スーパーロボット大戦

〜OVER THE GOD〜

第三章        地球混迷編

第三話 欲望の石

 

地下のデモンベインの格納庫

デモンベインは破壊ロボを撃退し街のいたるところに存在する脱出口からそこに戻ってきた。

ついでに極点王も並んで鎮座している。

50メートルクラスのロボットが並んでいるさまはかなり壮観なものだ。

そして、その足元で牙王と九郎、アル。その目の前に瑠璃と執事のウィンフィールドが立っていた。

「大十字さん・・・どういうことなのか説明してもらえますね?」

瑠璃がきっと睨みつけ九郎に尋ねる。

まだ少女とはいえ大財閥である覇道財閥の総帥・・・そのプレッシャーはかなりのものだ。

九郎はそれにたじろいでいる。

「えっと・・・ご依頼の品です」

九郎は苦笑いを浮かべながらアルの襟元を掴み上げ前に出した。

まるで猫を掴んでいるかのように。

「私・・・バカにされてるのかしら?」

瑠璃のこめかみに血管が浮き出そうなほどに怒っているのが分かる。

九郎はこの目の前の少女に魔道書を探し出してくれと依頼を受けていた。

そして、最強の魔道書と名乗るアルと出会う。

彼女の言うことが本当なのでこれで確かに九郎は依頼を達成したわけだが瑠璃はそうは思わないだろう。

「私は魔道書を捜してきてくださいと言ったんです。こんな生意気な少女を連れてこいなんて言ってません!」

当然の反応だろう。

九郎もやっぱりという表情をしている。

だが、一人アルは怒っていた。

まぁ、自分の存在を否定されたも同然なのだから仕方ないだろう。

「妾は最強の魔道書アル=アジフなるぞ。」

「それに虚言癖まであるじゃないですか!」

「!!」

その言葉にアルは激昂する。

九郎の腕から離れるとその実に宿る魔力を開放した。

魔道書のページが風に乗りあたりに吹き荒れる。

その圧倒的な魔力の波動にその場にいた全員が驚いた。

何せ通常のいわゆる魔道書と呼ばれるものとはかけ離れた力だったからだ。

「これで信じたか?」

アルは呆気にとられている瑠璃の表情を見て嘲笑している。

その言葉と表情は瑠璃の怒りの炎に油となった。

「確かに貴方は魔道書のようですね・・・ですが、私のデモンベインにはふさわしくありません!」

「なんだと!?」

「貴方のような古本娘じゃデモンベインには役不足だと言っているのです!」

「にゃにお!妾は最強の魔道書アル=アジフだぞ。妾以上の魔道書など存在せん!」

「そんなの分かりませんわ!」

二人は目から火花が出んばかりににらみ合っている。

そんな二人に九郎は慌てていた。

「まぁ、とにかく二人とも落ち着け」

何とかなだめようと言葉をかけるが

「五月蝿いですわよ。大十字さん!」

「九郎!口出しするな!」

全く聞こうともしない。

「大十字さん!」

「は、はい!」

九郎はいきなり呼ばれて驚く。さっきは黙ってろと言われたのに。

「今度はもっとちゃんとした魔道書を捜してきてください。こんな有害図書じゃなく」

「ゆ、有害図書だとぉ!!」

「それから、もう勝手にデモンベインに乗らないでくださいね。そのときは命がないと思ってください」

「は、はい!」

九郎は暴れるアルの口をふさぎながら返事をした。

この街を取り仕切る覇道を相手にしたとあっては生きていけない。

ここは下手に出ておかなければならないときだ。

 

