スーパーロボット大戦

〜OVER THE GOD〜

第一章        異界激震編

第三話 音速の騎士

 

朝日が世界を照らし出す。

心地よい風と小鳥たちのさえずりが安穏とした夢の中からトールを引きずり起こす。

目蓋の幕が開け放たれトールは光の情報をとりこんでいく。

目の前では一人の少女が小鳥たちと戯れながら自分の体を縛る布を脱ぎ捨てる。

着替えてる・・・

別に興味がわかなかったトールは欠伸をすると再び眠ろうと瞳を閉じて毛布を引っ張った。

だが、横で誰かが慌てているらしく五月蝿い。

どうやら、少女の着替えを見てしまい王太が興奮しているらしい。

トールは邪魔だったので足払いを食らわせた。

「うわっ!」

王太は転んで思い切り顔をぶつける。

「いつっ!てててて」

王太は打った顔を抑えながら前を見た。

そこには布だけを身につけた少女が王太を見つめている。

二人は真正面から向かい合い顔を真っ赤にしていた。

そんな二人をよそにトールは再び眠りの世界へと旅立ち始める。

 

次にトールが起こされたのは今夜が来てからだった。

どうやら、昨日の戦いで負傷した生徒の傷が痛み出したらしい。

そこでどうにか出来ないかと相談に来たのだ。

「あいにくだがオレは回復魔法なんて一切、使えないぞ」

トールは堂々と威張りながら言った。

「・・・魔法があるんですか?」

「あぁ、色々あったな」

トールが住む世界、ホライゾンには魔法が存在している。

人が持つオーラと世界のオーラを結びつけ使う技法。

オーラバトラーの原理にも似たものだが別物だ。

「攻撃魔法とかなら使えるんですか?」

今夜が興味を抱きトールに尋ねる。

「いや、オレは全く魔法の素質が無いから一つも使えないぞ」

トールのその言葉に今夜は落胆している。

あれだけ期待させといてそれか・・・

「そんなことよりも早くこの人をどうにかしないと」

王太は話してる二人に注意する。

一人の生徒が傷に苦しみ暴れている。

それをみた少女はそこに駆け寄ると何かの呪文を唱え始めた。

すると生徒の体が見る見るうちに石化していく。

「なっ!石になっただと!」

「おぉ、魔法か・・・で、味方を石化してどうするんだ?」

驚くショウと生徒たち。トールは別段、驚かずに少女に尋ねる。

「命の動きを止めました。体を治せるところにいくまでの応急処置です。命に別状はありません」

少女の説明に周りの人たちは落ち着きを取り戻し始める。

「・・・この学校の生徒って順応力高いな」

「あぁ、驚くほどにな」

トールとショウは既にチャムに馴染み石化されてもあっさり納得している生徒に驚いていた。

そんなことを話している二人の前に少女が歩いてくる。

「私はユーリナ=タ=カラ。異なる世界の戦士の方々ですね?」

「あぁ、オレはトール=セルヴァイス」

「オレはショウ=ザマだ」

「この世界に大きな脅威が迫っています。貴方たちの力が借りたいのです」

ユーリナの言葉に二人は驚く。

「そして、王太。貴方とダイソードの力も」

ユーリナが王太を見ていった。

王太は自分を指差して驚いている。

「世界の境界線があやふやになっています。私はそれを元に戻すためにここに来ました」

「世界の境界線・・・それが俺たちがこの世界に来た理由なのか?」

ショウが尋ねる。ユーリナは頷いた。

「あの時の空の亀裂・・・あれが世界の境界線か」

トールはこの世界に来る前に飲み込まれた空に現れた亀裂を思い出す。

「何故、こうなってしまったのかは分かりません・・・ですが、私は伝説に記された力を探しています」

「伝説に記された力?」

王太が尋ねる。

「王太、貴方が乗るダイソードもその伝説に記された力なのです」

「ダイソードが・・・」

