スーパーロボット大戦

〜OVER THE GOD〜

第三章        地球混迷編

第二話 魔を断つ剣

 

牙王はビルの屋上で自分の刀を眺めていた。

昨日の夜起こった出来事。

突然、自分の目の前に現れた謎の巨大ロボット・・・

極点王と名乗るそのロボットは意思を持っていた。

そして、牙王が地球の王たる地皇の生まれ変わりだといい

再び、この地球を支配し人類をよりよい方向へ導けという。

「ふざけるな・・・なんでオレが・・・そんなギレン=ザビ見たいな事をしなければならない!」

牙王は刀を投げ捨てた。

乾いた音を立てながら刀はそのままビルの屋上に転がる。

吹き抜ける風は彼に空しさだけを際立たせていた。

あのときのことが脳内に浮かび上がる。

冥獣・・・突如として現れた謎の生命体・・・だが、自分は奴らを知っている気がした。

だが・・・それは確実に自分の記憶ではない。

会ったことも見たこともない・・・それだけは真実だ。

しかし、知っている。

奴が言うとおり自分はその地皇とかいう者の生まれ変わりなのかもしれない。

そんなことは別にどうでも良かった。

だが、それが自分の今の人生に干渉してくるのが嫌だった。

自分は自分だ・・・そう疫神牙王というただの人間で両親と友人を失った孤独な人間・・・

それだけのはずなのに・・・

心のどこかで何かが疼く・・・

胸のうちから、風の向うから、大地の底から・・・宇宙の果てから何かが呟くような声が聞こえる・・・

見えない何かが自分を絡めとっていくように・・・

今の自分を攻め立てるようにその声は牙王を狂わせて行く。

「うああああ!」

牙王は頭を強く抑えると立ち上がった。

目を見開き、呼吸を荒げる・・・

何か見えない手に心臓が握りつぶされているような感覚がする。

「何なんだ・・・何なんだ・・・」

声が聞こえる・・・ずっと、昔に聞いたことがある・・・そんな気がする。

「俺は知らない・・・聞いたこと無い」

だが、それは確実に鼓膜を超えて脳に直接、感じ取れる。

はるか昔に聞いた・・・優しい声・・・

「やめてくれ・・・俺はオレでいたい・・・オレは牙王だ!」

牙王はその呪縛から逃れるように大空に向かって叫んだ。

 

深夜

あれから一日、牙王はずっとベッドの上で震えていた。

何か知らない・・・自分が知らない何かが自分をのっとっていく感覚に襲われる。

恐怖という名の化け物がずっと自分に張り付いているようだった。

気を抜いたらその瞬間に自分の記憶だけをごっそりと持っていかれてしまう。

そんな恐怖と戦い続けていた。

それは苦肉にも夜の静寂と共に和らいでいく。

世界を包む闇の瘴気が彼を包み込んでいた。

「・・・少し外に出るか」

牙王は窓から見える月を見上げて呟いた。

何故かその光は彼の心に安らぎを与えてくれるようだった。

 

牙王は月が好きだった。

理由は知らないが好きなのだからしょうがないだろう。

だが、それ以上に何かが好きな気がしていた・・・しかし、思い出せない。

「・・・何故だ・・・オレはアレほどまでに恐かったのに」

月の光に抱かれていると全てを忘れてしまいそうになる。

忘れてしまう恐怖に怯えていたのに・・・

それでも恐怖を感じなくなっていた。

フラフラと歩きながら牙王は虚ろな表情へと変わっていく。

まるで心が何かに囚われているようだった。

しかし、突然の爆音がそれを吹き飛ばす。

「何だ・・・!?」

爆音と共に銃声も鳴り響いていた。

治安の酷く悪いこのアーカムシティでならよくあることだが運が悪いことにそれは極近くで行われていることらしい。

牙王は安らぎを振り切ると生きるためにそこから離れようと走り出す。

「・・・なんだ・・?力の波動・・・?」

牙王は空気に乗って伝わってくる力に気づいた。

そして、足を止める。

「アザトースがざわめいてる・・・!?何を言ってるんだ俺は・・?」

牙王は自分の知らない言葉がふいに出たことに驚いていた。

着実に自分の中で何かが進んでいる。

それはとても気分が良いものではなかった。

「くっ!ダメだ・・・関わるな」

牙王はそう思うと再び歩き始める。

「おい、そこな少年。こっちにアル・アジフはこなかったか?」

アパートの階段の上、月の逆光を浴びて白衣の男がギターケースを背負って立っていた。

「知らん」

牙王は一言、そう告げるとそのまま歩き出す。

「ちょぉっと待つのである。貴様・・・何かを隠しているな!?

