視界を赤に染まる……

広がる血の海

命の気配が急速に薄れていく

まただ……自分は救えない……

「士郎ォォォォォ!!」

カズキは友の名を叫び、駆ける。

だが、無慈悲にも赤き槍が彼を貫こうと放たれた。

それは赤き閃光。

精確にカズキの心臓を狙い放たれる。

カズキはそれを体を横にずらしかわした。

「どけっ!邪魔をするな!!」

まだ、全てが決まったわけではない。

衛宮士郎を救う可能性が残されているかもしれない。

そんなありえない願い

「そいつを助けようとしてるのか?諦めろ、心臓が完全に潰れて生きていける奴はいない」

あっさりとそいつは否定する。

だが、カズキは絶望してはいなかった。

まだ、助かる可能性なら残されている。

それは確実性がある方法だった。

その方法なら例え、心臓が使い物にならなくなっていても

人一人の命を助けることが出来る。

「やってみなくちゃ分からない」

「そうか……だが、無理だ。お前も今すぐに死ぬんだからな」

青き衣の男は再び、槍を放つ。

その速度は人間のそれを遥かに上回る。

常人では目で捉えることは不可能だろう。

だが、カズキも普通とは違う。

幾多の死線を潜りぬけてきた経験がある。

直感が槍の軌道を告げる。

カズキはそれを左手で受け止めた。

骨を叩きおられるかと思うほどの衝撃。

だが、勢いが足りなかったのかそこまでには至らない。

青き衣の男は槍を即座に手繰り寄せる。

だが、それよりも早くカズキは右手を胸に重ねた。

そこは人体の心臓がある場所。

カズキはその部分を強く握り締める。

 

生命が持つ、生きるための力

闘争本能

火をつけ燃やす。

心の撃鉄を引き、生命の力を呼び起こす。

武藤カズキの右胸に埋め込まれし錬金術の秘法

核鉄

それは人の闘争本能に反応し武器へと変化する。

「武装錬金!!」

放たれる言葉は戦いの宣誓。

核鉄を武装へと変化させる言葉。

命の意味と心の力を持って鉄は形を成す。

その人間の心理を武器へと具現化し生ずる。

故にカズキのそれは突撃槍

一点突破を主眼とし、どんな堅牢なる壁も打ち破る最強の矛

胸より表れしその巨大なる槍は青き衣の男へと迫る。

男は即座にバックステップでそれを回避する。

カズキはその槍を掴み構えた。

型と呼べるほど完成されたものではない。

だが、その姿勢からは敵を討つという気迫は伝わる。

その姿に青き衣の男は微笑んだ。

彼は面白いと笑ったのだ。

武器を携え、戦おうとする者の姿を見て。

だが、それは決して侮辱ではなく。

一人の戦士として戦いを喜ぶものだった。

「錬金の戦士のランサーか。いっちょまえの顔と気迫じゃねぇか」

「五月蝿い!俺はお前の相手をしてる場合じゃないんだ!!」

カズキは先制攻撃を仕掛ける。

武器の特性上、護りにまわるのは避けねばならない。

突撃あるのみ。それがこの槍の使い方だ。

だが、そのチャージは軽々と回避される。

更にあろう事かその穂先に男は降り立ったのだ。

「遅い……気迫は十分だが技量は追いついてないようだな」

「そんなの百も承知だ!」

カズキは男を振り下ろそうとするが彼は軽々と床に降り立った。

「オレがどれだけ未熟で足手まといかなんて分かってる。

お前と戦って勝てるわけが無いってのも……

だけど、だからって友達を見捨てる訳にはいかないんだ!!」

カズキは自身の突撃槍の特性を発現させる。

武装錬金には現代科学技術をもってすらも再現しきれない特殊な力を有する。

それを扱うことにより武装錬金は現代兵器を上回る力を有するようになるのだ。

カズキが持つ特性は飾り布を生体エネルギーへと変化させること。

自身に流れる闘争本能と生命が生み出す力を布のエネルギーへと変え、

出力へと変換する。

想いと気迫すらも突撃力へと変える一点突破の能力。

その輝きは太陽光に似た山吹色

故にこの槍の名を

 

