蝶野家一家失踪事件
現在、この銀成市で最も騒がれている事件だ。
一家全員が一晩にして突如として消失。
現在も警察による捜査が行われているが……
いづれ、それはとりやめとなり、
迷宮入りとして片付けられるだろう。
上層部からの圧力により……
何故ならその事件は一般人が立ち入ってはいけない
闇に部類される事件だからだ。
知られてはいけない禁忌の力が起こした事件。
その力の名は錬金術。
その唯一の成功例であるホムンクルスと核鉄。
それが関与した事件なのだ。
武藤カズキ
彼はこの事件の詳細を知る数少ない者の一人である。
士郎の同級生で親友。
元気で明るい誰とでも仲良くなれる平凡な学生。
だが、それと同時に彼は一つの力を持っていた。
武装錬金
核鉄を己の闘争本能で武器として具現化する力。
それは現代兵器も超える最強の武器。
彼はその力を持っている。
だが、紛れも無く彼は学生でもあった。
今、この時点では……
彼は岐路に立たされている。
この闇に紛れ、血に塗れた道を行くか……
それとも、天の日が差す、明るい道を行くか……
彼は……
ANOTHE PLAYER…
Log No006≪闇への誘い≫
「くそっ!何なんだ、こいつら!?」
シンが襲い掛かる黒ずくめの男を殴り飛ばす。
特殊部隊のように精密な動きをしてくるが
一対一ではコーディネイターの兵士であるシンの敵ではない。
「シン、突っ込むな。お前が抜かれると彼女達が危険だ!」
士郎も武道の心得があるのだろう。
手馴れた動きで相手を圧倒する。
身体能力ではシンには敵わないが技術では上だ。
彼は場面を良く見てシンに注意を促す。
彼がフォローしなければ背後にいる少女達に危険が及ぶのだ。
二人は必死に抑えようと頑張るが数が多すぎる。
一人が二人の間を抜けて少女へと迫った。
「しまったっ!!」
二人は叫ぶ。
人質にでもとられたらその時点で終わりだ。
だが、二人はその瞬間、目を疑った。
いや、性格には士郎だけだ。シンは何となく分かっていた。
翔の一撃で黒ずくめの男を空へと吹き飛ばす。
有に10メートルの高さまでつきあがり、弧を描き背中から落下した。
身動きせずその場で倒れる。
「何てバカ力だ!?」
士郎は翔の小柄からアレほどの一撃が繰り出されたことに驚愕する。
木刀を常に携帯してることや身のこなしから武道の心得があるのはわかっていた。
だが、あれは人間の一撃ではない。
全く太刀筋が見えなかった。
「翔、さっさと薙ぎ払え!」
シンは蹴りを入れながら叫んだ。
ローカストの眷属を相手にあれほど戦える翔だ。
この程度の相手など物の数ではない。
シンにしてもインパルスを限定的にとはいえ、発動させることが出来れば
一瞬で蹴りぐらいつけられるが
それを使うのは問題が生じる。
流石にこの程度のことに使用しようものならザフト上層部から
インパルスの使用権利を剥奪される可能性も出てくる。
「あぁ!」
翔は頷くと相手に向かって突き進んだ。
翔の一撃を受けてまともに立っていられる訳が無い。
壁に叩きつけられ、その場で倒れこんでいった。
だが、可笑しい。
これほどの騒ぎなのに人一人、現れない。
危険だと思って外に出ないだけでなく家から様子を伺う視線すらなかった。
「可笑しい……結界でも使ってるのか……?」
士郎は敵を防ぎながら呟く。
その時、突如として翔の体が吹き飛ばされた。
石で作られた壁を突き破り、破片をばら撒きながらその体が粉塵に消える。
「……翔!」
士郎は一瞬、何が起きたか分からなかった。
さっきまであれほど優性に戦っていたというのに。
「あんまり、調子に乗ってるんじゃねぇ、人間風情が」
先ほどまで無言だった黒ずくめの男の中に一人、
異様な風袋の男が混ざっていた。
