スーパーロボット大戦
〜OVER THE GOD〜
第三章 地球混迷編
第一話 地球の後継者
アーカムシティ・・・
覇道財閥と呼ばれるロームフェラ財団や破乱財閥に匹敵するほどの経済力を持つ財閥が支配する街である。
破乱ほどに性急ではないにしても一代にして気づかれた大財閥である。
まさにアメリカンドリームを実現した街としてコロニーの間でも有名な都市だった。
だが、その実情は活気はあるものの混沌とし派手な生活をしている者もいれば
路地裏でやつれはて徘徊するような者もいる。
そんな街の裏で暗躍する者たちがいた・・・
悪の組織ブラックロッジ・・・
奴らは街に現れては破壊のかぎりを尽くしていた。
そんな街の一画・・・
一人の少年がアパートの一室に住んでいた。
彼は愛用の日本刀をソファーに座りながら手入れをしていた。
この部屋に住んでいるのは彼一人だけだ。
彼の親は一ヶ月前、ブラックロッジの破壊活動に巻き込まれ死亡した。
まぁ、事故にあってしまったものだ。運が無かった。
少年はそう考えていた。
それが何かしらの手による陰謀だなんて考えられない。
だが・・・この街に住んでいて自分ほどに運が悪いものがいるのだろうか・・・
近所の学校に通っていた。
だが、その学校も破壊され友達も全員死んでしまった。
一人、一人と死んでいった・・・
そして、遂には全員、いなくなってしまった。
もう、友達を作る気力もわきはしない。
一人、こうして静かに暮らしていければいい・・・
そう思っていた。
少年の名は疫神牙王・・・
14歳のただの少年・・・だった・・・
深夜・・・
突如として地響きが鳴り響く・・・
牙王は目を覚ますと刀を持ってカーテンを開けた。
既に数名の人間が非難を開始している。
「臆病な連中だ・・・だが、そのぐらいに臆病でなければ生き残ることなんて出来ないか」
牙王はそう呟くと直ぐにジャケットを羽織ると外へと出て行った。
既に数名の人間が階段を駆け下りている。
牙王はその人の流れに流されるように付いていった。
この世界で生き残るものと死ぬ者の差なんて運だけだ。
牙王はそう思っていた。
死んでしまった人はただ、運が悪かっただけだ。
いい奴も悪い奴もいつかは死ぬ。
その原因がなんであれ。
牙王の目の前で巨大な蜘蛛のような多足の化け物が暴れていた。
冥獣・・・そう呼ばれているものだ。
グレートミッションの際に冥王星からセカンドウェーブに乗って現れたとされる怪物だ。
ブラックロッジとの関係は不明だが
この街の平和を乱すものであることは変わりは無い。
それが目の前にいる。
逃げれば間に合うだろう・・・
だが、自分の目の前で一人の少女が倒れていた。
転んでしまったのだろう・・・目の前に迫る異形に震え上がり立ち上がれないでいる。
親の姿は見当たらない。
殺されたか・・・それとも見捨てたか・・・
そんなことはどうでもよかった・・・
そう、死ぬも生きるも運次第だ・・・
だから、自分は運が悪いのだと牙王は思う。
牙王は白刃を抜き放ち冥獣の前へと立ちはだかった。
そんなちゃちな刀がこの目の前の怪物に通用するなんて思ってはいないだろう。
だが、心の支えとしてそれなりの役に立っている。
「・・・頼んだ」
牙王は少女を拾い上げると近くで迷っていた一人の男に投げつけた。
いくら、小さな少女といえども投げ飛ばすだけの力を持っているのは凄い。
だが、それでも目の前の敵とは分が悪すぎる。
男が少女を受け取って逃げていくのを確認すると冥獣に向き合った。
冥獣と牙王の視線が交差する。
獰猛な殺戮の意思しか持ち合わせていないような赤い眼が牙王をにらみつけた。
「オレは運が悪い」
牙王はつくづく自分の人生に呪いながら呟いた。
冥獣の足の一本が横から牙王をなぎ払おうと襲い掛かる。
牙王は刀を盾にして横へととんだ。
圧倒的な体格差、もし同じ大きさでもパワーは向うのほうが上だろう。
牙王はまるでパチンコ玉のように弾き飛ばされた。
そして、思い切りビルのコンクリートに叩きつけられる。
「ぐっ!」
うめき声を漏らし刀を足代わりになんとか立っている。