サンライトハート

 

と呼ぶ。

「なっ……!?魔術師でも無いくせにどんな魔力だ!?これほどの魔力を増幅も蓄積も無くいきなりひねり出してやがるのか!?」

男はサンライトハートに漲るエネルギーを見て驚愕する。

こんなものを放たれれば壁をブチ破っても余りある。

突撃槍という利点をここまで特化させた武器も珍しいだろう。

「貫け!俺の武装錬金ッ!!」

カズキは飾り布より放出される生体エネルギーを加速に使い、

一気に男に向かい突撃する。

その速度もさることながら、その巨大な槍が弾丸の如く迫るところに恐怖がある。

こんなものをまともに喰らって形状を維持することなど不可能。

まともに喰らえば肉片になって飛び散るしかない。

だが、男はかわそうとせずにあえて立ち向かった。

「同じ槍使いとして……英霊が人間に負けてたまるかってんだ!!」

男は赤き槍を構え、サンライトハートの穂先にあわせる。

そして、インパクトと同時にその衝撃を上ずべりに逃がした。

力の方向を変えられ、上へと向かうサンライトハート。

「なっ!!」

「力任せに突っ込んでくるだけなら対処のしようがあるんだよ!!」

そして、すれ違いざまにランサーはカズキの心臓、目掛けてその槍を放った。

その一撃は神速

速度だけならサンライトハートのチャージと比較するまでも無い。

一瞬、赤き光がカズキを貫いたようにしか映らない。

カズキはその勢いのままに地面に落ちた。

これで決着はついた。

まだ、未熟ながらも光る素質を持った若者だった。

この世界に生まれながらに闘争本能に満ちた男だった。

だが、そのことに後悔などは無い。

ここで死ぬぐらいなら所詮、その程度だったということだ。

「まだ……まだまだぁ……!」

その言葉に男は驚愕する。

そして、振り向く。

そこではカズキがサンライトハートを杖代わりに立ち上がる姿があった。

胸から血流し、口からも血を吐きながらも

彼はその瞳に一片の恐怖も無く、敵を睨みつける。

「なんだとっ!確実に心臓を貫いたはずだ。何故、お前は生きている!」

それは当然の疑問だ。

だが、カズキは答えない。

完全に立ち上がるとサンライトハートを構える。

こいつはアンデットだとでも言うのか!?

ヒューマンアンデットだとでも

もしくは吸血鬼かその死徒だとでも……

だが、彼には生きた人間特有の生命力を持っていた。

そして、その槍が持つ輝きは正に太陽。

太陽の光を忌み嫌う、死徒では決してありえない。

「まだだ。オレはまだ、やられちゃいない!」

「そうかい……なら、完全にトドメを刺してやるよ!!」

男はその手に持つ赤き槍を構える。

禍々しき魔力がその槍へと込められていった。

その瞳は先ほどまでとは違う。

本気で武藤カズキというモノを殺そうとしている。

「人間がオレに奥の手を使わせたんだ……誇りに思えよ!」

カズキは嫌な予感を感じ身構える。

いくら、何でもここで迂闊に飛び込むのは危険だと判断した。

だが、その判断は間違っていると男は微笑む。

    ゲ イ ボ

――――刺し穿つ死棘の槍――――

放たれる槍。

その軌跡を見極めカズキはサンライトハートで受け止めようとする。

だが、男は自身の勝利を……いや、彼の心臓に槍が刺さる事を確信していた。

どんなに優れた反応を持っていようともそれは回避できない。

抗うことは出来ない

 

