その姿は黒き狩人。

手にした弓の形をした刃にて敵を切り刻む。

その速度は疾風。

素早い身のこなしに誰も彼にはついていけない。

バラバラと地面に落ちるツル。

プラントアンデットはなす術も無く地面に倒れた。

それを見下ろし荒々しき体を奮わせる黒き者。

シンは戦慄したその強さ……その姿に

強い。圧倒的強さだ。

だが、それだけではシンは怯えない。

強いだけじゃないのだ。

その全身から殺気が漂っている。

敵は殺すというだけ意思。

それしか奴には感じられない。

周囲の総てを巻き込んで何もかもを破壊しつくそうという衝動。

それは人間の理解の範疇を超えた生物だった。

だが、相手はアンデットだ。

どれだけ斬ろうが、殴ろうが死にはしないのだ。

どれだけの破壊衝動をぶつけようが終わりは来ない。

アンデット相手に強さなど無意味なのだ。

どうすると……

その黒き者は一枚のカードを取り出した。

それにシンは見覚えがあった。

剣崎さんに見せてもらったカードだ。

倒したアンデットを封印することが出来る唯一のアイテム。

プロパーベスタ

そのカードは黒き者の手から放たれ倒れたプラントアンデットの体に吸い込まれていく。

そして、カードは突き刺さり、アンデットは粒子となってカードに吸い込まれていった。

絵柄にはハートの7、バイオと描かれていた。

そのカードは黒き者の手に収まる。

「お前は……一体?」

シンは驚愕した。

あれはブレイドと同じ仮面ライダーだというのか。

だが、あの姿は……

黒き者はシンを一瞥する。

だが、そのまま去っていこうとした。

「まて……」

シンはその肩を掴み彼を止めようとする。

その瞬間、シンの体が宙に浮いた。

そして、次にシンが見た光景は大空。

背中には鈍痛が通り抜ける。

「くっ!」

シンは即座に立ち上がる。

投げ飛ばされたのか……

これでもシンはザフトで訓練を受けた軍人。

生身での格闘戦はアカデミーの中でもトップクラスだったのだ。

それなのに相手はシンに何の抵抗もさせなかった。

強すぎる……

「邪魔をするな」

相手は弓のような刃をシンに向ける。

殺気だった声。

シンはヴァジュラを構える。

先ほどの力を見る限り、一対一の戦いでは分が悪いだろう。

だけど、ここでこいつを見逃してはいけない気がした。

食い止めなくては……

「シン!」

背後から声、それは剣崎の声だ。

翔が呼んでくれたのだろう。

これで形勢は逆転するはずだ。

「アンデットは!?」

「こいつが封印した」

「こいつが……まさか、アンデットはライダーシステム以外では封印できないはずだ」

「事実だ。奴はオレの目の前でアンデットをカードに封印しやがった」

剣崎はシンの横に並び黒い者を睨む。

間違いなく人間ではない。

だが、仮面ライダーにも思えなかった。

ならば……アンデットだとでも言うのか……

「お前は仲間なのか……?」

剣崎が尋ねる。

だが、返答は刃を持って返された。

振り下ろされる刃は剣崎に向かって振り下ろされる。

シンは剣崎を弾き飛ばしヴァジュラにてその刃を受け止める。

「剣崎さん。何、寝ぼけたこと言ってるんだよ。こいつはさっきも俺を攻撃した。敵だ!」

シンは一旦、距離をとる。

ヴァジュラは出力は落ちているといってもビームにより形成される刃。

ただの金属なら溶解するほどの出力のはずなのに。

相手の武器は一切の損傷が認められなかった。

「敵……そうなのか……同じアンデットを封印できる仲間を見つけたと思ったのに……」

剣崎はポケットから箱のようなものを取り出す。

それを腰につけると端からトランプのようなものが飛び出し、一巡。

ベルトとなりて腰に固定される。

そして、一枚のカードを取り出した。

絵柄はスペードのA、カブトムシの絵柄にチェンジと書かれている。

それをベルトの横のスリットから装填するとレバーを構えた。

「変身!」

叫ぶとレバーを入れる。

するとベルトに入ったスペードのAは反転しスペードの紋章が出現した。

それと同時に青きオリハルコンエレメントが出現する。

