が盛大に鳴った。
そして、目を覚ました彼は
「食事を……」
と、呟いたものだからそのまま、家に連れ帰り食事を用意してやった。
話を聞けば旅行者であるらしく賃金の類を一切、もっていなかった。
その為に士郎は彼を家に置いておく事にしたのだが
昨夜、突然外に出かけると豪雨の中、シンと剣崎を担いで戻ってきた。
彼の行動には唖然とさせられた士郎だが生来のお人よしからその二人を介抱する事となる。
その結果が今な訳だが……
「拾った」
翔はそれしか答えない。
シンと剣崎、どちらに尋ねても微妙にはぐらかされてしまう。
事故にあったというが二人のどちらにも外傷は無く。
何故、倒れていたのかも有耶無耶となった。
「俺は学校に行きますから。その間、自由にしていてください」
その後、士郎と大河は学校に行ってしまった。
取り残された三人はそこでようやく、本題に入ることが可能となる。
「結局、BORADはどうなったんだ?」
食事中の話などから最終的に彼らを連れてきた翔に剣崎が尋ねる。
「知らん」
「知らないって何も調べてこなかったのか?」
「俺にとって関係ないことだからな」
「なんだとっ!」
剣崎は強くテーブルを叩いた。
衝撃に御茶が零れかけるが素早くシンはそれを掴んで退避させる。
「そんなに気になるならその目で見に行けば良い」
翔の言葉に二人は言われてみればその通りだと納得する。
誰かから話を聞くよりはその方がよっぽど確実だ。
人類基盤史研究所
そこはもはや、廃墟と化していた。
襲撃により破壊されたとかではなく。
ここに何かがあった痕跡が消されている。
「昨日は死体が転がってたはずなのに」
シンが昨日、確認した場所にローカストの眷属や研究所所員の死体が無い。
誰かが昨日までの内に回収したというのか。
「何が……一体、何が起きてるんだ……!?」
建物内部も機材などが全て存在していない。
何の研究をしていたのかその痕跡が抹消されている。
「ここもか……昨日、襲撃されたって言うのに既に証拠の隠蔽が済んでるなんて
随分と手際が良い組織だなBORADってのは」
シンは内部を観察しながら剣崎に語りかける。
彼は何も返さなかった。
ショックが大きかったのだろうか。
確かに自分が所属していた組織を失う悲しみは何となくだが理解できる。
だが、ここは立ち止まる場面ではないだろうというのが彼の考えだ。
一人で更に奥に進んでいく。
命令でBORADに行く事になっていたがこれではどうしようもない。
何をするのかも全部、BORADについてからだったの仕方が無かった。
壊滅の件を上に報告するしかないだろう。
「ん……あれは?」
何もかも撤収された中でこれ見よがしに機材がテーブルの上に置いてある。
何かのアンテナとパソコン。
「何に使うんだ?」
外から見ていてもらちがあかないので彼はパソコンを起動させる。
そして、そこに写された文字には
「アンデットサーチャー……」
と書かれていた。
マップが表示されるが何の反応も無い。
良く、見れば何かが切れている。
恐らく、アンテナを設置しなければ上手く動かないのだろう。
「アンデットってゾンビとかそういうのを言うんだっけ……一体、何の研究をしてたんだ?」
アンデットなどといわれてもシンには今一、ピンとこない。
「あいつに聞けば何か分かるのか?」
シンはそのアンテナとパソコンを持つと彼のほうへと歩いていった。
「俺は一体、どうすれば良いんです橘さん……」
何をすれば良いのか分からない。
アンデットを封印するという仕事もBORADがこのありさまではどうしようもない。
頼れる仲間は誰一人として存在していない。
「おい、アンタ。アンデットってのはなんだ?」
苦悩する剣崎にシンは無遠慮に質問を投げつける。
「何処でその言葉を?」
振り返り、尋ね返す。
アンデットは極秘事項のはず。
仮面ライダーが都市伝説として伝わっているのは知っているが
アンデット自体は化け物や怪人などのはずだ。
「これにアンデットサーチャーって書いてある。これ、BORADの機材だろ。
そのアンデットのを探してお前達は何をしようとしてたんだ?」
シンは手にしたアンテナを見せる。
「アンデットサーチャーだって!?残ってたのか」
「一つだけ置いてあった。目立つ場所にあったしあえて残していったんだろうな」
「残した……そういえば誰が研究所を片付けていったんだ?」
「……知らないのか?」
「あぁ、BORADはこの研究所一つだけのはず……俺が知る限りじゃ」