上半身裸で頭にはバンダナを巻きつけている。
そして、何より以上なのは右腕に巨大な機械仕掛けの腕が取り付けられていた。
それは明らかに異質だった。
「士郎も下がってろ……あいつは危険だ」
シンが一人、前へ進み出る。
その視線は真っ直ぐその巨大な腕を持つ男に向けられていた。
「何なんだ。あいつは?」
「知らない。だけど、あいつは一撃で翔を吹き飛ばした。あの巨大な腕は飾りじゃない。
モビルスーツの拳にだってあんなパワーは無い」
シンの言葉に士郎は驚く。
モビルスーツは軍が装備する最高級の兵器。
そのパワーは人間を遥かに超える。
そんなものに殴られて人間が無事で居られるわけが。
「オレがこの場は凌いで見せる。だから、お前は翔とそいつらを連れて逃げろ」
「バカを言うな!お前一人で抑えられるわけが……」
士郎が止めに入ろうとするがシンの目は本気だ。
その体が不思議な光に包まれていく。
それはナノマシンの発光。
肉体を強化し、攻撃から身を護る不可視の装甲。
「多分、家には剣崎さんがいるはずだ。あの人ならそう易々とやられない。
しばらくは様子を見て隠れてるんだな」
「シン……お前は……」
「はっ、ザフトのエリート。赤服をなめるなってんだ!」
シンは懐からナイフを取り出すと巨大な腕を持つ敵へと突撃する。
ナイフはナノマシンにより精製されたフォールディングレイザー。
装甲を切り裂くために作られた兵器だ。
「うああぁぁぁぁッ!!」
シンは勢い良く敵に向かってフォールディングレイザーを突き刺す。
だが、その一撃は軽々、巨大な腕に防がれた。
「なっ!?」
「ヒャッホォォウ!残念だが完全稼動でもねぇ、ガンダム如きに俺の武装錬金は貫けない!」
そのまま、男は巨大な拳を突き出す。
それは先ほどよりも遥かに巨大になっていた。
道路一面を包み込む、その一撃に抗えるほどシンの力は強くない。
その身は木の葉の如く、空に舞う。
「シンッ!!」
翔はあの一撃で吹き飛ばされたのだろう。
生身の人間が耐えられるものじゃない。
それでも、士郎は必死にシンの体を受け止めた。
凄まじい衝撃に士郎の体も吹き飛ばされるが
必死にその身を抱え、何とか受け止める。
「くそっ!大丈夫か、おい!」
士郎はシンの体をゆする。
低い唸り声が返って来た。
命はある。だが、気絶してるようだ。
あれを受けてこの程度で済むなんて奇跡でもない。
士郎はシンが何かの力を持っていることに感づいた。
「これでゲームオーバーだ。五月蝿い、錬金の戦士が出てくる前にとっとと回収しちまおうか」
巨大な腕の男は士郎……いや、その背後の祐巳たちに迫る。
既に退路も黒ずくめの男に埋められている。
もう……逃げ切ることは……
「どけぇっ!」
気合と共に黒ずくめの男を突き飛ばし、剣崎が現れる。
士郎はそのことに驚くが彼一人でこの化け物をどうにかできるとは思えなかった。
普通の人間が敵う相手じゃない。
剣崎は士郎やシンの状況を確認すると巨大な腕の男をにらみつけた。
「お前が皆を傷つけたのか!?」
剣崎の言葉に男はたじろぐ。
いや、剣崎の登場自体に焦っていた。
「ちっ……ライダーシステム二号だと。別働隊の奴らはどうしたってんだよ」
明らかに剣崎を警戒している。
剣崎は彼の言葉を肯定と受け取り、ブレイバックルを取り出す。
仮面ライダーに変身さえすれば、この程度の相手。
敵じゃない。
彼はスペードのAを取り出し、変身しようとする。
だが
「甘いッ!」
何かがブレイバックルを弾いた。
「なにっ!?」
剣崎は焦ってブレイバックルを拾おうとするがその喉元に槍が突きつけられる。
「生憎、お前に変身されると逃げなきゃならないんでな。
その前に手をうたせてもらったぜ」
青い服を着た男。