顔にしっかり私は嘘を付いていますと書いてあるのである!」

白衣の男は完全に決め付けにかかっている。

牙王はさっきの気分が一気に抜けていく気がした。

「オレは嘘なんかついていない。いい加減なことを言うな」

「貴様・・・この天才ドクターウェストに対して何たる無礼な言葉を・・・その身をもって

自分がしたことの愚かしさを味わうのである。

今更、泣いて回って助けてください天才ドクターウェストさまと泣きついても許してやらんのである」

ドクターウェストはギターケースを構えると先端に穴が開いた。

「そんなこと誰が言うか」

「愛と青春の涙ミサイル」

「何なんだ、それは」

牙王はギターケースから放たれたロケットランチャーから逃れるためにビルの陰へと隠れる。

爆発と共にビルの壁が崩れ落ちた。

「なっ・・・普通に殺傷能力があるぞ・・・」

牙王は爆発の勢いに乗って走り始めた。

そして、曲がり角にでるとそのまま曲がる。

すると目の前から誰かが走ってきてそのまま衝突した。

「ぐっ・・!」

牙王はしりもちを付いたが直ぐに立ち上がった。

不可思議な服装をした青年が立っていた。

銀髪とあまりにも白い肌・・・そして、そこから放たれるオーラは人のものとは思えなかった。

「何だ・・・子供?」

男は牙王との突然の接触に驚いているらしい。

だが、それ以上に彼の肩に乗っている小さなディフォルメされた少女は驚いていた。

「何だこの者は・・・魔力の素質でもない・・・ニュータイプと呼ばれるものでもない・・・

まるで大地そのものがいるような気を感じるぞ」

「大地そのもの?何を言ってるんだ?ただの男の子じゃないか」

「たわけが!汝はどうしてそう見た目に囚われるのだ。こやつから流れ出る力・・・

汝よりも遥かに上だぞ」

「そうなのか?」

「まぁ、魔術師と言えどもこの力を感じるのは難しいが」

牙王を前に二人は言い争いを始めている。

牙王はそれが何故か自分ではない誰かのことを言っている気がしてなからなかった。

大体、今の今まで何の力も無かったのに何故、今になって・・・

両親も友人も死んでしまった今になって力が現れるのだ。

「ふはははは!見つけたのである」

突然、空から声が響いてきた。

三人は一斉にその聞き覚えのある声に空を見上げるとそこには

ビルをなぎ倒し炎を巻き上げながら歩いてくるドラム缶に手足が付いたようなロボットが立っていた。

「うげぇ!何なんだよありゃぁ!!」

「妾に聞くな!あんな非常識なもの、見たこと無いぞ」

二人はその異様な物体に声をそろえて驚いている。

「破壊ロボ。ブラックロッジの手先だ」

牙王がそんな二人に説明した。

「何でお前がそんなことを・・・?」

男は疑惑の目を牙王に向ける。

「ニュースでやってる」

「なるほど」

その一言に納得している。テレビがつかないのだろうか。

「アル・アジフ!大人しくこの天才ドクターウェストに回収されるのである!」

「五月蝿い!汝のような道化の手に誰が渡るものか!九郎逃げるぞ!」

「って、結局逃げるのかよ!」

「あんなものとまともに戦って勝てるわけが無い。完璧なマギウスならともかく今のうぬは

一般人に毛が生えた程度なのだぞ」

「はいはい・・・たくよぉ。おい、ぼさっとしてんな」

九郎は牙王に話しかける。

「何だ?」

「逃げるんだよ。捕まえれ!」

九郎はそういうと牙王の手を掴み突っ走った。

走ったというよりも地面スレスレを飛行している。

「くっ!離せ!」

「あんなところにいたら死んじまうだろうが!」

「オレは関係ないだろ。お前らと一緒にいたほうがよっぽど危険だ!」

牙王はそういいながら加速でかかるGに耐えつつ九郎の背中にしがみついた。

あのまま腕を引っ張られたままでは千切れてしまいかねない。

「そういえば・・・」

「汝は何を考えておるのだ!他人を巻き込むなど!」

「うるせぇ!放っておけなかったんだよ!何かあのまま死んじまいそうでな!」

九郎の言葉に牙王は脳天を打たれたような気分になる。