剣崎はその壁に向かって走り青き壁を通り抜けた。

すると剣崎の姿は一瞬にして仮面ライダーブレイドへと変身する。

その姿に黒き者は驚く。

「お前が仮面ライダーか」

「あぁ、そうだ。俺は仮面ライダーブレイド。お前は一体何者なんだ?」

「……カリス」

そう名乗った黒き者は刃を持ってブレイドに襲い掛かる。

ブレイドはそれを剣……ブレイラウザーで受け止めようとするがそのまま、直撃を食らう。

吹き上がる火花、衝撃にブレイドの体が弾き飛ばされる。

「これ以上、人間がバトルファイトに介入するな」

カリスはそう告げるとそのまま、去っていった。

シンはその後を追おうかと思うが立ち止まる。

今、ここで追いかけようとも何もならない。

逆に排除されてしまうだろう。

退いてくれただけ感謝しなければならない。

「にしても……剣崎さん」

シンは倒れているブレイドに手を差し伸べる。

そして、そのまま助け起した。

「あんた、かっこ悪いな」

一撃でのされて終わりとは期待はずれもいいところだ。

「五月蝿いなッ!君だって何も出来て無かっただろ」

「まぁ、そうだけど。にしてもあいつは一体……?」

「それは分からないけど……俺や橘さんの他にもアンデットが封印できる奴がいるなんて……

あいつはアンデットなのか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ANOTHER PLAYER…

LogNo003 <<魂を継ぐ者>>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にこのアンデットサーチャーってのは役に立つのか?」

シンがパソコンのキーボードを叩きながら尋ねる。

剣崎はベッドの上でブレイバックルを眺めうつむいていた。

「あぁ、さっきだって反応があったからアレだけ早く駆けつけられたんだ」

「あれで?」

「しょうがないだろ。瞬間移動とか出来るわけじゃないんだ」

「まぁ、そりゃそうか」

シンはアンデットサーチャーを待機状態に戻すと立ち上がる。

「結局、アンデットサーチャーが反応するまで受動的に動かなきゃならないのか?」

「いや、一応市内のパトロールもするつもりだけど」

「でもさ。それでも結局、受けて側になっちまうよな」

「しょうがないだろ。アンデットサーチャーはアンデットが戦うときの波動を感知して反応するんだ。

つまり、アンデット同士と戦っているか人を襲っているときにしか反応しない」

「でも、それじゃ被害が広がるだけだ」

「だったらどうしろっていうんだ!!お前がアンデットの居場所を全部、見つけるようなものを開発してくれるのか。

コーディネイター!!」

「コーディネイターだからって何でもできるわけじゃないんだよ!!」

二人は良い争いを開始する。

二人とも切れやすい性格なので二人で放置していると何時の間にか口げんかに発展するのが常だった。

 

「まぁた。やってるよ」

士郎はため息を吐く。

何をしているのかは知らないがあんな大声で喧嘩するのは止めて欲しい。

何を言ってるのかも良く聞き取れないけど。

「それで結局、居候を許しちゃったんですか?」

髪の長い大人しそうな少女が士郎に御茶を差し出す。

「翔くんもどうぞ」

テーブル前で正座していた翔にもお茶を差し出した。

翔はお辞儀するとそれをすすり始める。

「まぁ、アパートも追い出されてお金もないみたいだし……成り行き任せって言うか」

「ふふ、先輩は優しいですね。でも、あまり無理しないでくださいね」

少女は優しい微笑を向ける。

「ん?何でだ。桜」

「何だかこのまま、色々な人を居候させてしまいそうで……」

「そんなまさか。わざわざ、俺の家に住もうとする奴なんていないよ」

士郎は桜の心配性に笑っている。

まぁ、何時まで笑っていられるかは不明だが。

「まぁ、藤ねぇにも色々といわれたけどあの二人、それなりに礼儀はあるし、男だからOKだしてくれたし。

家事さえ手伝ってくれれば別に俺のほうから言うことはないかな」

だから、心配なのだと桜は思うが彼の笑顔を見てると中々、良い出せなかった。

 