「そう、かつて世界が大いなる闇に覆われた時に世界を救った伝説の勇者・・・

神に反逆した剣、巨大な騎士を操る勇者、龍の力を持つ救世主、聖なる剣を持つ騎士、神秘の力を持つ勇者、

翼を持った神像、魂の故郷の聖戦士」

ユーリナが伝説に記された勇者について語り始める。

その言葉にショウは驚き声を失う・・・

魂の故郷・・・それはバイストン=ウェルがそう呼ばれる世界である。

そして、そこでショウは聖戦士として扱いを受けていた。

「その伝説は本当なのか!?」

ショウがユーリナにつめかかる。

ユーリナはそのショウの気迫に驚いていた。

「えぇ・・・何時の時代に刻まれたのかも分からない石版に描かれていたと聞きます。

その一つがダイソードであることは直ぐに分かりました。

そして、その力こそがこの異変を止めるために必要だと来たのです」

ユーリナの答えを聞きショウは何かを考えていた。

「ショウ・・・心当たりでもあるのか?オレはさっぱりだが」

トールのいる世界には無いのかトールが知らないのかは定かではないがそのような伝説の類は知らないらしい。

しかし、ショウのリアクションは明らかに知っている感じだ。

「・・・バイストン=ウェルは魂の故郷と呼ばれている」

その言葉にユーリナは驚く。

「そして、オレは聖戦士と呼ばれている」

「それでは貴方が伝説の・・・?」

「いや、確かにバイストン=ウェルの伝説で聖戦士というのが世界を救ったらしい・・・。

だけど、オレはそう呼ばれていただけで伝説とは一切、関係ないんだ」

ショウはすまなそうな表情で言った。

期待させてしまうのが嫌だったのだろう。

「いえ、それでも希望がわきました。やはり、伝説の力は他にも存在するのだと」

ユーリナはそんなショウに対して優しく微笑みかけた。

「だけど、その伝説はこの世界のものなんだろ?ショウさんの世界は異世界じゃないか。

何でその伝説がこの世界にあるんだ?」

王太が疑問に思ったことを尋ねた。

「15賢人・・・私の国で最も偉い人は世界の境界線があやふやになった時、ある一つの仮説に行き着きました。

この世界・・・いえ、貴方たちの世界を含むあらゆる世界は元々、一つだったのではないかという」

「一つ・・・ということはバイストン=ウェルも地上もホライゾンも・・・この世界も元は同じ世界だったのか!?」

ショウがその言葉に驚く。

確かにそこに暮らすもの・・・人間が必ず存在している。

「もしかしたら昔は交流があり共通の敵に立ち向かったのかも知れません。

理由は分かりませんが伝説の力を再び一つに集めるには今しかないということです」

ユーリナの言葉に一同は沈黙する。

話のスケールが非常に壮大だ。

あらゆる世界をまたに駆けて存在する伝説。

そして、その伝説の力を集める為に境界線のあやふやになった世界を行く・・・

「・・・その伝説の力を集めれば世界は元に戻るのか?」

トールが尋ねる。

「良くは分かりません・・・ですが、私たちの世界の北国という国で恐るべき力が目覚めたのです。

そして、それと同時に世界の境界線があやふやになりました」

ユーリナは自信なさげに答えた。

どうやら、確証はないらしい。

「なるほどね」

トールは納得し黙った。

「とにかく、生徒たちに今の状況を説明しましょう。ユーリナさん、お願いできるかしら?」

今夜はその話を打ち切りユーリナに尋ねた。

 

そして、生徒たちに自分たちが現在、異世界にいること。

先生は一人もおらず、この学校の生徒550名とトール、ショウ、チャム、ユーリナしか今はいないこと。

そして、生き残るためには一致団結していかなければならないことを説明した。

それからユーリナが必ず元の世界に帰す事を約束し

今夜がクラスごとにそれぞれの仕事を分割した。

 