あそこで死ぬ・・・心のどこかで確かに考えていたことだった。

どうせ、このまま何かに支配されるぐらいならと・・・

そんな牙王の心のうちを知ってか知らずかその命を背負いながら九郎は破壊ロボから放たれる爆撃をかわし続ける。

ビルの破片が降り注ぎ、爆炎が全てをなぎ倒すかのように吹き付ける。

物質を破壊する衝撃をかわしつつ街を走り抜けていった。

「このままでは逃げ切れんぞ」

「そんなこと言われても・・・」

九郎の表情に疲労の色が見え始める。

スピードもさっきよりも落ちてきている。

牙王を連れているのが原因だろう。

だが、そんなことは決して口に出さずにがんばっていた。

 

「ふはははは!このドクターウェスト様の作った破壊ロボからは決して何人たりとも逃げられないのである」

破壊ロボはビルをものともせずに九郎たちを追い詰める。

その時、一条の光が破壊ロボに襲い掛かった。

突然の衝撃に破壊ロボはのけぞり体制を崩す。

「くっ、貴様は!」

そこには白い装甲に身を包んだ白銀の天使がいた。

バーニアのフレアを撒き散らし空中に滞空している。

このアーカムシティでブラックロッジと戦い続ける白銀の天使・・・

「メタトロン!貴様、また我輩の邪魔をする気であるか!」

「ブラックロッジ・・・これ以上、貴様らの思い通りにはさせない!」

メタトロンは腕を銃のような形状に変化させるとそこから魔力のエネルギー弾を撃ち出した。

 

「すげぇ、メタトロンだ!」

「アーカムシティのヒーローのお出ましか」

九郎は立ち止まりその光景を見守っている。

「あの破壊ロボと互角に戦うとは・・・何なのだあやつは・・・」

「このアーカムシティに突然と現れる謎のヒーロー、メタトロン。その素性は誰も知らないんだぜ」

九郎は何故か誇らしげに語っている。

まぁ、このアーカムシティの人間にとってはあの天使だけが味方なのだから仕方ないだろう。

連邦軍は現在、ザフトやザンスカールとの戦争でその戦力を費やしているし

スーパーロボットたちも各地に出没するインベーダーとの戦いの為にここまで手が回らないのだ。

「そういえば・・・昨日、冥獣が暴れてるときに巨大ロボットが出たって騒ぎになってたな」

九郎は思い出し呟く。その言葉に牙王はびくりとした。

そのロボットは自分が操っていたなんて言える筈も無い。

何せ今はそれを呼び出すための道具を持っていないのだ。

昼間にビルの屋上に捨ててきたきりである。

 

「待っていたぞ。メタトロン!」

突然、黒い閃光が白銀の天使に襲い掛かる。

メタトロンは吹き飛ばされビルに突き刺さった。

「くっ・・・貴様は・・・?」

ビルの破片を振りほどき再び空中へと躍り出るメタトロン。

その視線の先には空中に静止する一つの影があった。

黒い甲冑に身を包んだ天使・・・

「オレの名はサンダルフォン。貴様を倒すために地獄から舞い戻ってきた」

サンダルフォンはそう叫ぶと拳を前へと突き出す。

内から溢れ出る魔力の奔流が拳から放たれメタトロンへと向かっていく。

メタトロンはそれを間一髪のところで回避した。

 

「ぬぅぅぅ!サンダルフォン、メタトロンは我輩の獲物である!邪魔をする出ないのである!」

ドクターウェストはサンダルフォンにメタトロンの相手を取られて憤慨していた。

「貴様の仕事はアル・アジフの回収のはずだ・・・それとメタトロンはオレの獲物。

貴様が手を出すことは許さん!」

サンダルフォンはまるで地中から響くような声でドクターウェストに言い放つ。

「ぬぅ・・・確かにそうなのである。仕方ないここは一つ、お前に華を持たせてやるのである!」

その迫力に負けてか知らぬがそういうと再び狙いを九郎たちに向ける。

そして、腕に付いたドリルを九郎に向けてはなった。

「げっ!」

すっかり観客と化していた三人はいきなり襲い来るドリルを完全に回避できなかった。

コンクリートが粉砕され、巨大な空洞がその姿を現す。

重力の法則に従うように三人はその穴に飲み込まれていった。

 