そんなやり取りを呆れ顔で眺めていた牙王に瑠璃が視線を向ける。

「貴方がそのロボットのパイロット・・・疫神牙王ですね?」

牙王は名前を知られていることに驚きはしない。

覇道の情報能力で調べ上げたのだろう。

街に住む個人のデータなど管理しているはずだ。

「そうですが」

牙王はぶっきらぼうに答えた。

相手がどれだけ偉いものであってもへりくだったりはしない。

そういう姿勢は昔からとり続けていた。

「このロボット・・・いえ、もはやスーパーロボットですね。何処で手に入れたのですか?」

「昨日、道端で」

「こっちは真剣に聞いてるんです!」

実際の話だからしょうがない。相当、はしょってはいるが。

「こっちだって良く分からない。聞くんならこいつに聞いてくれ」

牙王は後ろに佇む巨大なロボットを指差して言った。

その態度に再び瑠璃がきれそうになったとき、それを遮り声が聞こえる。

「私の名前は極点王。貴方がたのいうロボットです」

その声に瑠璃をはじめその場にいた者たちが呆然とする。

ロボットが話しているその事実がとてつもない衝撃だった。

確かにAIを持つロボットは存在するが直接、話しかけてくるものなど初耳だ。

まぁ、実は宇宙に既に存在しているが。

「こ・・・このロボットが話してるのですか?」

瑠璃が指差して尋ねると極点王は頷いた。

「その通りです。私は地皇に従いし僕が一人、極点王。古の命に従い復活された地皇のために再びこの地球に姿を現しました」

「地皇・・・?」

瑠璃は聞きなれない言葉に疑問符を浮かべている。

「汝がしゃべるとは好都合だ」

そこにアルが割ってはいる。

極点王と牙王に関して抱いている興味なら彼女が一番強いだろう。

そして、一番理解できる存在でもある。

「最強の魔道書アル=アジフか」

「おぉ、汝は妾のことを知っているのか?」

「あぁ、稀に見る強大な力だったからな」

「中々、見所のあるやつだ。それで地皇とは何者なのだ?」

「地皇とは地球の王。地球のそのもののことだ」

その言葉にアルは驚く。

それは他の皆にしてもそうだ。

地球そのもの・・・そんなものが存在するというのか。

「確かに汝からは相当な力を感じる・・・だが、どう見積もってデモンベインと同等程度だ。

それで地球の王とはな」

「私は地皇ではない。地皇は牙王だ。私は牙王の補助にしか過ぎない」

「・・・この男にそれほど力があると」

アルは牙王を見て呟いた。

確かに不思議な力を持っている。

だが、それほどのものとは思えない。

「だが、復活といったな。妾はこの地球に存在していたあらゆる記憶が記されておる。

だが、地皇などという存在は聞いたことが無いぞ」

アルの知識に地皇という記述は存在しない。

ある事件でページが敗れて知識は完全なものではない。

だが、それでも確証はあった。

「地皇の文明は旧支配者よりも以前・・・地球が誕生したときから始まった。

だが、ある者にその文明は破壊され命無き地球にゲッター線が降り注ぎ今の命溢れる世界になった」

「旧支配者よりも以前の時代だと・・・」

「そうだ」

つまり、人間・・・更には恐竜などよりも圧倒的に以前の時代にさかのぼることになる。

確かに人知の届かぬ未踏の領域。想像の産物の世界でしかない。

「信じがたいが・・・」

「信じる。信じないの問題ではない。だが、今のときに地皇は必要なのだ。

虚空より現れる邪悪と戦うためには・・・だが、今の地皇は無力にして無知。覚悟も無い。

出来れば護ってもらいたい」

「護る・・・牙王をか?」

「そうだ。アル=アジフとそれを操る魔術師・・・そして、傍らにいるデモンベインという名のスーパーロボット。

これほどの力ならば牙王を護りやがて邪悪に対し立ち向かう剣となる」

「ふむ・・・確かに妾たちの力は強大だ。その着眼点は良い。だが、我らが牙王を護る義務も義理も無いぞ」

「君たちの戦う相手・・・ブラックロッジ。強大な力だ。少しでも力は必要だと思うが」

「なるほどな・・・分かった」

アルは頷いた。

「分かったじゃない!」

「ちょっと待て!」

牙王と九郎が同時に待ったを入れる。

「勝手に話を進めて・・・俺は地皇なんかじゃない!戦う気だってない!」

「オレだってお前の所有者になるなんて言った覚えはないぞ!」

二人はどちらも戦う意思はないらしい。

「みっともないぞ二人とも。世界に魔の手が迫っておるのだ。それでも戦わないなど男ではないぞ!」

アルが叫ぶ。

どうしても戦わせる気だ。

「牙王・・・私はお前の意志を尊重する。だが、お前の中にあの約束がある限り。戦場に立つと信じているぞ」

極点王はそういうと消えてしまう。

何となく脅迫されるよりも嫌なやり方だ。

「どいつもこいつも!勝手なことばかり!」

牙王が叫んだ。

自分の考えなど無視して事態は進んでいる。

それが腹立たしかった。

「それは貴方たちもですわ!」

完全に蚊帳の外だった瑠璃が声を上げた。

一斉に視線がそこに向けられる。

「もういいですわ・・・口論は外でやりなさい!」

 