「それじゃ、その上の組織がやったんだろ。末端の人員にはそういう構造ってのは良く分からないのは当たり前だしな」
「BORADの上位組織がいるって言うのか?」
「そうじゃなきゃ説明がつかないだろ」
「それじゃ、何で彼らは俺に何も言ってこない?」
「さぁな。下っ端に説明する必要はないのか……それとも、これが答えなんじゃないのか?」
シンが持つアンデットサーチャー。
唯一、これが残されたことこそが剣崎に対する命令なのかも知れない。
「……俺にアンデットを探して封印しろ……そういうことなのか?」
「俺が知るわけないだろ。で、結局アンデットってのは何なんだ?」
「……ダメだ。言うことは出来ない」
「BORADは壊滅しても機密事項は守るってことか」
「……そうだ」
「意外と口は堅いようだな。だけど、昨日あんな化け物を見ておいてはい、そうですかって引き下がれないんだよ。
アレは一体、なんだって言うんだ。まさか、アレが噂の怪人って奴なのか!?」
「それは……」
「それと昨日、その化け物と戦ってたあの鎧着てた奴。アレ、お前だろ。
BORADは一体、何をしていたんだ。まさか、アンタがあの仮面ライダーなのか?」
「五月蝿い!関係ないのに関わってくるな。お前に一体、何が出来るって言うんだ!?」
「俺にだって戦う力はある!もし、まだあんな化け物がいて昨日みたいなことをするって言うんなら。
俺はそれを見過ごせない!」
シンのその強い瞳に剣崎は気おされた。
昨日、ローカストアンデットを目の当たりにしたにも関わらず彼の闘争心は死んでいない。
むしろ、燃え上がっている。
「……わかった」
衛宮邸
衛宮士郎が住む日本家屋である。
その土地は大きく屋敷と呼んでも差し支えがないほどだ。
士郎は学校を終えると真っ直ぐ帰ってきた。
昨日、運ばれてきたシンと剣崎が心配だったからだ。
喧嘩していなければ良いが。
翔の性格からしてあの二人の仲裁に入るとは思えない。
「はぁ……だけど、困っている人がいたら助けなきゃな」
彼はそう言い聞かせると門を潜った。
「違う。もう少し右だ」
「さっきは左とか言ってなかったか?」
「行き過ぎなんだよ。もうちょっと丁寧にしろ」
「ったく、偉そうに……」
庭のほうから二人の声が聞こえてくる。
士郎は驚いてそのまま、庭のほうへと走っていた。
だが、そこに二人の姿は無い。
「これでどうだ?」
頭上からシンの声が聞こえ士郎は上を見上げた。
そこには屋根に上りレーダーを取り付けてるシンの姿があった。
「おい、なにやってんだ!?」
士郎は突然、何故か機器を勝手に増設してるシンに驚く。
シンはその声に気付き顔を向ける。
「あぁ、ちょっとアンテナ、付けさせてもらってるから」
「なんで!?」
「必要だからだよ」
「何でオレの家につけてんだよ」
「なんでってアンテナが必要だからだろ」
「だぁかぁらぁ。必要なのはわかったけど俺の家につける必要はないだろ」
士郎はシンに言葉が通じないので流石にイライラを募らせていった。
そこに剣崎が現れる。
「士郎。すまないが今日からここに居候させてくれ」
「……はい?」
「実は昨日、アパートを追い出されちゃってさ。住むところが無かったんだ。
家も広くて部屋も空いてるみたいだし別に良いだろ?」
士郎は剣崎の無遠慮にも程がある要求に空いた口が塞がらなかった。
何を言っているんだ。
まさか、一日、介抱してあげただけで部屋を貸してくれと要求されるとは思っていなかった。
「おい、剣崎さん。アンテナの位置はこれで良いのか?」
「あぁ、大丈夫だ」
剣崎のOKが出るとシンはそのまま、屋根から飛び降りてくる。
そして、そのまま着地し立ち上がった。
アレだけの高さから飛び降りたのに痛がりもしない。
「あぁ、そうだ。俺も今日から住むことにしたから」
シンの言葉に士郎は更に追い討ちをかけられる。
この二人には常識というものが存在しないのだろうか。
普通、こんなことを頼まれても断るに決まっている。
「……あぁ、分かりましたよ」
だが、この衛宮士郎というのは度を越えたお人好しだった。
「だけど、ここに住むからには家事の手伝いをしてもらいますからね」
士郎の言葉に二人は渋い顔をするが頷いた。
流石にそこを飲まなければいけないような気がしたからだ。
言われなければやる気は絶対になかった。
士郎はそれを確認すると縁側から部屋の中に入り、しばらくして戻ってきた。
そして、メモと財布をシンに渡す。