 

三人が再び気がついたとき、目の前に広がる光景に呆然としていた。

アーカムシティの地下・・・

そこは巨大なトンネルだった。

整備、補強は完璧らしく明かりが付いていて辺りが見渡せる。

「こんなところがアーカムシティの地下に・・・」

変身が解けた九郎があたりを見回す。

「だが、おかげであの破壊ロボから逃げられたわけだな」

アルはそう呟くと牙王の方へと視線を向けた。

牙王はただ、呆然と上を見上げているだけである。

「汝は何者だ?」

アルの突然の問いに牙王は振り向いた。

そして、少し目を険しくする。

「誰だ?」

さっきまで小さな姿だったので当然だろう。

いきなり、目の前に現れた少女に困惑している。

「妾はアル・アジフ。世界最強の魔道書ネクロノミコンの原本だ」

「魔道書・・・?あぁ、魔術師が魔術を行使するために使う道具か・・・科学全般のこの時代でよくやるな」

牙王はそんなアルに冷たい視線を送る。

魔術師が最強とされる時代はもっと昔に終わっている。

今はそれよりも手軽で強いモビルスーツやアームスレイブという存在がいる。

それらはある程度の訓練を受ければ誰だって動かせるものだ。

素質を選ぶ魔術師に比べてその使いやすさやコストパフォーマンスから次第に魔術の意味は失われていった。

だが、このアーカムシティだけは魔術と科学の合成が今もなお計られている。

「この世界に成り立つ元素を式を持ってつむぎだす魔術の何処が科学に劣っているというのだ?」

アルは憤慨している。

この時代の人間は魔術を軽視する傾向があった。

なまじ魔術を知り科学万能を唱えるだけあって魔術に対する憧れなどほとんど無い。

中には己を鍛えて魔術師並みに強いものまでいる始末だ。

「別にそうは言ってない。ただ、珍しいと思っただけだ」

牙王は素直に感想を述べる。

先の通りに魔術師は珍しい。そして、それと同時に力ある魔道書もまた、珍しくなっていた。

自らの魔力により人間と同じ姿を取れるほどの魔道書などほとんど存在しないだろう。

「そういや、驚かないが魔術書を見たことでもあるのか?」

九郎がいたって冷静な牙王に尋ねる。

「いや、不思議なことなんて起こりすぎればただの日常だから」

牙王はそう一言告げると黙り込んでしまった。

「・・・何かあったのかこいつ?」

「暗いな・・・ただでさえじめじめしてるというのに余計にじめじめする」

オレに関わるなオーラを出しまくっている牙王に二人は少し引いていた。

だが、ここまで引っ張ってきてしまって終わりというわけにも行かない。

それに何処だかも分からないこんな場所においていけるはずも無かった。

「オレは大十字九郎。私立探偵をしている。お前の名前はなんていうんだ?」

九郎は牙王の名を知らないことに気づき自己紹介した。

そんな九郎に対して牙王は少し驚いている。

「オレは・・・疫神牙王」

「牙王・・・か。珍しい名前だな」

「よく言われる・・・牙を持つ者たちの王となれって意味らしい」

「そうか・・・いい名前じゃないか」

九郎は素直に牙王の名前を褒めた。

そんな九郎に少し牙王は照れている。

久しぶりにこんなに人と話す・・・少しなまってしまっているらしい。

それに何となく目の前の人物の笑顔は暗い自分の心に響くようだったのだろう。

「牙王と言ったな。汝は何者なのだ?何故、それほどまでの力を持つ・・・?」

アルがそんな牙王に質問を投げかける。

「・・・力・・・か。さぁな、良く分からない」

「自分の力に気づいていないのか?まるで汝は地球のようだ。こうして改めて見て分かる・・・

様々な力をその内に内包しておる・・・」

「ある奴にお前は地球の王の生まれ変わりだと言われたことがある」

「地球の・・・王?」

その言葉に二人は驚いていた。

今まで歴史に地球の王と呼ばれる存在はいない。

地球連邦が様々な国を統治して大統領が存在しているがそれは王ではない。

そして、この力は明らかに異質なものだ。

それを完全に操ることが出来れば地球の王と言われても納得がいく気がする。

「気にしないでくれ。それよりも早く出口を探そう」

少し前向きな気分になってきていた牙王はそう促すと二人は頷いた。

微妙に気になっているようだがそうしている暇も無い。

二人にもやるべきことがあるのだろう。

 