三人はそのまま外へと放り出され、仕方ないのでうちの戻ることとなる。

一人、別の道を行こうとする牙王をアルが止めた。

「何処へ行く?」

「帰るんだ。家に」

「汝の家族には妾が説明しておく。妾たちと共に来い」

「全員死んだよ」

「なに?」

「親も友達も全員死んだ」

牙王はまるで世間話のように話した。

今更、何の感慨も沸いてこないらしい。

「ブラックロッジか」

九郎が悲しそうな表情で尋ねた。

「ブラックロッジもあったし冥獣でもあった・・・この街に住んでいる以上、仕方ないことだ」

これほどまでに問題の多い街も少ないだろう。

まぁ、宇宙や一部の地域では戦争が起こっているところもあるが。

「よし、牙王ついて来い」

九郎はそういうと牙王の手を持って歩き始めた。

「なんだ!?」

「いいところに連れて行ってやるよ」

「いいところ?」

牙王の脳裏にはもはや不安なことしか思い浮かばなかった。

 

街の中にひっそりと建っている教会。

テロや戦争やらで色々と問題が起こっていても人は神頼みに走らず教会がボロボロだった。

神に祈るものもいるだろうがそれでもわざわざ、ここまで出向くものは少ない。

九郎は別にそんな少ない中の一人ではないがここには良く出入りしていた。

「ライカさぁん」

九郎が教会のドアを開け訪ねた。

一人のシスターと三人の子供がそれを出迎える。

「あらあら、九郎ちゃん。どうしたの?」

シスター・・・ライカは顔なじみの九郎の横にいるアルと牙王の姿を見て驚いている。

「あぁ、こいつらはアルと牙王と言って・・・」

「九郎の所有物だ」

「誘拐されてきた」

二人がいきなり物騒の発言をする。

突然のことに九郎は驚愕した。

「大変だわ。九郎ちゃんがロリコン・・・あろうことか更にショタコンに・・・」

ライカは慌てて子供たちを九郎のそばから引き離す。

「あ・・あの、ライカさん・・・」

「ダメよ、二人とも九郎ちゃんのそばにいたら・・・・・

 

以下、放送禁止の為に削除いたしました。

 

アルと牙王もライカサイドについて九郎に軽蔑のまなざしを向けている。

「九郎・・・まさか汝がロリコンでショタコンではたまたとても書き表せぬ変態的性癖の持ち主だったとはな」

「オレはあいつの毒牙にかかるのか・・・」

年齢以上に幼い二人がひいている。

「お前らは揃いも揃って俺を性犯罪者にしたいのか!?