次の日

シンは士郎から頼まれた買い物をすませていた。

時間はおよそ三時。学校帰りの小学生などの姿を見かけるようになる。

夕食の買出しに出かける主婦の姿もちらほらと見られる時間だ。

メモ用紙には商店街の店や値切りの仕方などビッシリと書かれている。

「しっかりしているというかせこいというか……」

シンはそのメモどおりの買い物を終えてため息を吐いた。

現在、四人もの男が暮らしてるために買い物量が多い。

この程度の重さならたいしたことは無いが慣れない買い物のせいで疲れていた。

暖かい日差しと心地よい風もこうも疲れていると対して感じられない。

「ったく、剣崎さんは用事があるとか言ってどっかいっちまうし、翔の奴もフラッと何処かに行くし……

まさか、買い物係になるんじゃないだろうな」

これが毎日続くのかと思うとため息が出てくる。

そもそも、ザフトの命令でこの街に着たのに何でこんなことをしてるんだと言う疑問が浮かび上がってきた。

別に自分まで衛宮家で居候する理由など存在しないのだ。

宿泊施設ならザフトのほうで用意してもらえるし。

ただ、何となく成り行き任せでという感が強い。

シンは不正不満をグチグチこぼしながら歩いていると目の前に見覚えのある姿を見かけた。

「翔!」

シンはその後姿に声をかける。

背の小さな少年は振り向くとシンを見上げた。

「シンか」

「お前は仕事もしないで何やってんだよ!」

シンはそう叫ぶと彼の背後にいる人物達に気付く。

昨日の少女達だ。

「あっ、昨日はどうも」

「お前達か。昨日の今日なのに良くこんなところに来れるな」

場所も場所で昨日、プラントアンデットが出現した公園だ。

普通、あんな化け物と出会った場所などしばらく立ち寄りたくもないはずだが。

「いや、まぁそうなんですけど」

黒い髪の平凡そうな少女が隣のツインテールの少女を見る。

「いや、またでないかなって」

彼女は平然とそんなことを口にした。

「はぁ!?本当に出たらどうする気だよ」

「まぁ、どうにかなるんじゃない?」

美羽の言葉にシンは唖然とする。

流石は現代っ子なのかバカなのか……

まぁ、後者だろう。

「でも、昨日の化け物どうしたんですか?ニュースにもなってなかったみたいですけど」

千佳がシンに尋ねる。

そういう話を翔としていた訳ではないのか。

「あぁ、あれなら大丈夫だ。もう出ないよ」

「……倒したんですか?」

凄く疑っている。

確かに見た目には普通の高校生でしかないシンがあんな化け物を倒せるとは思えないだろう。

実際、彼が倒したわけではないが。

「俺じゃないけどさ。でも、気をつけろよ。また、いつあんな化け物が出てくるか分からないんだから」

剣崎の話ではアンデットはこの街に潜伏している。

全部で52体。

何体かは既に封印されているから実際にはそれよりも少ないが。

何時、人間にその毒牙を向けるかは不明なのだ。

「ほら、やっぱり私が言ったとおりだった」

「そ、そうだね」

「まぁ、少し頼り無さそうですものね」

少し離れた位置で美羽、茉莉、アナがゴニョゴニョ内緒話

「そこ!聞こえてるぞ」

シンは少し怒った声で言った。

その声に彼女達は驚き苦笑いを浮かべている。

「本当のことだろ」

「そうだけどさ……」

翔の言葉に反論することも出来ないが一応、助けようとしてああいう態度にとられるのも釈然としない。

「あっ、昨日はどうもありがとうございました」

千佳が思い出したかのようにお辞儀をする。

それに慌てて三人も頭を下げた。

「あ……あぁ」

タイミングが微妙なので喜んで良いのか悪いのか……

まぁ、彼女達自身がお礼を言っているのは本心なので悪い気はしなかった。

「嬉しいのか?」