しばらく進むと巨大な建造物が見えた。

その巨大なものは鋼鉄で出来ていた・・・

そして、それは人型をとり、大きさは50mほどもある。

「これは・・・」

「まさか・・・デウス・マキナ」

アルは力ある魔道書から呼び出される機械仕掛けの神を思い起こしていた。

目の前にいるそれはまさしくそれに近いものを感じる。

「スーパーロボットか?だが、見たことがないな」

牙王はそれよりも地球の危機を救い続けているスーパーロボットの雄姿を思い起こす。

テレビで報道される彼らの活躍はまさに神の領域といっても差し支えはないだろう。

圧倒的な超兵器、そして、その鋼鉄の体で人々を守るその姿。

目の前のそれには通じるものを感じる。

「まぁ、確かに魔道書無しでここにある以上、デウス・マキナではないな・・・だが」

魔道書から呼び出されない時点でデウス・マキナという分類にはならないだろう。

しかし、この目の前のそれにはそれと通じるものを感じていた。

「どうしたんだ?」

「妾のデウス・マキナ、アイオーンはマスターテリオンとの戦いで大破してしまった。

しかし、このデウス・マキナを代わりに使えば・・・」

「おいおい、明らかに人様のものだろうが。それを奪うなんて泥棒だぞ」

「だが、これほどのものがこうして立っておるだけでは宝の持ち腐れというものだ」

アルが言うことも一理ある。

現に地上で巨大な鋼鉄の化け物が暴れているのにここにあるということは動けないのだろう。

しかし・・・

「スーパーロボットなんて動かせるのか?」

「うつけが!これはスーパーロボットなどというものではない。デウス・マキナだ」

「何故?」

牙王が即座に尋ねる。

その言葉を待っていたといわんばかりにアルはふんぞり返っていた。

「見たところこれは魔術理論を元に作られておる。あんな科学理論もへったくれもないスーパーロボットとは違う」

確かに科学で作っておいて物理法則を無視しているスーパーロボットは異常だろうが・・・

「っていうことは魔力があれば動かせるのか?」

「そうだ。逆に言えば魔力がないから動かないのであろう。最強の魔道書アル・アジフたる妾となれが共に乗り込めば

あんな破壊ロボなど一瞬にして破壊できるというものだ」

それはこのロボットにそこまでの性能があればという話だが。

「しかたねぇ・・・やるしかないか」

九郎はデウス・マキナの顔を見て呟いた。

その瞬間、何故か懐かしいものを見たような印象を受ける。

「そうと決まれば・・・」

アルがそういうと横でポツンと立っている牙王に気づく。

「牙王はどうするんだ?一緒に乗せるのか?」

「ふむ・・・まぁ、大丈夫であろう」

ということで牙王も一緒に搭乗する事となった。

 

 