彼の手には巨大な赤き槍が握られていた。
一目で分かる。
それは普通の槍ではない。
士郎はその槍に目を奪われていた。
あれほどの武器がこの時代にまだ、現存しているのか。
危機的状況ではあるが冷静に観察を続けていた。
「諦めろ。お前達に打てる手段はもう、無い」
槍の男の言葉が終わる前に剣崎はブレイバックルに手を伸ばす。
だが、男は剣崎の顔面を蹴り飛ばし、吹き飛ばした。
「諦めが悪いのは嫌いじゃないが無駄だ。今のお前は普通の人間に過ぎないんだからな。
他の奴らも諦めろよ。何せこの中で一番強い二人が戦闘不能なんだ。
歯向かっても無駄だ」
士郎にはなす術は無かった。
この場が自分ひとりなら戦い続けたかもしれない。
だけど、知り合いが傷つき、力なき少女を護らなければならないこの状況で
無駄に歯向かうことなんて出来なかった。
彼らはその場で拘束され……車で連行された。
「ちょ、ちょっと……何なのよ、あれ!?」
遥か離れた家の上で一部始終を見守っていた少女は困惑していた。
横に立つ、赤い外套の男は涼しげな顔で口を開いた。
「あのガントレットをした男は恐らく武装錬金を持っているのだろうな。
それに胸に章印が見えた。間違いなくホムンクルスだ」
「そんなの見れば分かるわよ!なんで、サーヴァントとホムンクルスが手を組んでるのか
聞いてるの!」
少女は吼えるが男はいたって冷静だ。
「マスターの利害関係が一致したか……もしくはマスターがホムンクルスのコミュニティの関係者。
マスターがホムンクルスに食われて令呪を手に入れた可能性もあるな。
だが、どれにしてもホムンクルスも相手にしなくてはいけないということだ。
しかも、武装錬金を持つ上級ホムンクルスとな」
「それもそうだけど……なんで衛宮くんやリリアンの生徒なんかがさらわれてるの」
「それは調べて見なければ分からないだろうな……
ただ、単独の私達が今の状況であのランサーの相手をするには分が悪すぎるということだけは確かだ」
「それじゃ、見捨てるって言うの!?」
「では、君は正義の味方を気取り、奴らのアジトを乗り込んだとしよう。
勝てる賞賛があるのか?私がランサーと戦っている間に君がホムンクルスに食い殺されるのがオチだろうな」
男は笑う。嘲笑っているのだ。
少女はその態度が気に食わなかった。
確かに戦力差は圧倒的だ。
だけれど……このまま、黙って見過ごすのは嫌だと少女は告げていた。
「では、戦力が整えば君は助けに行くと言うのだな」
突如として第三者の声が紛れ込む。
二人は驚き、周囲を見渡す。
だが、それらしき影は見当たらなかった。
「ここだ」
再びの声で位置がつかめた。
なんと、その者は電信柱の先端に立っていたのだ。
しかも、その格好が可笑しい。
銀色のコートに帽子。
顔は一切、確認できない。
凄まじく不審な人物だった。
「私に気配を感じさせないとは……何者だ?」
男は突如、現れたコートの男を警戒する。
これほどまで近い位置にいるというのに今まで気付くことが出来なかったとは。
「私はキャプテンブラボー。錬金戦団の戦士長だ」
その言葉に少女が驚愕する。
「錬金戦団!?そりゃ、ホムンクルスがいるんだから来てても可笑しくないけど……
まさか、戦士長自ら出向くなんてこの町のコミュニティはそんなに質が悪いのかしら」
「恐らく、戦団が確認してきた中でも大きな方に分類されるコミュニティだろうな。
既に部下が一人、戦死している」
「あら、錬金の戦士ってのは随分と軟弱なのね」
「そうとられても仕方ないだろうな……だから、恥を忍んでお願いに来た。
この冬木の管理人、遠坂。そして、そのサーヴァントであるアーチャー。
君達に協力を仰ぎたい」
その言葉に更に二人は驚愕した。
自分達の素性を向こうは把握している。