「そりゃ……お礼を言われれば誰だって嬉しいだろう」

「そうなのか」

「そうなのかって……お前はお礼を言われて嬉しかったことないのか?」

「言われたこと無い」

「言われたことないって……」

シンはそこで考えてみる。

一応、彼にはあの日の夜に衛宮家まで運んでもらって礼があるのだ。

お礼も言ってないが。

「あっ、それじゃ私達、家に帰らなきゃいけないんで」

良く見てみると彼女達は全員、ランドセルを背負っていた。

学校帰りだったのだろう。

「おう。気をつけて帰れよ」

「は〜い」

四人の少女は手を振り、去っていく。

昨日、あんなことがあったのに元気なものだ。

さすが、平和な国の出身である危機意識の欠片も無い。

ただ、子供にそんなことを感じさせるほうが間違っているのかもしれないなと

シンは思った。

そして、彼女達の後姿が見えなくなるとその視線を横に落とした。

佇み、まだ彼女達の背後を見つめるようにしている少年。

「あぁ……この前は助かったよ」

その言葉に翔は驚いてシンを見上げる。

今更なだけに少し恥ずかしいが

「逃げたと思ったのに助けてくれるなんてな」

彼は確かに意味がない帰ると言っていた。

だが、実際にはローカストアンデットの戦いまで残り、シンと剣崎を助けた。

彼が何を考えてるかは分からないが。

助けてもらった事実に礼を述べないのは問題がある。

「お前に興味が湧いたからだ」

「俺に……?」

「そうだ。お礼を言われると嬉しいっていうのは良く分かるよ。俺は今、嬉しいからな」

翔は微笑んだ。

それはシンがはじめてみた彼の仏頂面以外の表情だった。

 

「見ろ。マグネシウムだ」

男が何かの燃えカスを掴み呟く。

「橘さん。どういうことですか?」

剣崎はその男の背後から尋ねた。

意味が分からない。

「マグネシウムを使って一瞬にして消えたようにするトリックだ。

最初から烏丸はここに居なかった。あれは立体映像だったんだ」

「そんな。所長は一体……?」

剣崎は困惑した表情で呟く。

一体、烏丸所長は何処に行ったんだ……?

「それは分からない。もしかしたら誰かにさらわれたのかもしれない」

「そんな一体誰が?」

「それは俺にもわからない。だが、烏丸はライダーシステムの開発者としてそれなりに有名だ。

その知識に目をつけた不埒な輩が居たのかもしれない」

「そんな……」

「とにかく。俺は烏丸を探す」

「なら、俺も手伝います」

「止めておけ。お前はもう、これ以上関わるな」

橘は立ち上がると剣崎の体を突き飛ばした。

剣崎は壁にぶつかる。

それは明らかな威嚇だった。

「何でです。橘さん。二人のほうが早く見つかるはずだ」

「そういう問題じゃない。良いか、もうお前は仮面ライダーとして戦うな」

橘はそれだけ告げるとそのまま部屋を後にした。

剣崎は何故、彼がそのようなことを言うのかが分からなかった。

 

 

「君がブレイドか。俺は橘ギャレンだ。よろしく」

橘が笑顔で剣崎に握手を求める。

剣崎はその落ち着いた態度と明るい笑顔に頼もしさを感じた。

それが彼との最初の出会いであり第一印象だった。

そして、実際に彼は頼れる先輩だった。

仮面ライダーになり立てで上手く戦えない自分をフォローし、

アンデットを次々に封印していく。

その活躍は剣崎の脳裏に熱く焼きついて離れない。

 

 

「橘さん……あんたは一体……?」

それだけに彼の変貌振りに納得がいかない。

彼は何時から可笑しくなってしまったのか……

BORAD壊滅も彼の手引きではないと彼自身が語った。

だが、何処まで信じて良い。

何を信じれば良い。

何も分からない。

誰でも良い。答えを示して欲しい。

 