学校の下にある城

トールと王太、ユーリナ、今夜と一部の生徒たちがそこに降りて探索を開始していた。

ショウは再び北国(最初にダイソードを狙い学校襲撃した戦力)と修羅軍が来たときの為に

ダンバインに乗ってあたりを警戒し飛んでいる。

トールはこの世界について興味がわいたので着いてきていた。

ショウも気になってはいるが警戒任務についている。

城の中を探索していると一つの壁画見つけた。

それは巨大な化け物が八つの腕で八つの武器を持っている。

「あれは・・?」

今夜が尋ねるとユーリナが答えた。

「あれは始めに立ちし者の壁画です。この泡の中央界は始めに立ちし者の呪詛の言葉により形作られ出来たと言われています。

そのためにこの世界に住む人々は未来永劫争い続けなければならないのだと言われています」

ユーリナの話を聞いて王太と今夜は驚いている。

「始めに立ちし者が私たちの言う神様だとすると・・・なんかおかしな神話ですね。

生まれた時から祝福されていない世界なんて・・・」

大体、神は人々を救うための存在なのが多い。

しかし、その伝説では神は邪神として描かれているようだ。しかも、それがこの世界の創造神だという。

「何か変なのがあるぞ」

トールは壁画の目の前にある球形になりかけの物体を指差した。

その内側には地図が描かれている。

「泡の中央・・・だから、玉を内側から見た地図なのか」

「えぇ・・・私の生まれた国、テルテウイタスは北国の侵攻を防ぐ最後の希望でした・・・

ですが、世界の境界線があやふやになり、北国が狩りとる者を目覚めさせたことから劣勢を強いられ国も落とされかけました。

そこで15賢人たちはダイソードなどの伝説の力を求めたのです。

そして、その弟子のうち優秀なものたちが呼ばれ異界を通りダイソードがある場所を目指しました」

「異界?」

今夜がその言葉に反応する。

「貴方たちが住んでいた世界のことです。世界の境界線があやふやになっていても貴方たちの世界が

一番、近い世界だったので・・・そこでダイソードの場所に行き再び泡の中央界に戻ることになっていたのです。

ですが、泡の中央界に戻るとき結界が張ってあったためその空間・・・この四角い城ごとこっちの世界に

引きずり込まれてしまったのです」

四角い城とは学校のことだろう。

全ては敵の策略だったのだ。

学校は運が悪いことに巻き込まれてしまったらしい。

「確かにダイソードは強かったが・・・あの程度の力で国を相手に出来るのか?」

トールは疑問に思った。機能見た限りダイソードにそこまでの強さがあるとは思えなかった。

メタルレプリカやオーラバトラーなどの強力な兵器を目の当たりにしている身からしては

ダイソードの力は対して感じられない。

ましてや彼は一つの国を灰燼と化す様な力を目の辺りにしている。

「あれでダイソードの力は全てではありません・・・ダイソードは始めに立ちし者が作り出した

八つのソウルヴェストの一つ・・・かつて、神に破れ300年に一度、目覚め七度、その力を貸し与えねば

ならなくなりました。ですが、その力はあなた方のいう神の力に匹敵するもの・・・

山を動かし、大地を割り、海流すらも変えたと言われています」

その言葉にトールは納得する。

「それだけ強けりゃどうにかなりそうだな・・・」

明らかに自分の乗るワイバーンよりも強力な機体であることは分かった。

「・・・そ、そんなに凄い力を持ってるのか・・・」

その力を託された王太は青い顔をしている。

そんな王太の顔を今夜が覗き込んでくる。

「どうして王太くんだったのですか?ユーリナさんがダイソードを目覚めさせるはずだったのでしょう。

誰でも良かったのですか?」

「へっ?」

いきなり、そういわれて王太は驚いている。

ユーリナもそう聞かれて困っているようだ。

「飛ばされたとき私に立ち上がるだけの力はありませんでした。そこで私の声を四角い城中に飛ばしたのです。

私の心の声が聞こえるということは魔法の素質があるということですから・・・

それで一番近くにいたのが王太だったのです・・・・なりゆきですね」

最後にみもふたも無いことを言ってしまう。

それに王太はこけた。

「そ・・・それだけ?」

「別に特殊な血筋とかそういうわけじゃないんだな」

トールはマジマジと王太の顔を見て呟いた。

「いいじゃない。かの有名なアムロ=レイだってなりゆきでガンダムに乗って英雄になったって言うわよ」

「そうかもしれませんけど・・・」

「アムロ=レイって誰だ?」

トールが気になって今夜に尋ねた。

「私たちの世界で昔、起きた一年戦争っていう戦争で英雄になったモビルスーツのパイロットのことです。

モビルスーツって言うのは簡単に言えばトールさんが乗っているロボットのようなもののことです」