だが、こちらは今まで錬金戦団が来ていることにも気づいていなかった。
確かにホムンクルス関連の事件が起こってはいた。
だが、それに気付いたのはあの蝶野一家失踪事件からだ。
それまで痕跡にすら気付けていなかった。
だが、ここで弱気を見せてはいけない。
「錬金戦団に協力する価値が私達にあるのかしら。知ってるわよね。
魔術協会と錬金戦団の仲が悪いことぐらい」
「あぁ、知っている。だが、その為に助けられない命が出るくらいなら
オレは何度でもこの頭を下げよう。
何、君達はあのランサーのサーヴァントの相手をしてもらいたいだけだ。
それ以外は全て俺たちがどうにかする」
「……そういう、条件なら悪くは無いわね。
いいわ。協力してあげる」
「助かる。一度、降りてくれ。このままでは話し辛いだろう」
そういうとキャプテンブラボーは電柱を飛び降りた。
「良いのか?」
アーチャーが遠坂に尋ねる。
「あんなこと言われて断れるわけないでしょ。
それに噂が本当なら戦士長といえば戦団でも最強の戦士。
一般的な戦士や魔術師とは別格の強さだって言うわ。
そんなのがいるなら、分の悪い賭けでもないでしょう」
遠坂はそういうと屋根から飛び降りた。
アーチャーもその後を追って飛び降りる。
下の道路で彼らは合流した。
「で、直ぐに追うの?」
「あぁ、既に俺の部下が二人、あの車を追っている」
「そいつらは使えるの?」
「一人はベテランだ。核鉄を持っていようとも並みのホムンクルスなら相手じゃないだろう。
もう一人のほうはルーキーでなまだ、鍛錬が足りん」
「そんなのをサーヴァントと戦わなきゃいけないかも知れない戦いに出すの?」
「その為の君達だ。それに……そいつは一人で最近までこの街を襲っていたホムンクルスの主犯を倒した男だ」
直ぐに彼らが連れ去れたほうへと走り出した。
車などを使うわけには行かない。
というか、無いのだ。
それにどうやら、あのキャプテンブラボーという男に車などは不要の長物のようだ。
どんな武装錬金かは知らないが凄まじい速さだ。
サーヴァントであるアーチャーもあそこまで早くは無い。
それでも、今は一番、遅い遠坂にスピードをあわせていた。
走りながら遠坂は先ほどのブラボーの言葉を思い出す。
この街のホムンクルス事件を解決したのは実質、たった一人のルーキーだそうだ。
武装錬金を使い始めたばかりで右も左も分からない状況から始まり、
先輩の助けをかりながらも主犯であった蝶野攻爵を倒したという。
そんなのに街の命運が掛かっていたかと思うと後悔がやまなかった。
聖杯戦争の準備期間であり、そっちに気が廻っていたのも確かだが
そんな危険が迫っていながら気付けなかったという責任も感じる。
それでも、そんなルーキーに任せた錬金戦団の対応が許せなかった。
この街をルーキーの実験台にしたというのか。
それはまだ、許せるが……
そのルーキーがここで始めて武装錬金を使ったというのがありえなかった。
事前に訓練や試験ぐらいするだろうに。
組織としての体制に問題があるんじゃないかと。
「凛、あまり気にするな。冷静さを欠いたマスターの命令など聞く気はないぞ」
アーチャーの言葉に釘を指される。
確かにこれからランサーと戦うというのに他の事に気をとられていては命を落とすことになりかねない。
直ぐに心を落ち着かせる。
「わかってるわよ」
一言、反論し前を走るブラボーを追う。
「戦士長が増援を連れて合流する。それまで待機だ」
何処かの工場と思わしき場所の前
黒髪おかっぱでセーラー服姿の少女が携帯電話を確認し、告げる。
その少女の言葉に少年が頷いた。
銀成学園の征服に身を包む少年は真剣な面持ちをしていた。
その表情に少しの緊張が見られるが気負いはない。