何とか生きてはいるが内臓や骨に甚大なダメージを負っている。
直ぐにでも病院に運ばれなければ大変なことになってしまうぐらいな怪我だ。
しかし、目の前の怪物は獲物を逃がしはしない。
冥獣は口を開いた。
口の中では多数の口が既に捕食していた数人の死肉を噛み締めている。
もはや、原型は一切留めていない。
牙王はこのままこの怪物の栄養となる覚悟を決める。
どうせ、死んだら何も残らないのだ。
死に方など気にしない・・・
冥獣は口を大きく開き牙王の小さな体を飲み込もうとした。
「ねぇ・・・地球はまた、命の溢れる世界になるよね・・・」
一人の少女が泣いている・・・
淡く光る金色の髪が印象的な少女だ・・・
その体はとても冷たく・・・死んでいるかのように・・・
「大丈夫だ・・・オレがいる・・・オレがしてみせる!」
一人の青年が力強く叫んだ。
少女を支える手に力を込める。
「そう・・・よかった・・・その時は・・私の命はまた・・・地上に・・・」
少女が目を閉じる・・・
それは永遠の別れを意味する・・・
永遠・・・それは永遠なのだろうか・・・
死は永遠の別れを意味するのか・・・
「そうだ・・・約束を・・・」
牙王は目を開けた。
死への覚悟が消える・・・そして、生への執着が生まれた・・・
いきたい・・生きたい・・・活きたい・・・
目の前に大きく広げられた口・・・
無理だ・・・
勝てるわけが無い・・・
だが・・・牙王は不思議と落ち着いていた・・・
内から何かが湧き上がるかのようだ。
「敗者が・・・オレに触れるな!」
牙王は叫んだ。
光がほとばしる。
大地が光り輝いているかのようだ。
「瑠璃様、十二画市街で強力なエネルギー反応が」
「なんですって・・・まさか、魔道書が・・・」
「いえ、魔術エネルギーではありません・・・今までに感知されたことの無いエネルギーです」
「なんだ・・・鼓動?」
牙王は光に包まれていた。
そして、まるで鼓動のような音が聞こえた。
それは心のそこから響いてくる・・・
そして、自分の鼓動音と一致していた。
「地皇・・・目覚めたか」
「地皇・・・?誰だ?」
「我は極点王。地皇、お前の僕だ」
「極点王・・?地皇なんて名前じゃない」
「そうか・・・ならば、尋ねよう。名前は?」
「オレは疫神牙王だ」
光の中から人型の巨人が現れる。
球体と曲線によって形成されたボディ・・・だが、その姿は力強さと神秘さを併せ持っていた。
胸部の青い球体が光り輝き牙王はその中へと吸い込まれていく。
牙王が再び目を開けるとそこは不可思議な空間だった。
目の前の空間が歪み冥獣と街の姿が見える。
後は何も無くただ、その場で浮遊しているようだった。
「ここは・・・?」
「ここは我の中だ」
先ほど極点王と名乗った声が聞こえる。
「我の中・・・どういうことだ?」
「今のお前の知識に合わせて話せば我はスーパーロボットと呼ばれる存在に近い」
「スーパーロボット・・・?何故、オレがその中に?」
「お前が地皇だからだ」
「地皇?だから、何なんだ、それは?」
「分かりやすく言えば地球の王だ」
「地球の・・?王だと?何を訳を分からないことを」
「今は混乱するだけだろう・・・だが、今は目の前の敵を倒すことを考えろ」
「目の前の・・・」
牙王は必死に爪をつきたてている冥獣の姿を見た。
どうやら、必死にこの極点王をというのを攻撃しているようだ。
「お前が倒せばいいだろう」
「我は地皇の・・・牙王の力が無ければその力を行使することは出来ない」
「何だと・・・どうやって動かす?」
「飲み込みが早いな・・・念じればいい。どう動かしたいかと・・・さすれば我は動く」
牙王は言われたとおりに念じた。
牙王の体に光が宿り紋章が何も無い空間に描き出されていく。
ビルのそそり立つアスファルトの道路に聳え立つ極点王。
神秘的な様相の巨人の瞳に光が宿った。
全身に力が漲る、体に描かれている紋様に光が宿った。
「冥王の使い・・・確かファグスと言ったか」
極点王が目の前の蜘蛛のような冥獣の足を掴み呟いた。
「知っているのか?」