「で、そのまま帰ってきたのか?」

剣崎に与えられた個室のベッドの上。

シンはそこに座り机の椅子に座る剣崎の話に回答した。

剣崎は朝から先輩である橘を探していた。

あの日、ローカストアンデットとの戦いの最中。

彼は物陰からブレイドの苦戦を見てそのまま去っていった。

その真相が知りたかったのだ。

「あの人はBORADの壊滅は不注意で発生した事故だっていう。あの時、助けてくれなかったのも

烏丸所長を安全な場所に移すことが目的だったからだ……

だけど、分からない。あの人の言葉を信じて良いのか分からないんだ」

「そんなの信じられるのかよ!」

第三者のシンからすれば彼の行動は疑問だらけだ。

まず、第一に事故だというならもっと早く事態に対処できなかったのか。

研究所員全滅などという悲惨な結果にならなかったのかも知れないのに。

次に烏丸所長というのを安全な場所に連れて行くのは確かに分かるが。

どうにか対応することも出来たはずだ。一声かけるぐらいならなおさら。

それに一方的に仮面ライダーを止めろという言葉。

何をとってもシンに彼を信じられる材料が無い。

「だけどあの人は立派な人だ。あの人が裏切るわけが無い!」

剣崎はシンの言葉に怒鳴り返す。

シンは橘というものの人格が分からないので反論の仕様もないが。

「だったらもう一度、会って話してみろよ。そんな断片的な情報で何を判断する気なんだ。あんたは!?」

「……それは……。だけど、橘さんが何処に行ったのかもわからない」

「今日はどうやって見つけたんだ?」

「あの人から連絡があったんだ」

「……でも、その橘って人もアンデットと戦う気はあるんだろ?」

「あぁ、言ってた。アンデットは俺が封印しなきゃならないって」

「だったら、アンデットを追ってればいずれ会えるんじゃないのか?」

「……そうか。そうだな。もう、俺にはアンデットと戦う道しか残ってないんだ」

剣崎は覚悟を決める。

これからもアンデットと戦い続ける。

それしかこの晴れない闇を越える術はないんだ。

 

「なぁ、翔はあの二人が何をしてるのか知ってるのか?」

士郎は隣にいる翔に尋ねた。

彼は座り、湯飲みを持ち、TVを見ている。

士郎の言葉に視線を彼へと移した。

「二人とは?」

「剣崎さんとシンだよ。いきなり、アンテナを取り付けるは良く分からない機械を家に設置するし。

二人でよくコソコソと話してるし。一応、ここはオレの家で居候が何をしているのか把握するぐらいの

権利はあると思うんだ」

「……つまり、ここに住んでる俺達はお前の言葉に従わなければならないということか」

「いや、オレの言葉に全部、従う必要性はないけど……」

「……俺もあの二人が何をしてるかなんて良く分からない」

「そうなのか。でも、連れてきたじゃないか」

「目的の為に出向いた場所であの二人が戦い倒れたから連れてきただけだ。

何となく興味があったからな」

「戦い!?あの二人は何かと戦ってるのか?」

士郎は顔をグイッと翔に近づける。

その目は爛々と輝いていた。

翔の説明の何に彼が轢かれているのだろうか。

「戦っているんだろうな。それが何であるかなんて分からないけど人間じゃない」

「人知れず戦ってる……まさか、あの二人は仮面ライダー……」

士郎はこの地方に伝わる都市伝説を思い出す。

人の形を取りし異形の化け物、現れるとき。

バイクに乗り現れる仮面のヒーロー。

誰が呼び出したか不明だが彼らは仮面ライダーと呼ばれていた。

仮面をつけ、バイクに乗る戦士……つまり、仮面ライダー。

単純ながらその言葉は何かをひきつける。

士郎はその都市伝説を知ったとき、胸が高鳴るのを感じた。

「どうしたんだ……?」

翔は士郎の反応に怪訝な表情を浮かべる。

「あぁ、それはね。士郎が仮面ライダーに憧れているからよ」

その問いに背後から誰かが答える。

翔が振り向くとそこには大河が立っていた。

彼女は笑顔で挨拶すると翔の隣に座る。

「正確には正義の味方……なんだけどね」

「藤ねぇ」

士郎はジトッと彼女を睨む。

その頬は少し赤く、恥ずかしそうだった。

「正義の味方……?」

「ありゃ、それじゃ通じないのね。最近はTVでやってないのかしら。まぁ、良いわ。

正義の味方って言うのはね悪を挫き、弱きを助ける者なのよ」

「悪……人に害をなすもののことを指すのか?」

「そうね。大体はそんな感じかしらね。つまり、人助けがしたいのよ」

大河はケラケラと笑っている。

それは可笑しいというよりも懐かしんでいる笑みだった。

その二人のやり取りは何となく不思議な感じだと翔は思う。

「どうせ、俺はそんな幼稚な夢を今も見続けてる奴だよ」

士郎は少し拗ねてしまった。

「誰かの為に何かをすることは恥ずかしいことなのか?」

翔は疑問を大河にぶつける。

「う〜ん。最近はそういう風潮だけど……私はそうは思わないわね。

誰かを助けるってことは胸を張って誇れることだと思うな」

「……誰かを助けることは誇れることか……」

翔は少し微笑んだ。

何かが彼の中ではまる。

 

 

