ここは銀成市に存在するカトリック系のお嬢様学校

名前をリリアン女学園と言った。

幼稚舎から大学まで存在する巨大な学校でそこでは純粋培養のお嬢様を育成している。

銀製市では一番、大きな学園であり由緒も正しい名門校。

今ではさほど裕福とはいえない家庭の子供も通っている。

だからと言って特に貧富の差によるイジメも無い清々しい学校だ。

登校中の生徒の中、色々な生徒に挨拶をされている生徒が居た。

それほど、目立った容姿でもない少女だ。

髪の毛を両脇で括ったツインテールの類の髪型をしている。

彼女は挨拶に丁寧に答えながら歩みを進める。

笑顔を振りまいているがその中に少しかげりのようなものがみえた。

彼女と親しい人なら悩みがあることが分かるだろう。

あからさまでは無いので気付きにくくはあるが。

「祐巳さん。ごきげんよう」

彼女の後方からおさげを振りながら少女が駆けてくる。

彼女を見つけて駆け寄ってきたようだ。

「由乃さん。ごきげんよう」

祐巳は笑顔で挨拶を返した。

由乃は祐巳の横につき肩を並べて歩く。

クラスも同じなのでこのまま、一緒に登校するつもりなのだろう。

「そうそう、昨日の件なんだけどね」

由乃が会話を切り出した。

それに祐巳は反応する。

「な〜にも教えてくれないの。知る必要が無いの一点張りでさ。

更に絶対、かぎまわったりするなって釘まで刺していったし。

なんなのよ。あの態度は!」

由乃は憤慨していた。

その言葉に祐巳は少しがっかりしたようすでそっかと呟いた。

「でも、そうやってムキになって隠されると暴いてみたくならない?」

憤慨していたのが一転して今度は薄い笑みを浮かべている。

その様子は悪がきが悪戯を思いついた様子にも似ていた。

「でも、令さまには関わるなって言われたんでしょ。

それなのにかぎまわるのは……」

「でも、何も言わないで夜遅くまで帰ってこないのよ。

そりゃ、祥子様も一緒だけど……妹の私にまで言わないのは可笑しいじゃない」

由乃は完全にやる気になっていた。

朝っぱらから闘志を燃やしている。

それに比べ祐巳は少し消極的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ANOTHER PLAYER…

Log No005≪薔薇のつぼみ≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、志摩子さんも二人が何の仕事をしてるか知らないの?」