「司令、大変です、地下の虚数展開カタパルトが起動しています」

「何ですって!」

アーカムシティを牛耳る覇道財閥の総帥覇道瑠璃はその言葉に耳を疑った。

虚数展開カタパルトは魔術理論と科学理論により作られたものだ。

更には覇道財閥が管理しているというにそれが勝手に起動することなどありえない。

「外部から強制的に割り込みがかかっています」

「どういうことなの・・・デモンベインは!?」

瑠璃は地下に安置されている巨大ロボットのことを思い出す。

祖父が残してくれたブラックロッジと対抗するための最後の剣。

虚数展開カタパルトが起動しているということは・・・

「デモンベイン・・・起動しています!」

「なんてことなの・・・早くコクピットにつなぎなさい」

すぐさまコクピットの映像がスクリーンに映し出された。

そこには自分がデモンベインを起動させるために魔道書を探し出す依頼を頼んだ大十字九郎と見知らぬ少女と少年が乗っている。

「だ・・・大十字さん!なんで貴方がそこに乗ってるの!?それにその二人は!?」

「げっ・・・姫さん・・なんで?」

「何でじゃありません。それは私のデモンベインですよ」

「デモンベイン・・・これがブラックロッジに対抗するための切り札」

九郎は自分が乗り込んだものの正体を知って慌てている。

天下の覇道財閥を敵に回してこの街で生きていけるはずが無い。

青い顔してあわあわとしている。

「ほぉ、これはデモンベインという名なのか。魔を断つ剣・・・良い名だ」

アルはその言葉に響きに感心していた。

なんともこの機体に似合った名前よ。

「何なんですか貴方は?」

「妾はアル・アジフ。汝が探していたという魔道書だ」

「魔道書・・・?何を言ってるんですか貴方みたいな子供が」

「汝みたいな小娘に言われたくないな。妾はこれでも2000年近い時を過ごしている」

かつて、自分が記されてからそれほどの時は過ごしているだろうか・・・

その間に人は自らデウス・マキナに似た物を作り出せるほどになったが。

「こ・・小娘ですって!」

瑠璃は自分よりも見た目小さな少女にバカにされて憤慨している。

その様子を見て牙王は少し呆れていた。

「何、喧嘩してるんだ?」

「喧嘩などしておらん。あっちが一方的にわめいておるのだ」

「どうでもいいが・・・さっさと行ったらどうだ?」

「言われなくてもそうする。汝は何の役にもたっておらんのだ。黙っていろ」

確かに牙王はデモンベインに乗っている意味は無いが・・・

「すんません、姫さん。説明は後でします」

九郎は腰を低くしてどうにか事態をなだめようしているが・・・

「ダメです。デモンベインは使わせません!」

「うつけが、外で暴れておる破壊ロボを倒すにはこれを使うしかないのだぞ。

これほどまでの機体、使わずにおいておくほうが間違っておる」

アルはそういうとそのままデモンベインを虚数展開カタパルトへと運んでいく。

「待ちなさい!誰も使わないとは言ってません。あなたたちに使わせたくないだけで・・・」

瑠璃が騒いでいるがそれらを無視してデモンベインはカタパルトに乗った。

 

虚数展開カタパルト・・・

それは特定の座標に存在をあったことにする魔術理論の機械。

通常の戦艦のカタパルトとは違うものである。

だが、ロボットを戦場へと送り出すことについては同じことが言える。

そして、デモンベインは破壊ロボの近くの空間にあったことにされた。

光が収縮し物体が具現化されていく。

現在の超科学力を持ってしても成し遂げない事象をそれは成し遂げていた。

 