「これは今日の夕食の材料。商店街があるからそこで買うこと」
「あ……あぁ」
「分かったら。さっさと行く!」
士郎は玄関を指差す。
シンはそのまま、促されるがままに買い物へと旅立っていった。
その様子を見ていて剣崎はソロリソロリとその場から逃げ出そうとするが。
「剣崎さんはとりあえず、部屋の掃除からしてもらいます」
士郎からは逃げられなかった。
「あぁ、何で俺が買い物なんてしなきゃならないんだ……」
居候の身分になるのだから仕方ないことだと一応は納得しているので素直に商店街に向かう。
だが、詳しい場所を聞いていなかったので道に迷ってしまった。
「ここ何処だよ?」
ただでさえ土地勘が聞かない旅先だ。
自分が何処にいるかさえも既に分かっていない。
流石に記憶力はあるので衛宮家には戻れるが……
どこかに看板でもないものかとキョロキョロしていると見たことのある顔を発見する。
「お前は……」
シンが歩み寄るとその人物、翔は振り向いた。
「こんなところで何をしてるんだ?」
「気になる奴らがいてな」
シンの問いに翔は目の前にある公園で遊ぶ少女達を指差した。
小学校高学年……なのだろうか。
四人の少女が遊んでいる。
「確かに可愛いけど……流石にずっと見てると噂されるぞ……多分」
シンは翔の容姿をマジマジとみて呟く。
幼い顔立ちであり遠くからなら女の子に見間違う可能性だってある。
だが、流石にそれでもさっきみたいにジーッと見つめてれば恐がられるだろう。
その制か少女達はこちらを見ていた。
「変質者がいる」
ツインテールの少女が放った言葉にシンはショックをうけた。
既に仲間にされている。
「みっちゃん!関わらないほうが良いよ」
黒い短い髪の少女がツインテールの少女をたしなめる。
完全に変質者扱いですね。
先端が白いショートカットの女の子なんて恐がってるし。
「行くぞ。あんまり居ると警察、呼ばれる」
シンは翔を連れて行こうとするが彼は動かない。
「おい」
「行きたければ行けば良い。俺はここにいる」
「あのなぁ。本当に捕まっても知らないぞ」
「何でだ?」
「何でも何も幼女をずっと眺めてるのは犯罪なの。世間一般的に見れば。
法は意外に恐いんだぞ。気をつけろよ」
シンは翔の手を引いて連れて行こうとする。
「大変だ。誘拐されようとしてる!」
「け、警察に電話しませんと!!」
その状況に少女達が恐慌状態に陥った。
「って、俺だけが変態扱いかよ!」
何時の間にかシンが翔を誘拐しているように捉えられていたらしい。
そもそもが翔に絡んでるように見えていたらしい。
翔が一応、弁明してくれることで誤解は解けた。
「すみません、勝手に勘違いしちゃって」
一番、しっかりしてそうな黒髪の少女…千佳が頭を下げる。
シンと翔はベンチに座っていた。
何故か色々とごたごたがあり彼女達と打ち解けることとなっている。
「別に良いって」
変質者扱いは流石にショックだが小さな女の子相手に本当に怒ることも無い。
でも、やっぱり、心では涙を流していた。
そんなシンの顔をツインテールの少女はマジマジと見つめていた。
「みっちゃん、あんまり見るのは失礼だよ」
「あぁ、うん。でも、綺麗な赤色だなって」
ツインテールの少女…美羽はベンチから降りて千佳の横に立つ。
「確かに綺麗な色ですわね。もしかしてコーディネイターの方ですか?」
髪の長い金髪の少女…アナもシンの目を絶賛していた。
子供からすれば珍しいのだろう。
まぁ、大人からしても赤い目といのは珍しいが。
「あぁ、そうだけど」
「やっぱり。でも、珍しいですわね。コーディネイターの方が日本にいるのは」
彼女の言うとおり日本でコーディネイターはほとんど見受けられない。
そもそも、コーディネイター自体が日本では浸透していなかった。
どっかの国の人のことを指すのだと勘違いしている子供も多いらしい。
「アナちゃん、詳しいね」
「向こうにコーディネイターの友達もいましたから」
「へぇ、レアもんなんだ」
美羽はまた、違う意味の好機的な意味でシンを見つめた。
「だから、失礼だって……本当、すみません」
千佳は美羽の頭をはたいて頭を下げた。
「別に良いって。それより、遊んでるところ邪魔して悪かったな。こいつは置いてくけど……
まぁ、何もしないと思うから気にしないでくれ」
シンはベンチに座っている翔を置いて立ち上がった。
彼女達との交流も良いものだが今は買い物を任されている身。
ここで立ち止まるわけにはいかないのだ。
血涙を飲んで去らねばならない。