この様子ならルーキーにありがちなミスはないだろう。
まぁ、彼はルーキーでありながら既に実戦経験は豊富だ。
コミュニティとは呼べないもののこの街に潜んでいたホムンクルスと
その創造主を撃退し、壊滅させている。
「だが、君は本当によかったのか?」
少女が少年に尋ねる。
「何が?」
「正式に戦士になることだ。君には帰れる場所がある。仲間がいる。
あえて、こんな血生臭い道を行くことはないんだぞ」
「大丈夫だよ。オレ、決めたんだ。斗貴子さんからもらったこの命と力。
みんなの為に使おうって。後悔なんてしない」
彼は真顔で言い切った。
それがどんな決断でどれだけ辛い生き方になるかなど
彼はとうに覚悟している。
それでも彼は平然と言い切れるのだ。
そういう男だと言うことは少女自体が誰よりも知っていた。
彼を止めることはできないだろう。
ならば、自分が助けるだけだ。
「でも、大丈夫かな……」
「そういえば、君の友達も捕まったんだったな」
「うん……士郎も何かとんでもないことに巻き込まれたみたいだ。
だったら、オレが助けなきゃ」
「あぁ……(だが、奴らの狙いは一体何なんだ?エサの補充という訳では無さそうだったが……)」
「俺たちを一体、どうするつもりだ!?」
廃工場の中、剣崎は広い空間に連れてこられていた。
閉鎖された空間の中、彼は縛られたまま、放置されている。
彼のそばに一緒に捕まったもの達の姿はなかった。
それをモニター越しに眺めるものたちがいる。
「アレが仮面ライダーとやらか」
「二号のブレイドだ」
「どうするつもりだ。データなら採取しただろう」
「それだけでは分からないことがある」
「実戦データを得るということか」
「あぁ、その為に捉えているアンデットもいる」
「そうか……」
「見てはいかないのか?」
「ライダーシステムというのに多少の興味はあるが実戦データの採取に付き合う程、暇じゃない」
「そうか、さらってきた者の中で誰か必要の無いものはいないか?」
「……一人ほど大した意味が無いものがいるな。低級の魔術師が」
「では、そいつをオレにくれないか」
「何に使うつもりだ?」
「何、人間は仲間を傷つけられると怒る。そのデータが欲しいだけだ」
「……わかった。こちらとしても食料以外の使い道もないしな」
工場の前
錬金の戦士と遠坂は合流を果たしていた。
遠坂は錬金の戦士のうちの一人を見て驚愕する。
「む、武藤君!?」
「あれ、遠坂さん。どうして、君が?」
錬金の戦士……武藤カズキも遠坂の登場に驚いていた。
「武藤くんが錬金の戦士のルーキー……ってことは去年からずっと潜伏してたってこと?」
「いや、カズキは現地協力者だ。ある事情により、正体を明かして協力してもらっている」
遠坂の疑問に斗貴子が答える。
遠坂は斗貴子のことをいぶかしげに見た。
カズキが現地協力者でルーキーならこちらの同世代の少女がベテランということになる。
確かに身のこなしなどに一切の隙は感じられなかった。
「ある事情ね……秘密厳守である錬金の戦士が正体を明かすぐらいだからよっぽどの理由だったんでしょうね」
「あぁ……」
その言葉に斗貴子は少し暗い表情をする。
何かしらの落ち度があったということだろう。
「っていうか、それじゃルーキーどころか素人じゃない。本当に戦力になるの?」
現地協力者ということは遂最近までは一般人だったということだ。
カズキが特に際立った身体能力を有していると聞いたことは無い。
たとえ、錬金術の力を手に入れたとはいえ、そんな者が戦力として呼べるのか
「それなら問題はない。カズキは素質は十分だ。それに既に何度も実戦を潜り抜けている」
「そのホムンクルスが弱かったからとかは?」