ここは薔薇の館。

リリアン女学園の生徒会室を兼ねた建物である。

校舎とは離れた位置にあり一般的に薔薇と呼ばれる三人の生徒会長とその妹たちしか訪れない。

妹とは実際の妹とは違い、このリリアンに伝わる伝統で上級生が下級生を一人選び妹とする。

姉となった上級生は自分の力の限りにその妹を教育するのだ。

縦の係わり合いが強いこの学園ならでは特色だった。

その中でも生徒会長である薔薇の妹たちはつぼみと呼ばれ次期生徒会長として注目される存在である。

ちなみに薔薇は紅薔薇(ロサ・キネンシス)、黄薔薇(ロサ・フェティダ)、白薔薇(ロサ・ギガンティア)と呼ばれている。

現在、薔薇の館には紅薔薇のつぼみである福沢祐巳、黄薔薇のつぼみである島津由乃、白薔薇である藤堂志摩子の三人が居る。

彼女たちは仕事を済ませて何時もどおりお茶の時間を楽しんでいた。

その中の話題で最近、祐巳の姉である赤薔薇小笠原祥子と由乃の姉である支倉令が急ぎの用事があると言って二人揃って

薔薇の館に顔を出さない件について

朝の登校時の会話がこれである。

令の実の従兄弟でプライベートも詳しい由乃でもそのことについて知らされておらずやきもちを焼いていたのだ。

それについて、同じ薔薇である志摩子が知っているのではないかと尋ねていたのだ。

「私も聞いてないわ」

しかしながら返って来た答えは知らないとのこと。

「でも、令ちゃんと祥子様は薔薇の仕事って言ってたのよね。

何で同じ薔薇の志摩子さんまで知らないわけ?」

やはり、納得がいかない。

薔薇……つまり、生徒会長の仕事ならその一人である志摩子も加わっていないのは可笑しい。

二人とは一つ下で祐巳たちと同じ二年生とは言えど、その実力を認め体等に仕事をしているはずなのに。

「えぇ、一度。聞いてみたのだけれど……私は気にしなくて良いとおっしゃって……」

志摩子もそのことについては少し気になっているようだ。

ただ、力を認めていないからではなく純粋に気を使っているというか。

厄介事を抱えているように伺えた。

「二人揃ってねぇ……叔母さんや叔父さんも知らないし……

祐巳さんは祥子さんのお母様とかに何か聞いてみたとか?」

「えっ……そんな。お姉さまが気にするなって言ってるのに聞けるわけないじゃない」

「そりゃそうよね……でもなぁ……」

由乃がここまで気にするのは秘密にされている以外にも

二人が何か思い悩んでいる様子を見せているからだった。

表面上には出さないように気をつけているが

それでも隠しようが無い何かを抱えている。

最近、この街に流れる空気が不穏なせいもあって不安なのだ。

昨日、紹介された一家神隠し事件などが顕著な例であり、

行方不明者の数が異常なのだ。

このリリアン女学園でも数人が行方不明になっているという。

そんな物騒な中、夜遅くまで帰ってこないのでは不安になるなといっても無理だ。

三人の中で重い沈黙が流れる。

「そういえば乃梨子ちゃんは?」

祐巳は志摩子の妹である二条乃梨子が不在な理由を尋ねた。

少しでもこの空気を帰ったかのかも知れない。

「用事があるから帰ったけど」

「ふぅん・・・」

「心配してくれてるの?」

「え?なんで?」

「顔に出てるもの」

祐巳は思っていることが素直に表情に出るタイプだ。

その頬を恨めしそうに手を当てる。

「そうだ!」

由乃が急に叫んだ。

それに二人はビックリして彼女の方を向く。

由乃は不適な笑みを浮かべていた。

不適というかただ、悪戯を思い浮かべたような顔なのだが。

「いっそのこと。二人を尾行しましょう」

由乃の提案に唖然とする。

確かに手っ取り早い方法だが……

「二人だって知りたいでしょ。何をしてるのか。

とりあえず、何処に言ってるかだけでも確認しましょう」

由乃は強引に纏めてしまう。

二人はその勢いに流されていった。

「それじゃ、何時も通り。二人が顔見せにだけきて帰ったら尾行しましょう」

「えっ、今日するの!?」

「そりゃそうよ。早いほうがいいでしょ」

思いついたら即行動。

流石、暴走機関車とも言われるだけある猪突猛進ぶりだ。

 