そして、次の日

剣崎一真はアンデット反応を発見し現場へ急行していた。

ブルースペイダーを走らせ道路を失踪する。

それを追う影があった。

それは屋根から屋根を飛び移る。

その速度は常軌を逸していた。

それは人間が出せるスピードではない。

いや、生物がこんな速度で走行できるというのか。

ブルースペイダーは最大速度をマークしていないにしても

通常のバイクを遥かに凌駕する速度を持つモンスターマシンだ。

その影はそれをピタリと同じ位置をキープし追い続ける。

それも屋根の上やたまに看板、電柱の上、街灯の上を乗って。

その余りの速度と常識を逸した存在に人々は誰も気付かなかった。

 

剣崎は現場へと到着する。

そこは山だった。

人々が訪れることは無い山間。

剣崎はふもとでバイクから降りるとその山を駆け上る。

悪条件だがそれでも彼は懸命に乗り越えていった。

体力、身体能力において彼は一般人のレベルなど超えている。

元々の素質と仮面ライダーとなる為につんだ訓練が彼を強くしていた。

この程度の障害などあってないようなものだ。

彼がしばらく登ると上のほうから何かが転がってくる。

それは赤かった。

そして、その姿は鎧を纏い、顔はマスクで覆われている。

それは剣崎が変身した姿……ブレイドと似ていた。

「うわっ!」

それは勢い良く、巨木に激突した。

樹は大きく揺れて、増えてきていた葉を散らし、

激突の衝撃音に周囲の鳥が一斉に飛び上がった。

「橘さん!」

剣崎はその激突した者に駆け寄った。

その赤き鎧はあの夜、ブレイドの戦いを物陰で見守り、去っていた橘の姿であった。

仮面ライダーギャレン……

それが橘朔也が変身するライダーシステム一号の名称である。

「剣崎か……」

「橘さん。大丈夫ですか?」

「くっ……どうということはない!」

ギャレンはフラフラと立ち上がるがその姿に力強さは皆無だった。

あの頼れる先輩の姿は何処にも無い。

「俺も一緒に戦います」

「五月蝿い!あのアンデットは俺が封印する」

ギャレンは怒鳴るとそのまま、駆け出した。

その視線の先には崖を下りてくる怪異の姿。

それは巨大な角を持ちし鹿のアンデット。

橘はその手に持ちしギャレンラウザーという名の銃を放つ。

巨大な銃口から強力な弾丸が放たれた。

だが、通常の拳銃とは比較にならないほどに強力なその威力を持ってしても

アンデットの皮膚に弾かれる。

ディアーアンデットはそのまま、ギャレンに飛び掛った。

その手には巨大な剣。

振り下ろしギャレンの装甲を斬りつける。

火花を散らしギャレンは吹き飛ばされ、地面をゴロゴロと転がった。

「そんな橘さんが……!」

あの人が勝てない相手に自分は勝てるというのか……

正直、不安だった。

自分の力ではアンデットの脅威に立ち向かえないのではないか。

生態系の覇権を賭けし始祖にして不死生物。

そんな規格外の化け物に……

だが、そんな化け物にライダーシステムも無しに立ち向かったものがいた。

何の関係もないのに彼は自分を助けてくれている。

そして、自分が戦う理由を思い出した。

 

「なぁ、シン。その携帯、さっきから弄ってるけど彼女でもいるのか?」

「違うよ……これは妹の形見なんだ」

「えっ……」

「……俺の家族は戦争で死んだ。あんたも知ってるだろ二年前の」

「あぁ、コーディネイターとの戦争だよな」

「俺は二年前、オーブに住んでいた」

「そうか……」

そこから先は言わなくてもわかった。

オーブは二年前の戦争の際に連合にその国土を侵攻され戦場と化した。

その戦いによりオーブは多くの犠牲を払ったという。

あの戦争の中でも有名な戦闘だった。

彼はあの戦火の中で家族を失い、何をみたのだろうか。

家族を失った悲しみを癒すように彼は携帯の液晶を注視する。

「俺も……昔に家族を亡くしたことがある」

「えっ……」

「子供の頃のことだったんだけど。家が火事でさ。

その時、何も出来なかった自分が許せなかった。

だから、俺は人を救う道を選んだんだ」

 