「なっなんなのである!?」

ドクターウェストは突然、現れたデモンベインに驚いている。

「虚数展開カタパルト・・・うまく起動したようだな」

「すげぇな、おい・・・それよりも」

九郎は目の前に佇む破壊ロボを目の前に構えを取った。

その動きにあわせてデモンベインも構えを取る。

デモンベインは九郎の動きを完全に再現して動く機体らしい。

「くっ・・・たとえ、スーパーロボットであろうともこのスーパーウェストロボ28号の前では敵ではないのである」

ドクターウェストは目の前に現れたのがスーパーロボットだと思い少しだけ焦っていた。

天才だからこそ分かるスーパーロボットの力・・・

あれほどのものを作り出すものたちも正に天才・・・

だが、自分も天才の名にかけて負けられなかった。

「いくのである!」

破壊ロボはデモンベイン目掛けて一斉に機関砲を撃ちつけた。

高速で飛来する弾丸がデモンベインの装甲に衝撃を与える。

「いきなり撃ってきやがった」

「あんずるな、九郎。あの程度の攻撃ではデモンベインに傷一つつけることは出来ん」

アルが言うとおりデモンベインにダメージは全く無い。

それはドクターウェストも気がついていた。

「ならば・・・これでどうなのである!」

破壊ロボは腕に付いた巨大なドリルでデモンベインに向かう。

デモンベインはそのドリルをまともに食らうとそのまま吹き飛ばされた。

「九郎!何をやっている。かわせない攻撃ではないぞ!」

「くっ・・・そう、思うとおりに動くかよ」

九郎はなれないデウス・マキナの操縦に手間取っていた。

いくら、思うとおりに動くとはいえデウス・マキナの体と自分の体は違う。

それに魔力も巧く伝達できていないようだ。

「くっそぉ!」

デモンベインは立ち上がるとそのまま破壊ロボに殴りかかる。

だが、殴るだけでは決定打にならなかった。

「ダメだ・・・小娘!何か武器は無いのか!?」

アルは通信で瑠璃に問いかける。

「誰が小娘ですか!デモンベインの武装・・・あなたたちに使わせるとでも思っているのですか!」

通信の向うで瑠璃は憤慨している。

「だが、このままでは街への被害は広がるばかりだぞ」

アルの言うとおりデモンベインと破壊ロボの攻防でビルは瞬く間になぎ倒されていく。

なれない九郎ではビルのことまで気にして戦えないのだ。

「くぅ・・・」

「お嬢様。ここは彼女たちに従ったほうが得策かと」

その時、瑠璃の横に控えていた執事のウィンフィールドが口を開いた。

「ですが・・・」

「ここで旦那さまから託されたデモンベインを失うのですか?彼らしかいないのですよ。今、あの脅威に立ち向かえるものは?」

「・・・分かりました。今からレムリアインパクトのデータを送信します」

ウィンフィールドに促され瑠璃は渋々と承諾する。

ここで負けるわけには行かないのだ・・・

「レムール・・・?キツネザルとは頼りない名前だが・・・」

レムリアです。

 

「ナアカルコード送信!」

瑠璃は言霊をモニターへ向かって打ち出す。

言霊は変換されデモンベインへと流れ込む。

「ヒラニプラシステム解除!」

アルがヒラムニカシステムの封印を解除する。

それと同時に膨大な魔力がデモンベインの右腕へと宿っていった。

デモンベインは両腕を広げるとその背後に魔方陣が現れる。

「渇かず飢えず無に帰れ!」

九郎の叫びと共にデモンベインは大地スレスレを疾走し破壊ロボへと向かっていく。

その右腕には無限熱量が宿っていた。

「レムリアインパクト!」

そのままそれを破壊ロボに叩きつける。

無限熱量が光の塊を作り出し瞬時にその構成物質を分解していく。

「昇華!」

アルの言葉と同時にデモンベインは飛び下がり光の渦が開放された。

それは完全に破壊ロボをこの世界より消滅させている。

時計台の上に飛び乗ったデモンベインは両腕を組み、そのビームの鬣をたなびかせていた。

 

「勝った・・・」

「ふむ、このデウス・マキナ気に入ったぞ。妾がアイオーンに比べるとまだまだだが十分に代わりは勤まる」

アルはデモンベインの性能に完全に酔いしれていた。

「何を言ってるんです!それは私のものですよ」

「使えないものが持っていても仕方あるまい」

「なんですって!」

二人の少女は再び言い争いを始めた。

「ちょっと待て!」

そんな二人に九郎が口を挟む。

「何だ九郎!」

「何です大十字さん!」

二人は凄い形相で九郎ににらみかかる。

「どうやら・・・まだ、終わりじゃないみたいだぜ」

九郎がそういうと闇よりのそりのそり奇妙な怪物が姿を現した。

巨大なその姿はデモンベインとほとんど変わらない。

その姿はまるで神話に登場するミノタウロスのようだった。

「あれは・・・冥獣。それも確認された中で最強の種類」

瑠璃はその化け物に驚愕する。

冥獣・・・つい最近、現れた謎の怪物・・・

それらは一通り暴れるとすぐさま闇へと帰っていく。

そのためにその実体は掴めず撃破されたという報告も先日の一件だけだった。

「くっ・・・デモンベインはさっきのレムリアインパクトのせいで戦闘は無理だぞ」

「だけど・・・アレを止められるのはデモンベインしかいない・・・やるしかない」

九郎は何とかその冥獣に立ち向かおうとする。

しかし、一回エネルギーを放ちきったその体は完全に重くなっていた。

牙王はその状況の中・・・空中に佇む刀を見つける。

「刀・・・何故、このようなものが?」

アルもそれを見つけて怪訝な顔を見せる。

刀は当たり前だが自力で飛ぶわけが無い。

しかし、それに魔術的な力を感じられなかった。

まるではじめからそこにあるのが普通のように存在している。

「・・オレを迎えに来たのか・・・?」

「何を言っておるのだ?」

「あの冥獣はオレが倒す・・・二人はここでじっとしててくれ」

牙王がそういうと二人は驚いて目を向ける。

その時、牙王の体は突然に消失した。

そして、次の瞬間には刀の目の前に立ちその柄を握り締めている。

 