予定というか即案通りに三人は二人の尾行を開始した。

生徒会の仕事は良いのかという不安もあったが

祐巳も志摩子も流石にあの二人の態度などを考えると

仕事も手に付けられない状況だった。

このまま、放っておいたらとんでもないことになるのではないか

そんな不安が募っていたのかも知れない。

「でも、バスとかに乗ったらどうするの?」

志摩子の問いに由乃は固まる。

「その時はその時よ」

同じバスなんかに乗ったら一発でばれるのだ。

そうなれば怒られて降ろされるに決まってる。

そして、案の定、二人はバスに乗って行ってしまった。

「これじゃ、尾行は無理ね」

祐巳は過ぎ去っていくバスの後ろを見送りながら呟いた。

「あぁ、責めて何処で降りるかさえ分かれば……」

由乃は悔しそうに頭をかきむしる。

「戻ろうか」

校門の外まで来てしまったが引き返せば仕事をする時間ぐらいある。

ここで悔しがっていてもしょうがない。

三人が引き返そうとしたとき、その前に一人の少年が立ちはだかった。

その手には木刀。

明らかに不審だ。

三人は警戒する。

往来だろうとなんだろうといきなり、刃物を振り回すようなのがいるのだ。

この物騒なご時世に警戒しないわけが無い。

「あんたら。あの二人の知り合いか?」

少年は三人に尋ねる。

「だったら、どうだってのよ」

由乃が言い返した。

その言葉を聴いて少年は薄く笑う。

「そうか。聞きたいことがあるんだが白薔薇とか言うのを知ってるか?」

少年が尋ねる。

リリアンの生徒に尋ねるということは志摩子のことを指しているのだろう。

だが、何故、生徒でもなくリリアンに係わり合いも無さそうな

こんな少年がそれを尋ねてくるというのだろうか。

木刀などという物騒なものを持ってることもあわせて三人は警戒する。

「どうする……?」

「警察を呼んだほうがいいんじゃ」

「でも、別に何かされたわけじゃないわ。それにいくら、木刀を持ってても

私達よりも小さいし。遊んでるだけかも知れないわ」

それは無いだろうと祐巳と由乃は思ったが確かに

身長、体格、どっちも自分達よりも劣っている。

そんな少年が襲い掛かってきても廻りに大勢の人もいるのだ。

取り押さえるぐらいは出来るだろう。

だけど、それとは別に祥子と令の知り合いかを確認してきたのが気になった。

「ねぇ、君。どうして、白薔薇さまを探してるの?」

祐巳が少年に話しかける。

あくまで年下の子に話しかける様子で。

「神父に頼まれた。そいつを連れてくれば聖杯の情報をくれるという条件でな」

何気なく聞いたが不思議な答えが帰ってきた。

この子……といっても中学生ぐらいだが。

遊びでもしているのか。

聖杯の情報などどこぞのゲームの話だと思う。

だけど……ここで一笑にふすには彼の眼は真剣すぎた。

「その神父って何処の?」

「橋を渡った先にある教会だ」

確かにそこに教会がある。

ミッションスクールに通っているが敬謙なクリスチャンではない祐巳は訪れたことは無いが。

「その神父様って言峰さん?」

志摩子が少年に尋ねた。

祐巳と由乃は違うが彼女はクリスチャン。

街にある教会ぐらい知っていても可笑しくない。

「さぁ、今日あったばかりでな。名前なんか知らない。

ただ、背が高くて愛想も何もない顔をしていたな」

「間違いないわね。その神父様に連れて来いと言われたの?」

「あぁ、何も赤、黄、白の三色が揃わなければ意味が無いとか言ってたな。

理由は良く分からないが。俺は聖杯の情報さえ聞ければそれで良い」

「赤…黄…白……薔薇のことを言ってるの?」

「薔薇?知らないな。まぁ、白薔薇をって言っていたのだから。そうなんだろ」

少年は特に深くは考えていないようだ。

ただ、言われたことを実行しているだけ。

それで本当に情報をくれるかどうかなんて考えていない。

ただ、信じて行動してるだけだった。

無垢なのだろう。疑うことを知らないのか。

「三色が揃わなければって事は……三人必要ってことよね」

「それで志摩子さんだけ連れてこようとしてるんだから……」

「祥子様と令様はそこに言ってる……?」

この少年は神が使わせた使者のような気がしてきた。

追い求めるものへ繋ぐために差し伸べられた手。

だが、その神が自分達が信じていたものとは違うことに彼女達は気付かない。

「私がその白薔薇です」

「あんたが。それじゃあ、教会までついてきてもらおうか」

少年はそのまま、歩き出す。

「あれ、教会に行くんだよね。バス使わないの?」

ここから教会なら一度、バスに乗って新都に出たほうが早い。

だが、何で?という表情をしてから納得した。

「あんたらがそっちのほうが楽ならそうしろ」

少年はそういうがどう考えてもバスに乗ったほうが楽だ。

彼らはバスを待ち、それに乗り新都を目指した。

 