「俺は誰かを救うために仮面ライダーになったんだ……倒せるかとか危険だとかじゃない。

俺がやらなきゃダメなんだ。人を救うために」

剣崎はブレイバックルを構える。

差し込まれしエースのカードはゲームをひっくり返す切り札。

アンデットと言う名の人に害をなす力は反転し、人を救う力へと転じる。

「変身!」

青き光の壁が出現する。

それは破邪の門。

潜り抜けることを許されるのは人を救う運命を持つ者。

それは邪悪を断ちし剣の力。

「ウェーーイ!」

ブレイドはディアーアンデットに殴りかかる。

人を凌駕する拳が叩き込まれアンデットは怯む。

だが、その程度ではトドメには程遠い。

ブレイドはすかさず連撃を放つがアンデットもただ、見ているわけではない。

拳をかわし、カウンターで拳を返す。

ブレイドはそれをかわせずに連続で叩き込まれ、吹き飛ばされた。

「くそっ……」

確かに強い。アンデットは強い。

だけど、仮面ライダーとしてアンデットを封印することが自分の仕事だ。

もう、それを投げ出そうだなん思わない。

だから!

「ウェーーーイ!」

腰にさげられしオリハルコンプラチナの刃を持つ剣。

それは不死生命体を切り裂くために研磨されし武器である。

振り下ろされし一撃はアンデットの皮膚を切り裂く。

力任せだが、それだけ力強い一撃にディアーアンデットはひるんだ。

すかさず斬りかかる。

だが、ディアーは先ほどと同じように回避し、カウンターで剣を振り下ろす。

ブレイドはそれをブレイラウザーで受け止めるとキックを放った。

弾き飛ばされるディアーアンデット。

ブレイドはすかさずブレイラウザーを逆手に持ち帰ると刃を下に向ける。

そして、カードホルダーを展開し一枚のカードを取り出した。

仮面ライダーはカードに封印されしアンデットの力を召喚し、自身の力へと変じさせる。

それぞラウズ。

仮面ライダーがアンデットを凌駕する力である。

ブレイラウザーのスリットにカードを通す。

―――キック―――

発動するは初めて自分で封印したアンデットの力。

その名の通り、ブレイドのキック力を増加させる効果。

出現した青き光の紋様はブレイドの右足に吸い込まれた。

ブレイドは力を溜めて、腰をかがめる。

地面に深々と突き刺さるブレイラウザー。

ブレイドは機会を見極めると飛び上がった。

「ウェーーーーーーーーイ!!」

渾身の叫びを持って、ディアーアンデットにブレイドのキックが放たれる。

起き上がり、ブレイドに受けたダメージが残るディアーにそれを回避する手段は無かった。

ローカストの力を宿したブレイドのキックがディアーアンデットの胸部に叩き込まれる。

凄まじい衝撃にディアーの体は吹き飛ばされ、木々をなぎ倒していく。

そして、倒れたディアーアンデットのバックルが開く。

ブレイドはカードを取り出すとディアーアンデットを封印した。

 

「橘さん」

剣崎は変身を解くと倒れていた橘へと駆け寄る。

彼もまた、変身を解いていた。

「封印したのか……」

「はい。だけど、あのぐらいのアンデット、橘さんだったら封印できたはずだ」

疑問だった。

確かにアンデットは強いが橘は幾つものアンデットと戦い続けた猛者だ。

近くで見守ってきた自分なら分かる。

彼の実力ならこの程度、問題にもならないはずだ。

「教えてやる。ライダーシステムには問題がある」

「問題……」

「そうだ。ライダーシステムはいずれ、装着者を破滅に追い込む」

「そんな……何かの間違いだ」

「間違いではない。そのおかげでオレの体はボロボロだ!

これを治すにはアンデットを封印するしかないんだよ!」

橘は剣崎の体を突き飛ばし、歩いていく。

橘の姿は消えた。

一人残された剣崎は空を仰ぐ。

自分が信じた力はいずれ、自身を破滅へと追い込む。

この体もいずれ……

「嘘だ……嘘だ!そんなことー!!」

 

その一連の戦いを翔は離れた樹の上で見守っていた。

シンは興味深い奴だ。

では、彼と一緒に行動する剣崎はどういう人物なのだろう。

その疑問が彼をこの場へと誘った。

彼はあの脅威から人々を護るために戦っている。

人知れず、誰かれにお礼を言われることも無い。

だが、彼は戦う。

非常なる通告を受けても……

彼は立ち上がるだろう。

彼の眼にはそう、映っていた。

「シン=アスカ……剣崎一真……」

この空虚な気持ちをその願いは埋めてくれるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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