だが

カズキはゲイボルクの一撃をサンライトハートで受け止めた。

「なっ!!」

その事実に男は驚愕する。

「何かとんでもない攻撃をするのかと思ったら……普通の攻撃?」

カズキ自身も疑問に感じていた。

アレほどまでに溜めて放たれた一撃は何の変哲も無い突きでしかない。

確かに凄まじい速度だったがかなり、広い面積を持つサンライトハートで

防げぬほどではない。

そして、総じて頑丈な武装錬金の中でも極めて頑丈なサンライトハートに

ヒビを入れるほどの一撃でもなかった。

「どっ、どういうことだっ!?お前、何者だ。ゲイボルクが発動しねぇだと!!」

男は困惑を通り越し、混乱しそうだった。

今の今までゲイボルクが不発に終わったことなどは無い。

何らかの理由で回避するものもいたが

それ以前の問題だった。

発動しないのだ。

因果を逆転させ、心臓に刺さったという結果を招く呪いの槍。

その呪い自体が完成しない。

因果の中に奴の心臓に槍が刺さる結果がありえないというのか……

「!」

男は何かに感づき槍で体に向かって飛んでくるものを叩き落とす。

「誰だッ!?」

背後の暗闇に向かい、男は叫ぶ。

その先には赤い外套を着た男が弓を構えている。

「ランサーを相手にこの距離から飛び道具は効果的とは言えないな」

アーチャーはそう言うと弓を投げ捨て、何処から短剣を出現させる。

両手に短剣を握り、ランサーに向かって駆ける。

瞬時につめられる間合い

だが、ランサーはその攻撃を受けず背後へととんだ。

そして、天井を蹴り加速するとそのまま、カズキの脇を抜けて走り去る。

「待てッ!!」

カズキはその後を追おうと方向を転換する。

「無駄よ。貴方の足じゃ追いつけない」

それを遠坂が止める。

確かにあの速度では追いつくことは不可能だろう。

それにカズキの目的はランサーを倒すことではなかった。

「そうだ。早く士郎をッ!」

「静かにして」

既に遠坂は士郎の様子を見ていた。

だが、どう考えても絶命している。

心臓を破られて生きていける訳が無いのだ。

「早く、斗貴子さんかブラボーのところに……」

「黙ってて!!」

遠坂がカズキの言葉を一喝で止める。

その気迫にたじろぎカズキは遠坂の様子を見守ることにする。

あえてカズキの言葉を遮るぐらいなのだ。

何かしらの手段があるのだろう。

遠坂は赤いペンダントを取り出す。

そして、魔術回路を開き、魔力を注ぎ込み、魔術を起動させる。

赤いペンダントから膨大な量の魔力が発生する。

基本的に魔力を感知できないカズキでもその威圧感が分かるほどだ。

「やれやれ……そんな男を助けるのに使ってしまって良いのか?」

アーチャーは呆れたという様子で遠坂に話しかける。

だが、彼女は反論もせず、集中を続けた。

その姿勢にアーチャーは首をすくめる。

「一体、何をしようとしてるんだ?」

カズキがアーチャーに尋ねた。

その言葉にアーチャーは振り向くとカズキの顔を睨みつける。

「君も君だ。サーヴァントを相手に戦いを挑むとはな。相手との実力差も分からないのか?」

「分かってるさ。一目見た瞬間、格が違うのが分かった。俺なんかじゃ太刀打ちできないってのも。

だけど、友達が殺されたのを黙ってみてることなんてオレには出来ない」

「君は……よほどのバカだな。他人を護って何になる。そんな甘い考えでは遠からず死ぬぞ」

「……そうかも知れない。斗貴子さんにも良く怒られるし……だったら誰かを護れるぐらいに強くなるだけだ」

カズキはアーチャーの侮蔑など一切、聞いてなかった。

いや、感じていないのだろう。

彼の言葉を叱咤と受け止めたのかも知れない。

 

「(……なんでさ……なんで、君はそんなに真っ直ぐなんだ……)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ANOTHER PLAYER…

LogNo007 <<騎士との邂逅>>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら、ホムンクルスは撤退済みのようだな」