 

薄暗い部屋

橘朔也は椅子に座り眠っていた。

その表情は苦悶に満ち、汗が溢れ出る。

彼は今、悪夢にうなされていた。

自分が破滅するイメージ。

それは圧倒的な恐怖だった。

逃れられぬ終焉……

「うぅ……」

「大丈夫!?」

その様子を見て白衣の女医が彼を起こす。

その言葉で橘は目を覚ました。

「はぁはぁ……小夜子か」

「橘くん。凄くうなされてたようだけど大丈夫なの?」

白衣の女医……小夜子は椅子に座る。

橘と小夜子は大学時代の同級生だった。

彼は優秀な生徒だった。

そして、卒業と同時に大きな研究機関に所属したと聞いたが

それきり、彼は仕事が忙しく会うことは無かったが

この前、突如としてやってきた。

仕事で何かあったらしいがあえて聞くことは無かった。

何かに悩んでいる様子だが打ち明ける時が来れば打ち明けてくれるだろう。

ただ、彼が追い込まれている時に自分を頼ってくれたことが

素直に嬉しかったと彼女は思った。

小夜子は視線をテーブルにおいておいたパズルに向ける。

卒業写真をパズルにしたものだ。

橘と小夜子が笑顔で並んでいる。

そのパズルの一ピースが抜けていた。

「橘くん。パズルのピースは?」

「そのパズルのピースは……オレが飲み込んだ」

「えぇ!」

突然の奇行に小夜子は困惑する。

だが、彼がそういうのだからそうなのだろう。

何故、彼がそうしたのかは分からないが。

 

 

教会

神を崇拝するものたちの館

だが、ここに神聖な空気は感じられない。

どちかというと生々しい匂いが漂っているような気がした。

「なんであんな子供に仕事を頼んだんだ?

まさか、本気で聖杯のことを教える気じゃないだろうな」

青い戦衣に身を包んだ男が壁に背をかけ尋ねる。

神父……というにはあまりにも怪しい男が振り向きもせず口を開いた。

「もし、彼がマスターとなるなら教えるだろうな」

「なんで、あいつに頼んだの聞いてんだよ。

門前払いでいいだろうに」

「彼がただの人間ならな」

「あぁ?まさか、埋葬期間の人間だとか言わないだろうな。大した力は感じなかったが」

「いずれ分かるさ……」

あからさまに不気味な男だ。

何を考えているのか分からない。

青い服の男は何かを口にしかけ、突如、その姿を消した。

そして、教会のドアが開かれる。

そこには先ほどの会話の少年とその背後に三人の少女がいた。

「ほぉ……ちゃんと連れてきたようだな」

言峰は静かに彼らに近づく。

その雰囲気に気圧され少女達は立ちすくんだ。

何だか良く分からないが近づいてはいけない気がする。

「約束どおり聖杯について聞かせてもらおうか?」

「その話は彼女たちの用件が終わってからにしようか」

少年はそう言われるとそのまま、椅子に一つに座った。

異存は無いようだ。

「では、白薔薇とつぼみたちにはこちらに来てもらおうか」

「えっ、私達のこと知ってるんですか?」

この神父は白薔薇を呼んでいたはずだ。

なのにどうしてつぼみである自分たちも誘うのだろうか。

「君のスールも待っている」

「お姉さまが……?」

「あぁ、君と会えないことを嘆いていたよ」

「そんな……でも」

自分から断っておいて会えずに嘆く……?