「何故・・飛べるのか・・・」

極点王の声が牙王に流れ込む。

「教えてくるか?出来ればワープした理由もな」

「お前は地球の王だ。式により強引にそこにあったことにしなくとも・・・地球の全てがお前自身・・・

何処に存在しようがお前の自由だ。そこがたとえ空の上だろうとな」

牙王は刀を真っ直ぐに冥獣に向ける。

「無茶苦茶だな・・・魔術でも科学でもない力・・・か」

「それらが地球というものを媒介に成立している・・・だが、お前はその媒介自体だ。

そんなものすらも超越した力を使うことが出来る」

「・・・オレは地球の王なんかじゃない・・・だけど、あいつらを護るためぐらいになら・・・

お前の力、使わせてもらう」

牙王はそう告げると念じ始める。

相手の用件を聞き入れずに力を行使することが勝手なことだと分かっている。

だが、非力な自分が力を使うにはこの方法しかなかった。

認めていないとはいえ事実は事実だ・・・極点王が力を貸すなら使うまで・・・

「出ろ、極点王」

呟き声程度の言葉で刀から光がほとばしり極点王の巨大な体が構成されていく。

何処からか呼び出されたのではない・・・その空間自体が極点王へと変化したのだ。

そして、牙王は極点王と同化していく。

 

「あいつを・・・一撃で倒す。これ以上は街に被害を出したくない。前の奴を使うぞ」

牙王は前回の戦いでファグスを消滅させた力・・・精霊葬送を使おうとした。

だが、極点王は動かない。

「精霊葬送では奴は止めれらない・・・奴は命を吸収し精霊に認可されてしまっている」

「・・・なら、どうする?」

「我が力で葬り去ればいい・・・たとえ精霊が認めようが我は奴の存在を認めない。

牙王・・・お前もそうなのだろう?」

極点王の問いに牙王は頷いた。

「ならば、その思いを金剛丸に込めろ。さすれば精霊も地霊も妖精もその命に従いその道を開ける」

「俺たちが制裁を下す・・・分かった」

牙王は頷くと金剛丸を抜き放った。

大地の核を練成し作り上げた刀・・・その硬度は地球上の物質で勝るものは無いといわれている。

「精霊よ・・・奴を捕らえろ」

極点王が命ずると光の粒子が目の前の冥獣の動きを封じる。

そして、極点王は金剛丸を構え空間を移動し始める。

巨体が疾走しているというのに全くの無音、全くの無風・・・まるでそこにいない・・・

いや、その空間自体が自ら道を開けている様な感じだった。

「極点制裁!!」

牙王が叫ぶと一気に金剛丸を振りぬいた。

その一太刀は空間ごと冥獣を引き裂く。

そして、開けた空間は冥獣の肉体を吸い込み次元の彼方へと放り込んだ。

地皇の下す制裁にその世界は何人たりとも異議を申し立てることは出来ない。

 

「あ・・・あれが牙王なのか・・・?」

九郎はデモンベインの中で極点王を見て驚いていた。

デモンベインのような派手さは無い・・・だが、その力はかなりのものだ。

「空間ごと敵を切り裂き追放した・・・それよりも世界そのものが奴にひれ伏している・・・

地球の王・・・なるほど・・・そういうことか」

アルは一人、目の前にたたずむ今まで見たことも無い異形に納得していた。

その巨体は朝日を受けて光り輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

牙王と九郎、アルは共に生活することとなった。

そんな三人は一人の配達屋と出会う。

ガドと呼ばれる謎の鉱石を巡り事件が起こる。

牙王は地球のものではないそれに脅威を感じていた・・・

 

次回

スーパーロボット大戦〜OVER THE GOD〜
第三章     地球混迷編

第三話 欲望の石

命を護る牙となれ、牙王