いや、そうなんだな。そうなんだろ!何の悪意も無いようなきれいな瞳で虚言ばら撒いて

オレを社会から完全に抹消する気なんだろ!」

九郎はいじめすぎたのか壊れ始めている。

「まぁ、冗談はともかく・・・」

牙王は仕方ないと口を開いた。

「何、もう少しぐらい遊んでも良いではないか」

「時間がかかりすぎる。俺はなんでこんなところに連れてこられたのか聞きたいな。

まさか、教会で変態プレーを強行するためとか答えたら斬り殺すが」

牙王は腰に供えた刀の柄を握り尋ねた。

「んなわけあるか!オレはお前と同じ境遇の子供たちを見せておきたかったんだよ」

九郎の言葉を聴き牙王はライカの後ろで未だに九郎を罵っている子供たちをみた。

「三人とも孤児なのよ。君もなの?」

「まぁな。そうなるだろう」

「可愛そうに」

「同情されたくない。別にしょうがないことだからな」

牙王は強がるわけでもなく笑顔を向けた。

前向きに捉えているのだろう。家族の死を。

別に生きる気力をなくすほどに絶望してはいない。

「そうなの・・・なら、ここにすまない?」

「教会に・・・?」

「そう、ここは孤児院もかねてるし」

「他人の世話になるのは好きじゃない」

「そういわないで一人だと寂しいわよ。それに貴方ぐらいの歳の子がいてくれれば子供たちも任せられるし」

ライカがお願いすると牙王はしかめっ面で唸り始めた。

しばらくして、牙王は渋々という感じで口を開く。

「・・・仕事をしてその結果、寝泊りできるなら・・・」

ぶっきらぼうに嫌そうに言葉を並べるがその響きは少し柔らかだった。

そんな言葉が彼から出たことに九郎は少し微笑みを浮かべる。

 

「それじゃ、帰るよ」

九郎はそういうと教会を出ようとする。

その後をアルが続こうとする。

「ちょっと待て、何でついてくるんだ?」

「何を言うか。魔術師と魔導書は共に在るものだぞ」

「俺はお前の持ち主なんかになったつもりはねぇよ」

「汝に拒否権などない」

「俺の人権は無視ですか?」

「ともかく・・・牙王、汝も覚悟して置けよ。あれほどの力をブラックロッジが見過ごすはずが無い」

アルは帰り際にそう忠告すると九郎と共に出て行った。

牙王はアルのその言葉を噛み締めるように心にしまった。

 

ブラックロッジ・・・それはこの街を騒がせる悪の秘密結社。

ありとあらゆる犯罪に手を汚す常識はずれの異質者。

あのドクターウェストの破壊ロボもブラックロッジ所属のロボットである。

これほどまでに質の悪い相手に連邦軍は何の手をかそうとしなかった。

いや、彼らが唯一つの街を護るために戦力を割くことなどほとんどしない。

いや、してもそれは事後処理だけだ。何かことが起こるまで彼らは動こうとしない。

それなのにその腰は非常に重く彼らがたどり着く頃には被害は終焉している。

どうしようもならなくなってからだ。

そんなことは日本を中心におきた大侵略戦争のことから十分に分かっていた。

故に冥獣の事件にしてもほとんどのものはそのことを知らない。

それはアーカムシティにだけ通用する言葉なのだ。

だから、牙王は非常に連邦軍を好きじゃない・・・むしろ、嫌っている。

 

午後になり日ももうすぐ大地に沈もうとするころ

「すいませーん」

教会のドアを開けてニット帽にゴーグル、ジャケット姿の少年が顔を出した。

「あら、ハジキちゃん」

ライカはその顔を確認すると嬉しそうに歩いていった。

そして、その頬を思い切り引っ張る。

「ハジキちゃ〜ん・・・今日はどうして学校をサボったのかな?」

「痛い、痛いってライカさん」

「これ以上、痛い目にあいたくなかった素直に言いなさい」

「ちょっと仕事で・・・」

「仕事・・・ハジキちゃん、まだあの運送屋さんで働いてるの?」

「・・・悪いんですか?」

ライカのとがめるような口調にハジキはあからさまにしかめっ面になる。

「別に悪いことじゃないとは思うわよ。九郎ちゃんと違ってちゃんとした仕事だし収入も有るし。

でも、学校にはちゃんと来ないと、将来、大変なことになるわよ」

「はいはい・・・それはそうと九郎さん知りませんか?」

「九郎ちゃん?家にいないの?」

「えぇ、尋ねたんですけど」

「そうなの。一体、何処をほっつき歩いてるんだか・・・九郎ちゃんなら今日は朝に来たっきりよ」

「そうですか・・・それじゃ」

ハジキはそういうと走り出した。

ライカはその手をとろうとするがそれよりも早くハジキは走っていってしまう。

「もう!明日はちゃんと学校に来るのよ!」

ライカが叫ぶがハジキに聞こえるかは不明だった。

「学校、あるんですか?」

そんなライカに牙王は後ろから話しかける。

「興味ある?」

「いえ」

「なくても明日から出てもらうけど」

「・・・嫌です」

「ダメ、そのぶっきらぼうなところを治すためにも貴方は学校にでたほうがいいわ」

「別にいいです。治さなくても」

「ダメ」

そんないい合いをしばらく続けて・・・

「はぁ・・・いいわ、牙ちゃん、お買い物いってきて」

「・・・唐突ですね」

「いいの。とにかくいくの・・・もう、こんなことじゃ諦めないわよ」

ライカの目が恨めしげに燃えていた。

そんな視線を感じつつ牙王はため息混じりに歩き出した。

 