「へぇ、お前たちの世界にもそういうのがあるんだな。不思議だな・・こうして聞いてると

今までの世界には確実に人間とロボットが存在してるなんて」

トールのその言葉に今夜とユーリナが驚く。

「そんなの偶々じゃ」

王太はその言葉を深く考えてなかった。

だが、ユーリナは考え込んでいる。

「もしかしたら世界同士がお互い影響しあい同じような技術が育っているのかも」

ユーリナが呟く。

「だけど、ダイソードとモビルスーツとでは全く違うわよ」

今夜の言葉に更にユーリナは悩み始める。

「それよりもさっさと元の世界に戻る方法を教えて欲しいんだが」

考え込みはじめている二人にトールが言葉を投げかける。

「あっすみません。貴方たちを元の世界に戻すにはテルテウイタスに行けばいいはずです。

そこで15賢人に頼んでそれぞれの世界に飛ばしてもらいましょう。

それに他の伝説の力を見つけるには他の世界にいかなくてはならないのでそうしなければなりませんが」

確かに他の世界にユーリナが捜し求める伝説の力があるのならそうするほかは無いだろう。

「それで今は何処にいるんだ?」

トールが尋ねると急にユーリナが険しい顔をする。

「ど・・・どうしたんだ?」

王太はいきなり黙り込んだユーリナに驚いていた。

「北国の首都がここです・・・」

ユーリナが地図に三角形のマークをつける。

「それからこれが北国の領土です」

そして、その周りに北国の領土を書き表していく。

「そして・・・ここが私たちの現在位置です」

「そ・・・そんな・・・」

「なんてこった・・・」

「大変なことになったな・・・」

その位置は北国の領土の丁度真ん中だった。                                                                                                                    

 

「そこの人たち」

暗い気分になっているトールたちに誰かが声をかける。

聞いたことが無い声だった。

全員が一斉に振り向くとそこに簡単な鎧と兜を装備した少年が立っていた。

その背中には剣が鞘に納まりかけられていた。

年は中学生ぐらいだろうか・・・

明らかに学校の生徒ではないその少年にトールたちは警戒する。

「あんたたち、この城の上で浮いてる城の人たちか?」

そんなトールたちをよそに少年は普通に話しかける。

「そうですけど・・・貴方は?」

今夜が尋ねるとそういえばという顔をして少年は口を開く。

「オレはアデュー=ウォルサム。見ての通り騎士見習いだ」

アデューと名乗った少年は誇らしげに自分を指差して名乗った。

「騎士見習い・・・確かに見えないことも無いが・・・その騎士が何のようだ?」

騎士見習いと言う割には鎧も質素だし何より幼い。

それに疑問を抱くがこのアデューというものの目的を聞くほうが先だった。

「すまないが・・・腹が減ったんだ。何か食うものをくれぇ」

アデューはそういうと悲鳴を上げるおなかを押さえてそのまま崩れ落ちた。

そんなアデューにトールたちの警戒は完全にとけていた。

 

「うめぇうめぇ!」

アデューはレトルトの給食にがっついている。

先生たちの分で残っていたのを分けたのだが・・・これで三食目だ。

かなり餓えていたらしい。

「こんな旨い物、久しぶりに食ったぜ!」

アデューはそれを平らげるとおなかを押さえながら満足そうな笑みを浮かべる。

「それでアデューさん・・・何故、貴方はあの城にいたんですか?」

今夜が本題を持ちかける。

「あぁ、実は仲間と旅をしてたんだけどいきなり空が割れてそこに吸い込まれちまったんだ。

で、気づいたらあの城の牢の中にいてえらい目にあったぜ・・・

昨日、いきなり地響きがあって牢が壊れたから良かったけど・・・じゃなかったら今頃、餓死してたかも

しれねぇな」

アデューは笑いながら語っている。

その言葉にその場にいた全員は驚いた。

どうやら、この泡の中央界の人間ではないらしい。

「アデューさん、貴方はどの世界から来たんですか?」

「どの世界・・・?オレは騎士の国バイフロストから修行の旅の途中だったんだけど」

アデューはどうやら、まだ自分が自分の世界のどこかにいるのだと思っているらしい。

「いえ・・・そうですね。貴方の住んでいた世界の名前はなんていうんですか?」

「何言ってんだ・・・アースティア、大いなる剣の立つ大地。あの剣が見えない・・・の・・・か?」

アデューは校舎の窓の向うを指差す。

が、その方向には何も無い。

ただ、荒野が続くだけだった。

「な・・・無い!大いなる剣が無い!」

アデューはいきなり騒ぎ出すと突然、走り出した。

 