そんなことはありえない。

別に会えないわけじゃない。今日だって顔をあわせた。

どうして、彼は私達を誘うのだろうか。

差し出される手。

その手をとれば何かとりかえしがつかなくなるような気がした。

だけど……それをとればお姉さまが何をしているのか分かる……

 

その手を遮るモノがある。

それは木刀。

木を刀の形にしたものだ。

木……それは未だに生きているかのような感じがした。

「天翔……邪魔をするのか?」

「人を助けるとな。褒められるんだ」

「他者に認めてもらいたいのか……?その為に善意で力を振るうというのだな、君は。

だが、君の行為はこの少女達が望むのか。

彼女達が望むものがもう少しで手に入るのを邪魔し感謝されるのか?」

「別にこの女達に感謝されたいわけじゃない」

翔は神父の目を睨む。

何にも臆さない強き瞳。

「では、君は誰に感謝されるというのだ?」

神父の問いかけと共に教会の扉が開く。

そこには黒い髪と赤い瞳の少年が立っていた。

「おい、人をこんなところに呼び出して何やってんだ?」

シンは神父となにやらもめている翔の姿を見て尋ねる。

その態度や表情から面倒だというのが全面から出ていた。

「あいつだ」

翔が木刀を振り下ろすと神父はそれをバックステップで回避した。

「シン、逃げるぞ!」

「逃げる!?逃げるってお前、なにやってんだよ!?」

いきなり、呼ばれてなにやら良く分からない展開に巻き込まれシンは戸惑っている。

それは祐巳たちも同じだった。

呼び出しておいて何故、邪魔をするのだろうか。

確かにあの神父は胡散臭い。

だけど、姉はその先にいるはずで。

「嫌な予感がする」

「はぁ!?」

翔に促され仕方なく全員で教会の外へと出た。

「一体、何がどうなってんだよ!?」

「そうよ。令ちゃんはあそこにいるんでしょ」

シンと由乃が翔にかみつく。

まぁ、それも仕方ないことだ。

「あの神父は信用できない」

「信用できないってあんたが連れてきたんでしょうが!」

「気が変わった」

「気が変わったって……」

「別にあんたら犠牲になろうが知ったことじゃない」

翔の言葉に由乃や祐巳たちは愕然とする。

最初から何かあると感じていてきたというのか。

「でも、シンが怒るかなって」

「オレ!?」

いきなり、名前を呼ばれて戸惑った。

確かに誰かを犠牲にするやり方なんて容認できないが。

自分の言葉が彼のストッパーになるとは思ってもいなかった。

「剣崎さんや士郎も嫌だと思う。あいつらが嫌なことをオレは出来ないって思った」

「でも、本当にあの神父。危ないのか。追ってくる気配が無いが」

教会から出て歩いているだけだが追っ手が来る気配は無い。

このまま、何事もなく帰れそうな勢いがある。

「それにもし、危ないなら令ちゃんたちが危険じゃない」

由乃が叫ぶ。

あの二人が出向いてる先が本当に教会かは今となっては定かではないが

もし、あそこにいるなら危険だ。

「そうだな。助けに行くか」

「おいおい、確証も無いんだろ。下手に忍び込んだら不法侵入で訴えられるぞ」

そのまま、引き返そうとする翔の襟首をシンがひっぱる。

「でも、もし本当だったら……」

「それは大丈夫だと思うわよ」

不安そうな由乃に志摩子が声をかける。

「なんでさ」

「今までだって帰ってきてたじゃない。それに三人揃わなければならないとも言っていたわ。

そうよね?」

志摩子が翔に尋ねると翔は頷いた。

「そうか。三色必要だって……だから、志摩子さんを呼んだ」

「それこそ確証はないけど大丈夫だって気がするの」

「とりあえず、三人揃うまでは大丈夫ってことよね……」

想像でしかないが何かしらの要因として自分達が必要だったのは明白だ。

明らかに彼は自分達を誘っていた。

それが何かは分からないが。

「何がどうなってんだよ……?」

シンは今一、理解できずに呟いた。