ブラボーは倒れる研究所員たちを見て呟いた。

パソコンや観測用の機械などが置かれている。

何かの実験をしていたようだがそれらしい痕跡は残っていなかった。

「おいっ、コートの怪しい奴」

入り口からシンがブラボーに声をかける。

「キャプテンブラボーだ。君には少女達の護衛を頼んだはずだが?」

「翔と剣崎さんに代わってもらった」

「ほぉ、剣崎一真と合流できたのか」

「あぁ、なんでもアンデットと戦わされたらしい」

「アンデットか……」

「知ってるのか?」

「噂程度はな。生物の進化論の根底が覆される大発見だと騒がれ、次には

封印が解かれ人を襲い始めたというぐらいだ」

都市伝説に信憑性が伴った程度の認識のようだ。

「それで俺達を襲ったというホムンクルスのコミュニティについては何かわかったのか?」

「結局、手がかりらしいものは何も無い。ただ、そのコミュニティに協力する魔術師とアンデットが

存在するのは間違いないだろうな」

「アンデットにそんな知性があるのか?」

「良く分からない。剣崎一真か橘朔也に聞いてみるしかないだろうな」

 

 

「全く君は……直ぐに無茶をする」

斗貴子は胸に空いた傷に核鉄を抑えるカズキに対して小言を言った。

心臓が無いカズキにとってその位置への攻撃は致命傷にはならない。

だが、体を貫通されていることは同じなので治療しなければ死ぬことになる。

そこでカズキは核鉄の持つ治癒力を持ってその傷の再生を行っていた。

「闘争本能を刺激して人体の持つ再生力の強化……随分と便利よね核鉄って」

遠坂はその姿を見て呟く。

あれほどの大怪我といえども明日には傷が塞がるというから驚きである。

「だが、それ故に消耗も激しく過度の治癒は寿命すらも削りかねない。

あまり、当てにして良いとも言いがたいがな」

カズキに対する警告の意味もかねて斗貴子が遠坂に説明する。

幾らなんでもノーリスクであれほどの回復力を発揮するわけではない。

所詮、強引に治癒力を引き出しているのだ人体への悪影響もある。

「そういえば……士郎はどうするんだ?」

カズキが遠坂に尋ねる。

彼女の治癒魔術のおかげで士郎の心臓は再生した。

だが、未だに意識は戻らないでいる。

命に別状はないのでいつかは起きるだろう。

「彼はただの人間だもの。記憶を消して元の生活に戻ってもらうのが良いんでしょうけど……」

遠坂はジトっとした目で剣崎を睨みつける。

「なんだよ?」

剣崎はその視線に気付き問い返した。

「どうも、厄介なのを居候にしてるみたいだしね。このままじゃ十中八九事件に巻き込まれるわよ。

いえ、もう巻き込まれてたわね」

「俺達のせいだって言いたいのか?」

「そうよ。理由も知らない善良な高校生の家に居つくヒーローが何処にいるのよ」

「うっ……」

組織壊滅で住居すらも無い状態だったから士郎の行為に甘えてはいたが

今回のように自分を狙う者たちに襲われる可能性だって高いのだ。

本来なら出て行くのがすじだというものだろう。

「そのぐらいにしておけ」

そこにブラボーとシンが帰ってくる。

「手がかりは?」

「消されていた。研究員は恐らく全て洗脳されていただけだろう。情報源になるとも思えん」

「それじゃ、結局、サーヴァントにも逃げられるしアンデットのコミュニティの情報も見つからない。

ふんだりけったりじゃない。こっちは姿を見られたっていうのに」

「でも、士郎や捕まった人たちは助けられた」

カズキの言葉は正しいだろう。

だが、敵に情報を与えてしまったことは痛いことだ。

 

リリアンの女生徒は錬金戦団からの根回しで交通事故にあったことになった。

基地にいた研究員は意識を取り戻し錬金戦団の息がかかった病院にて精密検査を受けることになる。

ブラボーはこの事件の事後処理。遠坂は家に戻って後日に情報を交換することとなった。

カズキと斗貴子は銀成学園の寄宿舎に戻り、休息をとることに。

士郎も病院で一旦、精密検査を受けることとなった。

 

 

「恐怖心……」

橘は病院のベッドで目を覚まし剣崎からある言葉を告げられた。

それはブラボーから齎された情報だった。

 