そして、屋上に出てあたり一面を見回す・・・

アデューは探していた。自分の住んでいた世界の証を・・・

伝説の神ソーディンが突き刺したと言われる世界の中心に聳え立つ大いなる剣・・・

それは例え世界の果てだろうと確認することが出来、冒険者たちの目印となっていた。

だが・・・それが全く見当たらない。

「そんな・・・大いなる剣が壊れたのか!?」

アデューはどうあってもここが別世界であるとは思えないらしい。

「違います・・・ここは泡の中央界。貴方の住んでいた世界とは別の場所なのです」

ユーリナがそんな混乱するアデューに今、世界に起こっている異変について説明した。

 

「そんな・・・多数の世界がつながっているなんて・・・」

アデューにとってはまだ、実感がわかない事件らしい。

しかし、見慣れぬ世界に見慣れぬもの・・・信じざるを得なかった。

「まぁ、アデューのおかげで更に一つ、世界が増えたわけだが・・・今のところ合計で五世界・・・

一体、いくつの世界があるんだ?」

トールは更に増えていく世界の情報を困惑していた。

既に一つの手で数えられる限界に達している。

「それは分かりませんが・・・それらを元に戻すためにもテルテウイタスに帰るしかありません」

ユーリナの言葉に頷くしかなかった。

それしか方法は無いだろう。

こうまで色々と世界がごたごたとしていたは問題が発生しやすい。

下手をすれば他の世界を侵略しようなどという輩が現れるかもしれないからだ。

「トールさん、大変です」

一人の生徒が部屋に飛び込んできた。

その表情は慌てている。何かあったらしい・・・トールを必要とする何かが・・・

「敵襲か?」

「はい、今ショウさんが一機で戦ってますけど数が多すぎて劣勢を強いられてます」

「分かった」

「オレも・・・」

王太もトールに続こうとするがそれをトールは止める。

「ダイソードは七回しか使えないんだろ。だったら最も強力な敵が出てきたときに使う。

何せバカみたい強いみたいだから」

トールの言葉はもっともだ。

ダンバインとワイバーンがある以上、一定の敵との戦闘は二機に任せればいい。

制限があるダイソードはより強大な敵が現れたときにとっておくべきだった。

「わかった」

その言葉に王太は頷くとトールはその顔を見て窓から飛び降りる。

三階なのだが窓の上にある段差を飛びついで降りていく。

そして、校庭に止めてあったワイバーンのコクピットへと乗り込んだ。

「鋼力エンジン始動・・・エアロウィング展開!飛べワイバーン!」

トールの叫び声と共にワイバーンは風の翼を広げ異界の空へと飛び立った。

向かうは敵の空中母艦。

 