「この街はおかしいんだ」

「おかしいのはお前の頭だろ」

「アンデットに昨日、あった」

「はぁ!?それが本当ならなんで剣崎さんに……」

「それも人の姿をして人の言葉をしゃべる奴だ。

それと一緒に妙な機械の残骸を見つけた。

モビルスーツや普通の機械とも違う精巧なものだった」

「……それにさっきの神父か?」

「お前もそうだ。何でお前はここにいるんだ?」

「なっ……」

「ガンダムを持つコーディネイターなんて何かの目的も無ければ

こんな場所にこないだろう」

「お前……なんで分かるんだ」

「色々と調べたからな」

翔はそういうが調べてわかるようなものでもない。

第一、   記憶喪失であり……

その身体能力は人間とはとても思えないのだ。

最初に出会った日、こいつはローカストアンデットの眷属を

木刀だけで倒していた。

銃でも致命傷を与えられないような化け物を相手にだ。

神父よりも翔のほうが怪しいとシンは感じる。

「おっ、シンに翔じゃないか」

学校帰りなのか学生服を着た士郎が駆け寄ってくる。

そして、一緒にいる少女達に気付いて驚いた。

「おい。リリアンの生徒なんてナンパしたのか?」

士郎がシンを見るとシンは驚いて首を横にふった。

「違う。こいつらは翔が連れてきたんだ」

「それにナンパされた訳じゃないわよ。そんなにほいほい、ついてくような

軽い女に見える?」

まぁ、リリアンのイメージからしてそれはないだろう。

それに三人ともナンパなんて行為でついていくようなイメージもない。

「それじゃ、何やってるんだ?」

「オレが聞きたいよ。こいつ、神父が怪しいとかいうんだけどさ」

「神父……?」

士郎はその言葉を聴いた瞬間。嫌な感じを受ける。

「とりあえず、もう日も暮れるし家に帰ったらどうだ?」

士郎に言われて五人は空を見上げると既に太陽が隠れようとしていた。

何時の間にこんなに時間が過ぎたのだろうか。

「最近は物騒だし、送ってくよ」

士郎が祐巳たちに声をかける。

一見、ぶっきらぼうだが危険な感じはしなかった。

シンに翔もまさか、襲い掛かるような真似はしないだろう。

女だけで固まって帰るよりも安全そうだった。

 

 

「へぇ、それじゃ。同い年なんですね」

普通に雑談しながらの帰宅となっていた。

まだ、それぞれの分かれ道にも差し掛かっていないので全員で固まっている。

「へぇ、シンも同い年なのは知らなかったな」

「そういえば。言ってなかったっけ」

「知らないって同級生じゃないんですか?」

「あぁ、オレはもう、学校卒業してるし」

「飛び級ってこと?へぇ、外国人なんだ。見た目、日本人とあまり、変わらないけど」

「まぁ、オーブ出身だからな。あそこは日系が多いし」

「えっ、オーブって……それじゃ」

「あぁ、二年前。戦争に巻き込まれたよ。その時、家族を失ってプラントで学校を卒業したんだ。

あそこは15で成人だからな」

シンの言葉に誰も声をかけられなかった。

二年前の戦争は良く知っている。

日本は憲法の概念上、その戦争には参加しなかった。

オーブも同じような理念を持つ国だったが色々と問題があった。

その為に国土は戦地となり、多くの国民の命が失われたと聞く。

彼もそんな戦争の犠牲者なのだ。

「(家族を……オレと同じだな)」

士郎は彼の境遇を見て自分と重ね合わせていた。

ただ、自分は10年前で幼少だったこともあり、直ぐに養父が見つかった。

だが、彼は既にひとり立ちしている。

境遇は同じかも知れないが立場は違っていた。

そんな、重い空気の中で翔が突然、身構えた。

それを合図にシンと士郎も何かに感づき構える。

少女達はいきなりのことに何も分からず周囲を見渡した。

「囲まれてる……」

 

 

闇が動き出した……

 

 

 

 

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