「その話は後にしよう。今はこの災厄を食い止めるのが先だ」
極点王は腰にさげられた刀を引き抜いた。
大地の力を圧縮した刀、金剛丸。
その一振りは一気にファグスの足を二本、斬りおとす。
「・・・なんて威力だ」
目の前に輝く刀を見つめながら牙王は呟いた。
その威力はビームサーベルの非ではない。
そんな極点王にファグスが死に物狂いで歯を立ててきた。
装甲がかじられているが全くダメージは無い。
「離せ!」
極点王はファグスの体を掴むとそのまま引き剥がし投げた。
ファグスの体が大地に叩きつけられアスファルトに亀裂が走る。
「くっ・・・街に被害が出る。一撃で決める」
「なら、ファグスを空中へと放り投げろ」
「何?」
「後は私の意志に同調させればいい」
「同調・・・くっ、やってみるか」
牙王は同意を示すと極点王を走らせた。
アスファルトの大地を蹴り上げ何とか立ち上がったファグスに掴みかかった。
そして、そのパワーで空中へと投げ上げる。
「精霊よ・・・その眠りを解き放て・・・これは地皇が代理、極点王の命令である」
極点王が両手を広げると周囲の空気が発光を開始した。
そして、その光は極点王の両手に集まる。
「精霊よ、不浄なるものに裁きを下せ」
極点王がファグスに向かって腕を向けた。
集まった光が一気にファグスへと向けて射出される。
光はそのまま空中で身動きの取れないファグスを包み込んだ。
そして、空間を歪ませ消えていく。
「・・・消えた。どうなったんだ?」
「精霊の裁きを受けた。奴はこの世界にいることを許されなかったのだ」
「・・・一撃であれだけの化け物を消滅させたのか・・・」
牙王は自分が操って見せていた力に驚きを覚える。
そして・・・違和感を感じていた。
牙王はビルの屋上にたち極点王を向かい合っていた。
「オレが地皇・・・お前の主の生まれ変わりだというのか?」
「そうだ。そして、お前は彼の意思を継ぎこの地球に恒久の平和をもたらせねばならん」
「どういうことだ?」
「地球はかつてのお前・・・地皇が望んだとおりに命溢れる世界になった・・・
だが、命が溢れすぎた。その力は方向性を見失っている。
それをただしく導く存在・・・そう、お前が必要なのだ」
「ふざけるな!」
牙王は自分の刀を極点王に向けた。
その瞳は怒りに満ちている。
何故だろうか・・・このものの言葉が酷く嫌だった。
自分はただの人間だ。そう、他の人間、全てを導く存在なんかじゃない。
「聞き入れてもらえないか」
「あぁ・・・」
「だが、お前はいずれ目にするはずだ・・・この世界に這いよる邪悪なる存在に・・・
この世界は邪気に満ちている・・・かつては戦えなかった。
だが、今はお前がいる」
「くどいぞ!」
「・・・我の力が必要ならばその刀を抜き念じろ。さすれば我はお前の力となる」
極点王は光へと変換され牙王の刀に宿っていく。
白刃は光り輝き不可思議な空気を漂わせていた。
「使うものか・・・俺は・・・」
牙王はそういうものの刀をそのまま鞘に戻した。
夜の冷たい空気が彼の頬を叩く。
その冷たさがそれが夢でないことを物語っていた。
いきなり、訳の分からない話をされて納得できるわけが無い。
だが、心のどこかで納得していた・・・自分でない何かが納得していた。
極点王の話を信じること・・・それは自分を否定してしまうような気がした。
「オレは・・・運が悪いな」
牙王は噛み締めるように呟いた。
「始めて見る力・・・あの力は危険だ・・・だけど・・・」
夜の闇にまぎれて何かが牙王を覗き込んでいた。
その闇はそのまま闇へと同化していく。
その気配に牙王は気づくことが出来なかった。
次回予告
突然の運命の分岐に戸惑う牙王・・・
迷う彼の心に世界は静寂を許してくれなかった。
突如として目の前に現れる幼き少女と頼りない青年。
そして、破壊ロボが街を破壊し、白銀の天使が舞い降りる。
目覚める一機のスーパーロボット・・・
次回
スーパーロボット大戦〜OVER THE GOD〜
第三章 地球混迷編
第二話 魔を断つ剣
命を護る牙となれ、牙王