 

牙王はライカから頼まれた買い物をするためにぶらぶらとあるいていた。

「(地皇・・・極点王・・・何か大きなものを背負わされたな)」

牙王はまだ、完全に納得はいっていない。

九郎はどうするのだろう。

拒否をしていたがアルは納得する様子など微塵もなかった。

そんなことを考えながら歩いていると突然、一台のスクーターが牙王に向かって走ってくる。

「うわぁ!」

スクーターのライダーがブレーキを踏みハンドルをきろうとする。

だが、それよりも先に牙王はスクーターを掴むとそのまま動きを止めた。

「っつ・・・大丈夫か!?」

ライダーは驚き尋ねてきた。

「あぁ、前方不注意だぞ」

「すまない・・・でも、あんただって道路の真ん中で突っ立ってるな」

「そうだな。お互い様ってことで」

牙王はそういうと手を離した。

「そうだな」

「ん・・・お前、ハジキか?」

「何で俺の名前を?オレは見たことないけど」

「さっき教会に来ただろ。あの時、いたんだ」

「新しく来たやつか?」

「まぁな・・・どうしたんだ?」

「あんたには関係ないだろ」

「いや、随分と焦ってるみたいだから」

「・・・石を探してるんだよ」

「暇だから手伝う」

「そんな理由で手伝って欲しくない」

「少しぐらい話を聞きたい」

牙王のその言葉にハジキはため息を吐いた。

「オレは真田ハジキ。あんた、名前は?」

「オレは疫神牙王」

 

「それでアル=アジフを見失い更には破壊ロボもやられるとは失態だなドクター」

暗く邪悪なる気配がうごめく部屋の中

黒い肌の男がドクターウェストを責める様に言った。

「くぅ、あれは見慣れぬロボットが急に出てきたからでちゃんとした準備があれば大丈夫だったのである」

ドクターウェストは悔しそうに弁解する。

だが、その言葉に黒い肌の男は嘲笑した。

「それはドクターの破壊ロボが劣っているからではないのか」

「アウグストゥス!」

ドクターウェストは黒い肌の男に掴みかからん勢いで叫んだ。

「よせ二人とも」

玉座に座る金髪の青年が声を発する。

「大導師」

「ドクターの相手にしたロボットは理論からして違うのだ。勝手が違って当然だ。

次からは気をつけてくれればよい」

「大導師・・・」

ドクターウェストは感動したという表情でマスターテリオンを見上げている。

「分かったのである。そうと決まれば早速、アル=アジフの行方を追うのである」

ドクターウェストはギターをかき鳴らすと立ち上がった。

「待て、アル=アジフは直接、狙わなくても良い」

「何ですと?」

「アル=アジフから抜け落ちたページを回収しろ。まずは奴の力を削ぐのだ」

「なるほど。わかったのである」

ドクターウェストはそういうとその部屋から出て行った。

「大導師」

入れ違いで一人の男が入ってくる。

黒いロングコートを着た青年。まるで研ぎ澄まされた刃のような瞳を持っている。

「カタナか」

アウグストゥスはその青年に視線を送る。

「ガドを手に入れてきた」

カタナはそういうと正方形の石を取り出す。

「おぉ、流石はカタナだな。仕事が早い」

「ふん、ドクターなどと一緒にされては困るな」

心外だという表情でカタナは言い放った。

「カタナ・・・確かガドは二つだったはずだが」

マスターテリオンはカタナを見下ろし尋ねた。

その言葉にカタナは驚く。

「何・・・?」

「奴らが所有していたガドは二つだったはずだ。みすみす逃したことになるな」

「くそ!」

カタナは悔しそうにそう叫ぶと翻り部屋を出ようとする。

「カタナ、そのガドをお前にやろう」

その言葉にカタナとアウグストゥスが驚く。

「本気なのですか?」

「ガドは我らの計画の中でもさしたる意味は無い。後はカタナ・・・お前に使いこなせるかどうかだがな」

カタナは手に握っている正方形の石をジーッと見つめた。

「ふん、オレがこの程度の石に負けるとでも思ってるのか?」

「思っていない。だから、それをお前に託すのだ」

「ありがたく受け取っておく」

カタナはそのまま部屋を後にした。

 