「うおおお!」

ダンバインは空中母艦からつながれている巨大な骸骨と戦闘を繰り広げていた。

ダンバインの二倍近い大きさのあるジャンボスケルトンの攻撃を巧みにかわしオーラソードで斬りつけていく。

さほど頑丈ではないらしくジャンボスケルトンはオーラソードで断ち切れた。

だが、すぐさまにもう一体のジャンボスケルトンが襲い掛かった。

「ミサイル発射!」

ミサイルが飛来しジャンボスケルトンに激突した。

その瞬間、ミサイルは爆発しジャンボスケルトンの右腕を吹き飛ばす。

「トールか」

「一気に母艦を落とすぜ」

「あぁ・・・任せろ。この世界に来てからオレのオーラ力は上がっているんだ」

ショウはそういうとジャンボスケルトンの相手をトールに任せて空中母艦目掛けてオーラショットを放った。

オーラショットは空中母艦に激突すると凄まじい大爆発を起こす。

世界を光に包み地面に生えた木々すらもなぎ倒していった。

凄まじい強風にあおられワイバーンはバランスを崩しかけるが何とか凌ぐ。

「なっ・・・なんつぅ威力だ」

トールはダンバインの攻撃力に圧倒されている。

元々、オーラショットの威力はワイバーンのミサイル程度のものだった。

だが、泡の中央界はバイストン=ウェルと違い武器の攻撃力を抑える作用が無い。

その為にオーラショットは本来の攻撃力を発揮するのだ。

オーラ力を加えたミサイルの威力は小型の核ミサイルに匹敵する。

ダンバインの攻撃力に焦った敵は残りのジャイアントスケルトンを一気に二機に対して向けてきた。

そして、そのまま学校へと向かい飛行していく。

「いかせるかよ!」

ワイバーンは最大の特徴である爆発的な加速力を発揮すると一瞬にして空中母艦の前方へと躍り出る。

そして、チェーンダガーを構えそのまま空中母艦に突撃した。

内部の構造を切り裂き、その航空能力を奪い去る。

「へっ、そんな旧式の空艇でワイバーンが止められるか」

トールは勝ちを確信する。

だが、突如として母艦から竜が飛び出した。

そして、その後をスライムのようなものが鎖伝いに竜へと伸びていった。

「スライム・・・学校に行く気か・・・やらせるかよ!」

ワイバーンはチェーンダガーを構えスライムを切りつける。

しかし、それは直ぐに再生してしまった。

「なっ・・・」

トールが驚いていると後方より再びジャンボスケルトンが襲い掛かる。

ワイバーンはその攻撃を回避し空中へと躍り出るがその隙に竜は学校へと向かってしまった。

「くそっ!邪魔するな!」

ワイバーンはしつこく迫り来るジャンボスケルトンの頭をチェーンダガーで斬りつける。

 