「烏丸所長から君達に伝言を預かっている」

「烏丸所長から!?」

「あぁ、彼は現在、何らかの理由で表立って行動できないらしい。

錬金戦団の施設に彼からの文言を届けられていた」

烏丸はボードの所長でありライダーシステムの開発者である。

ボードと錬金戦団に何らかの関連でもあるというのか

「それは君と橘朔也……つまり、仮面ライダーにあてたものだ。内容は……」

 

「そうです。ライダーシステムは適合者の恐怖心を増幅し破滅のイメージを見せているだけなんです。

だから、仮面ライダーに変身するからといって死ぬことはないんですよ」

「恐怖心……俺の心に恐怖心……」

その言葉は橘にとってショックだったらしい。

剣崎自身もあれほど勇敢に戦っていた橘朔也が恐怖を抱いていたことも驚きだった。

いや、戦うことに恐怖を持たないものはいないのだろう。

誰だって恐いのだ……剣崎もいずれ恐怖心に負ける日が来るのかも知れない。

「そうか……」

橘は視線を落とす。

「一緒に戦いましょう。そうすれば恐怖心だって……」

「……一人にしてくれないか」

剣崎の言葉を遮り橘が呟く。

その言葉に力は無い。

剣崎も流石にここで無理強いすることも出来ず病室を後にした。

 

 

「やっぱり、出て行くんですか?」

シンが荷物を纏めている剣崎に尋ねる。

「あぁ、やっぱり何の事情も知らない士郎を巻き込むわけにはいかない。

幸い、アンデットサーチャーはノートパソコンでも起動できる。

アンテナは置いていかなきゃならないけどそれぐらいなら大丈夫だろ」

「特定されなければ出すけどね……」

もし、アンデットがアンデットサーチャーの存在に気付き、

その受信先を特定された場合に襲撃されるだろう。

「俺達がいることは迷惑なんだ」

「だったら、協力してもらえばいいんじゃないのか?」

翔の言葉に剣崎とシンは固まる。

「はぁ?本気で言ってるんのかよ。アンデットと戦うってことは死ぬかも知れないってことだぞ」

「お前らも死ぬかもしれないってことだろ」

「それはそうだけど。何も士郎のような普通の奴まで巻き込む必要性はないだろ」

「そういうものなのか……?」

翔は納得する。

だが、本気で分かってるのか疑わしかった。

「シンも出て行くのか?」

「剣崎さんがそう言ってるのにオレだけ留まるわけにはいかないだろ」

もしもの場合はザフトのつてを使ってホテルを取ることも出来る。

だが、本来の任務を放り出しているのにそんなあつかましいことも出来ない。

こんなに勝手にやってるのに未だに抗議なども無い。

それは肯定だと受け取っていた。

「翔はどうするんだ?」

翔は二人よりも先にここに住み込んでいた。

彼自身も剣崎の戦いに巻き込まれているに過ぎない。

「二人が出て行くなら俺もついていく」

「分かってるのか。この前みたいなことに巻き込まれるってことなんだぞ」

翔自身は人間とは思えない強さを持っている。

だが、それでも本当の化け物に比べると可愛いものだ。

実際にホムンクルスを相手に手も足も出ずに負けている。

「構わないさ」

だが、翔は即答する。

その意思の強さを実感しとめることはしなかった。

 

 

夜の衛宮家は静まり返っていた。

夕食は大河や桜がいたからまだ、賑やかだったが

彼女達が帰れば士郎一人だ。

もう、些細なことで喧嘩を始めるシンや剣崎。

それを見守っている翔もいない。

たった、数日の付き合いだったがそれでも寂しいものだ。

大河も寂しそうにしていた。

桜は少しほっとした様子を見せていたが元々、静かな性格だったし

なじむ間も無かったのだから仕方ないだろう。

「鍛錬でもするかな……」

 

衛宮士郎には日課があった。

庭にある土蔵。

そこに篭りする鍛錬。

彼らが居たときもしていた。

詮索はされなかったので何も語らなかった。

自分が魔術師であることを。

 

 