「それはない。蝶野のホムンクルスは確認されている中でも優秀なほうだ。まぁ、最もほとんどが
動物型ホムンクルスだったがな」
「ふぅん……」
その言葉に遠坂も少し感心する。
動物型ホムンクルスと言えども一般的な猛獣などとは比べ物にならない強さなのだ。
それを倒せるほどなら確かに戦力にはなるだろう。
「ところで遠坂さんは一体、何者?」
逆に今度はカズキが質問する。
カズキにとって、遠坂は同じ学校の生徒であり、注目を集めるアイドル程度の認識しかない。
そんな彼女がブラボーの連れてきた増援なのが疑問なのだ。
「あぁ、知るはずも無いものね。私はこの地の管理者。魔術師よ」
遠坂がそう自己紹介するがカズキ自身は良く分かっていないようだった。
「魔術師……?手品とかするの?」
「違うわよ!魔術よ、魔術!!戦士なんだからそれぐらい知ってるでしょ!?」
遠坂が吼えるがカズキは頭をひねる。
「あぁ、そこら辺の知識は一切、ないんだ」
替わりに斗貴子が説明する。
遠坂は唖然としていた。
「魔術師は……まぁ、かなり乱暴な説明だがゲームの魔法使いのようなものだ」
「あぁ。へぇ、遠坂さんって魔法が使えるんだ」
「……厳密には魔術ね。魔法はそれよりも格上なの。それぐらいは覚えておいて」
今、この状況でカズキに全てを教えている時間は無い。
本来なら魔術師のプライドとしてそんな乱暴な理解のされ方など正したかったが。
「まぁ、両者の自己紹介などはまた、後日にしよう。今は捕らわれた者を救うのが先決だ」
ブラボーの言葉に一同は頷く。
「作戦は簡単だ。戦士・斗貴子とカズキは捕らわれた者を救出。俺はその間、陽動する」
「私は?」
遠坂が質問する。
「君はランサーが現れたら迎撃してくれ」
「まぁ、ランサーと当たる前に出来るだけ消耗は避けたいけど……一人で大丈夫なの?」
「何、問題ない」
ブラボーは言い切った。
たった一人でここに潜む敵を相手にしようというのに。
彼は一切の気負いを感じさせない。
「では、直ぐに行動を開始……」
ブラボーが号令をかけ、突入しようとするよりも早く
一台のバイクが工場へと突入していった。
「なにっ!?」
一同はその存在に度肝を抜かれる。
あのライダーは何が待ち受けているのか知っているのか。
「彼なら大丈夫だ。各自、それぞれの目的を忘れるな。いくぞ!」
だが、ブラボーは何か納得すると再び号令をかける。
ブラボー、カズキ、斗貴子は一斉に走り出した。
遠坂もその後を追おうとする。
だが、アーチャーは動こうとしなかった。
ずっとカズキの姿を目で追い続けている。
「アーチャー……どうしたの?」
「いや……なんでもない」
だが、遠坂には一瞬、彼が泣きそうな顔をしているように見えた。
薄暗い工場の中でブレイドはアンデットと戦っていた。
トリロバイト……ムカデの始祖である。
ブレイドは何度、倒れても立ち上がり、果敢に挑んでいった。
「ウェーーーーー!!」
気合と共にブレイラウザーを振り下ろす。
火花が散り、トリロバイトアンデットが少しひるむがその程度だ。
大したダメージにならず、すぐさまに反撃が飛んでくる。
凄まじい衝撃がブレイドを襲った。
「ウェッ!」
その一撃にひるむが大丈夫だ。
そこまで重い一撃ではない。
だが、それでも何度も喰らえば体力が持たない。
その様子をモニターするものがいる。
「ブレイドの融合係数なおをも上昇」
「そうだ。これがバトルファイトだ。一万年前の再現だ!!」
サングラスの男が叫ぶ。
二つの力と力……闘争本能のぶつかり合いが世界を熱する。
それは生存競争の縮図だ。
強いものが弱者を淘汰する。
だが、どちらが弱者など戦いが終わった後でしか決まらない。
己の生命の炎を燃やし存在は戦う。
火花を散らし、拳と脚……剣を持って!