立ち去ろうとしたとき、草むらに何か違和感を感じシンは立ち止まった。
普通の植物とは違う何か……
シンはその方向に向かって歩いていく。
「あれ……どうしたんです?」
千佳がシンの不思議な行動に後を追おうとするとそれを翔が止めた。
シンは更に進む一定の距離を空け立ち止まる。
「誰だ!?」
シンが叫ぶと同時に草むらから突如として何かが襲い掛かる。
シンはバックステップでそれを回避する。
それは植物のツルのようなものだった。
「まさか……アンデット!?」
「アンデットは人間を襲う怪物だ。決して死なず、ライダーシステムで封印するしか倒す方法が無い。
だから、もしアンデットと出会ったら迷わず俺を呼ぶんだ」
剣崎の言葉がシンの脳裏に再生される。
だが、既にそのアンデットはその姿をシンの前に晒していた。
自分の背後には四人の子供。
彼女達は例外なくその存在に怯えている。
「くそ……」
シンは携帯電話を取り出そうとするがアンデットはツルを少女達に向かって伸ばす。
それをシンは掴んで止めた。
「小さい子供から狙うって言うのか……そんなこと絶対にさせない!」
シンは片手でナイフを取り出すとツルを断ち切る。
だが、アンデットは動じずに次々にツルを放ってきた。
シンはそれを全てナイフで切り裂いていく。
「翔、そいつらを連れて逃げろ。そして、剣崎さんを呼んでくれ。士郎の家にいるはずだ!」
シンは防戦の中、叫ぶ。
その言葉を聴いた翔は頷くと怯える彼女達を促し、公園から出て行った。
これでひとまず彼女達の危険はなくなったが……
「くっ!」
腕がツルで絡め捕られる。
凄まじい力で締め上げられ肉が裂かれそうそうだ。
「何てバカ力だよ……」
シンはアンデットの脅威を前にしてもあきらめていない。
その瞳の輝きは一切、死んでいなかった。
脳裏に移るのは過去。二年前のあの日。
まだ、コーディネイターとナチュラルが戦争をしていたあの日。
自分の故郷が戦火に焼かれ、家族を失った。
あの時の悲しみ……忘れた日など一度としてない。
そして、自分に力がないことを悔やみ……
もう、二度とあんな悲劇を起さないことを誓った。
亡き両親と妹に……
「もう、俺はあの時の力が無い子供じゃない……」
シンの右の拳が光り輝く。
描かれる幾何学模様の紋章。
その光は広がりシンを飲み込んでいった。
「俺には力がある……このインパルスで俺は力なき人々を護ってみせる!」
シンは力を込めてプラントアンデットを手繰り寄せた。
そして、蹴りを喰らわせる。
ツルから腕は解放された。
周囲に光の粒子が現れ、それらは全てシンの体の中に吸い込まれていった。
「インパルス機動……完全稼動でなくてもガンダムの力なら!」
シンは手を前にかがれると光の粒子が組みあがり一つの筒を作り上げる。
シンがそれを握ると筒の先端から光り輝く刃が出現した。
「武装選択ヴァジュラ……並のモビルスーツと同じぐらいには戦えるはずだ!」
シンはプラントアンデットに向かって駆け出した。
背後から光が発せられそのスピードが一気に加速する。
プラントアンデットは迎撃にツルを放つがそれら全てをビームサーベルで切り裂いた。
「くらえっ!」
距離を詰め、ヴァジュラを振り下ろす。
ビームの刃はプラントアンデットの体を焼くが完全に断てない。
強力な外皮がビームの熱を持って仕手も完全な切断を齎せないのだ。
「なんて、硬さだ!?」
この出力でもモビルスーツの装甲だって切り裂けるはずなのに。
アンデットという化け物の防御力はシンの予想を上回っていた。
プラントアンデットは驚愕するシンの胸部に拳を叩き込む。
シンは衝撃に吹き飛ばされ後退した。
昨夜は一撃で気絶したが……
「どうやらフェイズシフトは破れないみたいだな」
シンは不適な笑みを浮かべる。
その表情にダメージは一切無い。
彼が言うガンダムの力が彼にここまでの強さを与えているのは明白だろう。
インパルス……衝撃の名を冠するこの力は不死生物に届くのか。
シンは再び、プラントアンデットに飛び込もうとする。
だが、突如としてプラントアンデットが吹き飛ばされた。
「なっ!?」
何が起こったのかわからない。
だが、何かがプラントアンデットに襲い掛かったのは明白だった。
そして、それはプラントアンデットの背後から姿を現す。
巨大な赤い複眼を持った黒きスーツの戦士。
その手には弓のような武器を携えている。
「お前は……一体!?」
突如として目の前に現れた謎の戦士。
彼は一体何者なのか……