「記憶が消されてる相手をわざわざ、消す必要があるのか」

「そこは問題ではない。彼の価値は剣崎一真とシン・アスカの共通の友人であるということだ。

その二人が友人を失うという怒りが何を齎すのかを図りたいのだろうな」

「一体、その二人に何の価値があるっていうんだ?」

「それは私にも分からない……だが、望まれているのだから実行するしかあるまい。

彼は死ぬことを望まれているのだ。あの方にな」

「へいへい……」

 

 

その襲撃は突然だった。

それは音も無く近寄り、一撃にてその命を絶とうとする。

脳が映し出した自分が死ぬイメージ。

それが危機を教え、紙一重でそれを回避する。

「以前よりはしぶとくなったようだな」

その先にいたのは青い戦衣に身を包み、赤き槍を持つ男。

その姿を見た瞬間に全身が恐怖で張り付く。

本能的な拒絶感

それもそうだ。

人間誰しも自分を殺した相手は恐ろしい。

「だが、諦めな。お前じゃ抗えない。あの槍の坊主のような力も無ければ覚悟も無い」

ゆっくりとその男は近づいてくる。

誰と自分を比較しているのか分からなかったが

士郎は憤慨する。

なんに対する覚悟かは分からないが

黙って殺されるほどに自分は容易くないと憤る。

「くそっ……」

士郎は手近にあった木刀を握る。

そして、意識を集中し魔術を行使しようとして止めた。

そんな隙を作れば一瞬にして自分は死ぬだろう。

何も出来ずに……

 

 

「なぁ」

翔がシンに尋ねる。

ここはホテルの一室。

ザフトの資金でしばらく、ここに滞在することとなった。

相変わらず上層部からシンの独断行動に対する御咎めはなく。

資金の引き落としにも問題は生じていない。

それをシンは疑問に感じていないようだ。

「どうしたんだ?」

「士郎……大丈夫かな」

「大丈夫だろ。元々、一人暮らしだったんだ。食い扶持が減って助かってるって」

「いや……昨日のように襲われていないだろうか」

「まさか、あいつらが士郎を襲う理由なんて」

「知り合いなら人質をとるかもしれない」

翔はTVの画面を見つめる。

そこにはサスペンスドラマが流れていた。

その影響というかそれで思いついたのだろう。

「だけど、俺たちはあいつの家を離れたんだ。

それで関係は終わる。もう、あいつを人質にするメリットなんて」

「シンは……士郎が死んでも平気なのか?」

翔のその言葉にシンは言葉に詰まる。

もし、そんな事態になったら間違いなくシンは怒り狂うだろう。

たった数日間の生活だったけど士郎は家庭的な温かさを自分に与えてくれた。

もう、とうに忘れ去ったと思っていた暖かさをくれたんだ。

そんな恩人が殺されて黙っていられるほどに薄情ではない。

剣崎だって黙っていないだろう。

常に些細なことで口論となるがその胸のうちに示す指針は同じ方向を向いているのはわかっている。

恩義を受けた相手の死を容易く受け入れるほどにその心は成熟していない。

「……様子を見に行くか」

シンは立ち上がる。

剣崎はまだ、帰ってきてないが様子を見に行くだけだ。

昨日の今日で何か厄介なことになってるはずもないだろう。

「あぁ」

翔はシンの言葉に嬉しそうに頷いた。

 

 

月の光が差し込む

青白い光は一人の少女を映し出していた。

金色の髪

白い肌

蒼い瞳

その身を白銀の鎧で包みこんだ一人の少女が立つ。

その瞳は力強く少年を見つめていた。

「――――問おう、貴方が私のマスターか」

澄んだ声が静かにだが力強く響く。

見下ろされ問われた少年

衛宮士郎は言葉も発せずにその少女に見入っていた。

その姿は幻想のようだった。

現実に存在している確かなものだが何処か違う。

何も言葉も返せずただ、見つめ続けていた。

不意に右手の甲に熱さを感じる。

そこには蒼く輝く不可思議な紋章が刻み込まれていた。

 

 