「うおおお!!」
そこに一台のバイクが突入する。
そして、バイクから降りるとヘルメットを外し、バックルを取り出した。
「そのアンデットはオレが封印する!!」
橘は叫び声を上げ、ダイヤのAをバックルへ挿入した。
「変身!」
―――TURN UP―――
オリハルコンエレメンタルを潜り抜け、ギャレンがトリロバイトへと襲い掛かる。
「邪魔だ!」
それよりも先にブレイドにギャレンラウザーの銃弾を浴びせた。
「ウェッ!橘さん。何するんです!」
「五月蝿い。アンデットはオレが封印する。オレが封印しないと俺の体は!!」
ギャレンはブレイドに意を返さずトリロバイトを殴りつける。
一心不乱に拳を振るう。
その姿は悪魔にとりつかれているようだった。
「何を言ってるんだ。俺も一緒に……!」
ブレイドも手をかそうとトリロバイトに向かうがすぐさま、ギャレンが
零距離でギャレンラウザーを放ちブレイドを吹き飛ばした。
「邪魔をするなと言った!ぶっ飛ばすぞ!!」
何が何でもギャレンは一人で戦うつもりだ。
だが、次第にトリロバイトアンデットにも押されていく。
「ギャレンの融合係数ドンドン下がっていきます」
「何だと……奴は戦いを恐怖しているのか?」
そう、その姿は恐怖を払おうともがいてるに過ぎない。
ギャレンが戦っているのはアンデットではない。
自分自身が破滅するという恐怖と戦っているのだ。
「うおおおおおお!!」
ギャレンの懇親のパンチも既に勢いは無い。
必死に戦えば戦うほど、そのコンディションは悪化の一途を辿った。
そして、トリロバイトの一撃に吹き飛ばされ、遂に変身が解除される。
恐怖のあまりにアンデットとの融合が維持できなくなったのだ。
アンデットの前に生身を晒す。
それは命の終わりを意味する。
「止めろ!」
その前にブレイドが立ちはだかる。
幾ら、攻撃を受けようと目の前で命が危ないのであれば助けないわけが無い。
裏切られようとも彼はかつての仲間なのだ。
ブレイドは二枚のカードを取り出し、ラウズする。
―――キック―――
―――サンダー―――
それは自分自身の力で封印した二枚のカード。
そして、完成するコンボ。
――――ライトニングブラスト――――
召喚された二つのアンデットの力がブレイドの体を駆け巡る。
強化される脚と付加される電撃。
その力は必殺の一撃。
「ウェーーーーーーーーーイ!!!」
高く飛び上がり、ブレイドは一直線にトリロバイトアンデットへと向かう。
繰り出されるはキック
仮面ライダーが放つべき必殺の一撃
伝統という概念のつまりし最強の技
ライダーキック
トリロバイトアンデットはそれを防ぐこと敵わず直撃をうける。
圧倒的な破壊力を一点に凝縮し、更に超高圧の電流がインパクトと同時に流れ込む。
こんなものを喰らって絶命しない生命体は居ない。
それがたとえ、アンデットであろうともその行動が一時的に止める事だって可能だ。
吹き飛ばされバックルを展開するトリロバイト。
その姿にブレイドはカードを投げつけ封印する。
「素晴らしい。素晴らしいぞ」
サングラスの男は立ち上がり、歓喜する。
あの闘争本能は本物だ。
そうでなくてはアンデットの戦いに介入する資格などは無い。
「大変です。侵入者が捕まえてきた者を」