学校ではその光景を遠くから生徒たちが見守っていた。

「一個師団に相当すると言われるジャンボスケルトンをああも簡単に撃破するなんて・・・」

圧倒的な戦闘力を誇るダンバインとワイバーンにユーリナは圧倒されている。

ダイソードも凄まじい戦闘力を持つがあの二機もかなりのものだ。

更に二機共に性能面では他のものよりも優れてはいるが近い性能の機体は数多く存在すると言う。

モビルスーツと呼ばれる地球の兵器やスーパーロボットなども戦闘力は同じようなものらしい。

ユーリナは繋がりあった世界の力にただただ驚いていた。

「すげぇ・・・ダイソードが無くてもどうにかやっていけるんじゃねぇか?」

王太はなんだか自分の存在意義が薄れていくような感覚に陥っていた。

たった、七回しか使えないダイソードと壊れなければ使用回数に制限が無い二機では

あっちのほうが重宝するだろう。

その時、雨が降り始めた。

雫がぽたりぽたりと生徒たちの頭の上に落ちる・・・

だが、その感触は水とは違っていた。

「なんだ・・・変な雨が・・・」

王太はぬるぬるとする雨に気色悪がっていた。

「油の雨・・・まさか、やつらはブロムを・・・」

ユーリナがそういうと突然、竜が学校に向かって飛んできた。

そして、つながれた鎖を伝いスライムが竜を飲み込む。

そして、見る見るうちに消化していった。

「竜を飲み込んだ!」

「トールさんとショウさんは!?」

「ダメです。ジャンボスケルトンに足止めされてます」

「戻ってくるまでに死人が出ちゃう・・・王太くん、ダイソードを・・・」

王太は言われるよりも先にダイソードを呼び出そうとする。

だが、それをアデューが止めた。

その手には不思議なカードが握られている。

「事情はある程度分かった・・・あのモンスターはオレに任せろ」

「アデュー・・・だけど、いくら騎士でもあの大きなモンスターに勝てるとは・・・」

王太はアデューが生身でスライムに立ち向かうと思っているらしい。

しかし、アデューは首を横に振った。

「騎士の力は剣だけじゃないぜ・・・見せてやるぜ。オレの力・・・オレのリュー!」

アデューはそういうと手に持ったカードを空高く掲げた。

「リューナイト、ゼファー!!」

アデューが叫ぶとカードから神秘の力があふれ出す。

そして、炎が吹き上がりその中から一機のロボットがその姿を現した。

全長は4メートルほどしかないだろう。

腕なども細い・・・しかし、その無骨なフォルムから感じられる力強さはダンバインなどにも負けていない。

アデューはそのロボット・・・ゼファーに飛び乗ると背中の玉の中に飛び込んだ。

そして、中に乗り込み剣と盾を構える。

ゼファーもその動きにあわせて動いた。

一心同体型の操縦方法を持つロボットのようだ。

その全体から魔法の力が流れ出ている。

これがアースティアに存在する機動兵器・・・リューの騎士である。

「騎士道大原則ひとーつ。騎士は受けた恩は必ず返さねばならない!

食事の礼だ。スライム野郎なんざオレとゼファーで倒してやるぜ!」

ゼファーは学校に張り付こうとするブロムに斬りかかる。

そして、そのまま森へと押し出した。

 