「……強い魔力を感じる」

シンと二人、夜道を歩き衛宮家へと向かう途中。

翔は強力な魔力源の出現を感知した。

「えっ?」

シンは翔の突然の言葉に尋ねるがそれと同時に彼は飛び出していた。

アスファルトを蹴り跳躍

民家の屋根を越えそのまま遠くへと飛び立っていく。

「翔、あのバカ!!」

シンは全速力で駆け出す。

あんな非常識な力を発揮して一般人にでも見つかったらどうするというのだ。

別に隠さなければならない力ではないが普通の人は驚く。

腰を抜かすだろう。何処の映画の撮影かと思うかもしれない。

 

衛宮家の庭で繰り広げられる少女とランサーの戦い。

ランサーのゲイボルクを少女は何かで弾き返す。

「てめぇ、セイバーか!?」

ランサーは少女を睨みつける。

「もしかしたらアーチャーやライダーかも知れぬぞランサー」

少女は涼しげな顔で答える。

その手には何も持たない。

いや、持ってはいるのだ。

先ほどから打ち合いを続けているランサーには分かる。

「透明な宝具だと聞いたことねぇぞ。そんな英雄!」

透明な武器……それこそが少女の武器だ。

恐らくそれは剣

何かしらの魔術により剣を透明にしているのだろう。

「ちっ……こうなれば奥の手……」

ランサーがゲイボルクを構える。

そして、魔力を集中しだした。

武藤カズキに放った奥の手

宝具発動

因果を逆転させ心臓に槍が刺さった結果を作り出す

この技をまともにくらえばどんな者だろうと……

その時、突如として空より翔が舞い降りた。

自由落下により凄まじい速度で降下し木刀を振り下ろす。

「なっ!?」

ランサーは真上からの強襲にゲイボルクの発動を中止し槍で受け止めた。

二つの物体がぶつかり合い、衝撃がかける。

翔は反動のままに飛び去り、地面に降り立った。

「てめぇは!」

ランサーは翔の顔を見て叫ぶ。

剣崎一真やシン=アスカと行動を共にする少年。

少年は木刀を構えた。

その木刀はあれほどの勢いでゲイボルクと衝突したというのに亀裂一つ存在しない。

むしろ、光り輝いていた。

「運命が紡がれる……大いなる大樹の葉に書き記されし言葉の通りに」

無音の言葉が世界に響く。

「これは……魔力なのか?」

ランサーはいぶかしむ

翔から発せられる不可思議な気は人が魔力と呼ぶ根源的生命力に似ている。

むしろ、生命から放たれる全ての力を統括して魔力と呼べるのだから

彼が発するそれも魔力であるはずだ。

だが、それでも違和感を感じた。

何がおかしいのか分からない少し歪み。

それはセイバーにも分かるようで突如として現れた乱入者に困惑している。

「翔……どうしたんだ。いったい?」

士郎が翔に尋ねる。

翔の視線はゆっくりと士郎に向けられた。

 

「運命の鍵は揃った……」

 

 

「翔……?」

シンは駆け抜ける足を止め、立ち止まる。

そして、突如として脳裏に聞こえた言葉に反応した。

脳裏に浮かぶは光り輝く翼

「なんだ……これは?」

頭を抑え、壁にもたれかかる。

 

「くっ……なんだ。これは?」

ホテルへと戻っていた剣崎は言葉と共に

脳裏に浮かび上がったイメージに困惑する。

それは金色の鎧に身を包みし者

 

「いたっ!」

カズキは寮の自室にて突然の声と頭痛に困惑する。

浮かぶイメージは山吹色の光を放つ巨大な槍

そして、日食

 

「なんだ……」

士郎の脳裏にもイメージが浮かぶ

光り輝く剣

剣の丘……

そして……

 

 

無音の言葉は世界中へと届く

 

 

「最初の扉が開いたか……」

「そのようだな。だが、まだだ。その先にあるお宝には届いてねぇ」

「それも時間の問題だ」

「だが……この力の波動は……」

「気になるな。……様の判断を仰ぐか」

 

運命の流れが解き放たれる

今、この時から……

 

 

 

 

 

 

 

 

To Next Log

 

 

 

Page End