「ふん、他のものにようはない。奴らが対応するだろう。
直ぐに撤収するぞ。ここの研究がもれると厄介だからな」
男はそう告げると直ぐにその部屋を後にした。
「大丈夫か?」
「あぁ……何か妙な薬を飲まされたようだけどこの程度なら問題ない」
シンは自力で立ち上がる。
確かに少し辛そうだが歩けないほどではなさそうだ。
翔にいたっては既にピンピンしている。
確か塀を貫通するほどの衝撃を受けていたはずだが。
「こっちのほうは気絶してるようだが、命に別状はないようだな」
斗貴子がリリアンの女性の安全を確認する。
眠っているだけのようで外傷等は見られなかった。
「剣崎さんと士郎は!?」
シンは二人がいないことに気付き尋ねる。
「その剣崎さんって人は多分、無事だ。でも、士郎は……」
仮面ライダーブレイドが別の場所で戦闘を行っていることは知っていた。
勝敗は分からないが位置が把握できているだけ安全だ。
だが、衛宮士郎の行方だけは分からなかった。
てっきり、同じ場所に幽閉されていると思えば彼だけの姿が無い。
「くそっ!!何者なんだあいつらは!?」
シンが壁を殴りつける。
護れなかった悔しさがこみ上げた。
結局、何も変わっていないというのか……
「とにかく、一旦逃げるんだ」
「士郎は!?」
「士郎はオレが探す」
カズキの言葉に斗貴子が一番、驚く。
「何をバカな。それなら私が」
「オレより斗貴子さんの方が大勢を護って戦える。俺じゃ多分、無理だと思う。
だから、オレが探しに言ってくる」
確かに保護対象が多ければ護りは辛くなる。
しかし、この状態でルーキーの単独行動は危険だ。
「オレも一緒に」
シンがカズキと共に行こうとするがその肩を翔が掴む。
「止めておけ。足手まといになるぞ」
「だけどっ!!」
「それに彼女達を連れて行くことも出来なくなる」
翔がリリアンの女生徒を指差す。
眠る三人を二人では連れて行けない。
ここでシンとカズキ、どちらのほうが戦力になるかを考えれば
まだ、何も消耗していないカズキのほうだろう。
「くそ……頼む。あいつは困ってた俺達に何も聞かずに住む場所をくれた良い奴なんだ。
絶対に助けてくれ」
「あぁ……オレだってあいつの友達だ。この命に代えても絶対に助け出す!」
カズキは力強く頷くと走り去った。
その姿を斗貴子は心配そうに見送る。
確かにカズキは既に立派な戦士だ。
だが、一人前の戦士ではない。
単独行動は危険だが彼ならやってくれる。
そんな気がしていた。
カズキは廊下をかける。
既に誰とも遭遇しない。
シンたちを助けるときは研究職員たちものたちが歩いていたが
既にその姿はなかった。
既に連れ出されている可能性もある。
だが、諦めるわけにはいかない。
もう、これ以上、誰も失わないと決めたのだから。
「(……蝶野)」
あの日の夜に……
「!」
直ぐ近くで誰かの足音が聞こえる。
それが士郎である確証はなかったが嫌な予感を感じその方向へ急いだ。
次の曲がり角を曲がれば、そこで見えるはずだ。
カズキは敵である可能性を考えずに思い切り、曲がり角に出た。
そして、最悪の想像と出会う。
飛び散る、赤き血
突き出る赤き槍
それは完全に心臓を貫かれていた
心臓を貫かれて生きて生ける人間はいない
そう、だから……
衛宮士郎は武藤カズキの目の前で絶命した