だが・・・脅威はそれで終わったわけではない。

ジャンボスケルトンと空中母艦を撃破したダンバインとワイバーンの前に一つの巨大な斧が大地に突き刺さった。

その雰囲気・・・どこかで見たことがある。

そう、それはダイソードと同じだった。

「まさか・・・八つのソウルヴェストの一つ・・・!?」

ショウはその斧を見て呟いた。

「やだよショウ・・・あの斧から嫌なオーラ力を感じる」

「あぁ・・・それになんて強力なオーラなんだ・・・」

ショウは斧から発せられる力に驚いていた。

斧は突然、動き出すと人型へと変形する。

そう、まさしくそれはダイソードと同じ神の武具の一つだったのだ。

ダンバインとワイバーンに狙いを定めると一気に突進してくる。

「ショウ!」

「分かってる」

ダンバインとワイバーンは突進をかわした。

ワイバーンは後ろからその敵に斬りかかるが素早くかわされてしまう。

完全に読まれている。

機動性で何とか拳をかわしていくがその能力は圧倒的だった。

一発、当たるだけでも破壊されかねない。

「真正面からやりあって勝てる相手じゃないぞ」

「あぁ・・・だが、オーラショットはこうも油が降っていては引火する危険がある」

なるべく炎が出てしまうような武器は使えない。

つまり火力と呼べるようなものは使えないのだ。

「接近戦・・・それが相手の望んでるところだろうな」

相手の無骨な体を見て呟いた。

かなりの重量がありそうだ。斧から変形したところから見て攻撃力は高いのだろう。

「オレがスピードでかく乱する。ショウは前に使ってた光る剣で奴を斬れ!」

「オーラ斬りか・・・それしかないな」

ショウはトールの作戦に乗る。

トールは風の翼を大きく広げ敵へと向かった。

「風を超えろワイバーン!」

疾風となったワイバーンは敵の周りをとび回る。

圧倒的な速度を見せつつ旋回しているのにもかかわらずその速度は上昇し続けた。

その動きに鈍重そうな敵は付いていけてない。

「唸れチェーンダガー!」

ワイバーンはチェーンダガーを構えて敵に突撃をかます。

間一髪のところで敵は腕で防御するが凄まじい速度でぶつかった衝撃に負けて空中へと放り出される。

「風圧だけで吹っ飛んだ・・・後ろに飛んだのか・・・狙い通りだな」

敵とは違う方向へと飛び去ったワイバーンの中、トールは呟いた。

敵はチェーンダガーが当たるよりも前のワイバーンの纏う風の勢いに乗り後方へととんだ。

ダメージはほとんど無いだろう。

だが、その先にはダンバインはオーラ力を漲らせていた。

「いけぇ、必殺のオーラ斬りだぁ!」

「はぁ!」

ダンバインは刀身にまばゆく輝くオーラを敵へとぶつける。

敵はそれを腕で受け止めた。

凄まじい衝撃が走りダンバインのコクピットがゆれる。

そして、信じられない光景を目の当たりにしていた。

敵はダンバイン、渾身の一撃を真正面から耐え抜いていた。

いや、むしろ押している。

「この程度か・・・その程度の力とは聖戦士の力も落ちたものだな」

斧だったものから声が聞こえる。

「なっ・・・貴様、聖戦士のことを知っているのか!?」

ショウはその言葉に驚いている。

この敵は聖戦士を知っている・・・ダイソードと同じ神の武具・・・そして、聖戦士はダイソードと同じく伝説に記される。

「かつては神すらも切り伏せたあの強大なるオーラは何処へいったのか・・・私を失望させるな」

敵はもう一方の腕で思い切りダンバインに殴りかかる。

「くっ!」

ショウはオーラバリアを発生させるとその拳を受け止める。

そして、そのまま後方へと飛び下がった。

「落ちた聖戦士などにようはない・・・狙うはダイソード!」

そして、敵はダンバインとワイバーンの攻撃をかいくぐりダイソードへと向かっていった。

 

アデューは必死にブロムと戦闘を繰り広げていた。

だが、斬っても斬っても再生するブロムの前にアデューの疲労はたまりに溜まっている。

「くそっ、どうやったら倒せるんだ・・・」

アデューはゼファーを溶かそうと迫り来るブロムを投げ飛ばした。

ブロムの消化能力ではゼファーの魔法金属は溶かせないが倒さなければ学校の生徒が危ない。

しかし、こうまで再生するブロムに対しアデューは決まり手をかいていた。

「(アデューさん)」

突然、アデューの頭にユーリナの声が聞こえる。

「その声はユーリナ・・・なんだ?」

「(聞いてください。ブロムは小さなブロムの集合体。ですが、決してブロムはお互いに食い合いません。

それはその中に脳と呼べる場所があるからです)」

「ってことはそこさえ斬れば・・・」

しかし、アデューはそれを聞くと闘気を高め始めた。

「なら・・・一気に全部、斬ってやる」

ゼファーから魔力が渦を上げ高まっていく。

そして、剣を真正面に構えた。

ブロムがゼファーに向かい襲い掛かる。

「クラッシュドーン!」

ゼファーは爆発的な加速でブロムに突撃する。

剣から闘気が流れ出しまるでゼファー自身が一つの剣と化している。

そして、ブロムを一気に寸断し弾き飛ばした。

圧倒的な攻撃力の前にブロムは寸断され各々に食い合いをはじめ消滅した。

どうやら、あの直線の中に脳があったのだろう。

 

アデューがブロムを倒した頃、学校に脅威が迫っていた。

ダンバインとワイバーン・・・圧倒的な力を持つ二機のロボットを退けた脅威の力。

神の斧・・・

「ガ・バリュオーグ・・・」

「あれはダイソードと同じ神の武具なのか!?」

「えぇ、北国が見ざめさせた力・・・ダイソードと同じく神の武具はこの世界に眠っているといわれていました。

北国はそれを偶然に発掘し世界中に侵攻を開始したのです・・・おそらく、世界の境界線が壊れたのも・・・」

「トールさんとショウさんがやられるなんて・・・ダイソードで出ます!」

王太はそういうとダイソードより託された剣を構えた。

「あの二機で倒せないのよ」

「ダイソードはあいつと同じ神の武具です・・・それにこれ以上、黙って見てるなんて出来ない!」

王太はそういうと剣を構えた。

「(風と天の盟約により七度の時、さだめられし者よ!

深きねむりの淵よりいでて鎖、ときはなちわれの手に還れ!

めざめよ!ダイソード!!」

王太は心の中でダイソードを掴み取る。

その体はダイソードのコクピットへといざなわれ

神の剣はその姿は人へと変えていった。

大地に立つ神の剣ダイソード・・・そして、それと向き合う神の斧ガ・バリュオーグ。

古に記された脅威の力が今、目覚めお互いに向き合っていた・・・

人知を超えた力を持つ神の武具の前に世界はただ・・・震えるだけである。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

ダイソードとガ・バリュオーグの死闘。

トールが、ショウが、アデューが神の斧に立ち向かう。

動き出す学校・・・世界を戻すための戦いの幕が開いた。

そして・・・新たなる力が彼らの目の前に現れる。

 

次回

スーパーロボット大戦〜OVER THE GOD〜

第一章    異界激震編

第四話 赤い修羅

混迷の世界に青い稲妻が降り立つ