「それでそのガドってのを間違えて届けたのか」

牙王はハジキから詳しい話を聞いていた。

「あぁ、蜂須賀さんはもういいっていうんだけど・・・」

「じゃあ、なんで?」

「あの石はどうしても取り戻さなきゃならない気がするんだ。あの石を持ってたとき何だかドキドキしてきた。

この不満だらけで危険だらけの街の中で安心できたんだ」

「・・・・・」

その石の話をしているときのハジキの顔は輝いているように見えた。

「協力するよ・・・そうしたらなんか悩みがふっきれそうな気がする」

「悩み・・悩みがあるのか」

「あぁ・・・ちょっとしたな」

「ふぅん」

ハジキはあえて尋ねてこなかった。

 

それから二人は暗くなるまでずっとガドを捜し続けた。

真夜中、二人はトボトボと歩きながら家路についていた。

結局、手がかりは0だ。

「力になれなかったな」

「いや、仕方ない。それにそこまで固執する必要は無いんだし」

そして、二人があるアパートの前まで来ると一人の少女がタンスの上に座っていた。

「篠塚」

ハジキはその少女を見て驚いている。

どうやら、知り合いらしい。

「ハジキ君。横の子、友達?」

「まぁ、そんな感じかな」

「疫神牙王です」

「あたしは篠塚アラシよろしくね」

「どうも」

長い黒い髪の美少女だ。

何となくこの街に似つかわしくない様子をかもし出している。

というかここはアメリカだというのに牙王といい九郎といいハジキといい日系ばかりだ。

「どうしたんだ篠塚」

「荷物を入れるのに手間取っちゃって」

「そういや引っ越してきたばかりだっけ」

二人が他愛ない会話をしている横で牙王は欠伸をしていた。

かなりの時間だ。歩き詰めで疲れてもいる。

その時、突如として全身の身の毛がよだつ感覚。

感覚という感覚が一斉に圧迫される。

それはあまりにも邪悪でけだるかった。

「!」

牙王は振り向くとそこに黒いスーツに身を包んだ女性が立っていた。

「貴方が疫神牙王?」

女性は牙王に話しかける。

牙王は驚き飛びのいた。

「そんなに警戒しなくても良いんだよ」

「嫌だ」

牙王は即答した。

恐怖という感情が彼女と話すことを拒み続けている。

「地球の王ともあろうものが情けないね」

「!あんた・・・何か知ってるのか?」

「僕は何も知らないよ。逆に教えて欲しいぐらいさ。君が何者なのかを」

牙王は刀を抜いた。

白刃の刃が電気仕掛けの光を反射する。

「どうしたんだ?」

ハジキとアラシがやってきた。

そして、女のほうを見る。

「誰だ?」

「真田ハジキだね」

「オレのことを知ってる?」

「これを君に返しにきたんだ」

そういうと女はハジキに向かって正方形の石を放り投げた。

ハジキはそれを受け取る。

「これは・・・ガド。なんでお前が?」

「その石は君にこそ相応しいものだから。それじゃあね。牙王、ハジキ」

そういうと女は再び暗闇へと戻っていった。

「何者だったんだ・・・」

牙王は納まる悪寒に安堵の息を漏らす。

「さぁ」

ハジキも突然、求めていたものを渡されて困惑していた。

「お前が持っていたのか」

再び突然の来客が現れる。

本当にイベントにことがかかないと牙王は思った。

これほどまでの密度で生きている日はほとんどない。

「そのガド、渡してもらおうか」

「ダメだ!これはオレのものだ」

ハジキは思わず叫んでいた。

自分のものじゃないと分かっているのにそう叫んでいた。

その瞬間、ガドが光を放った。

そして、周囲の機械を吸い込み始める。

「なんだ・・・この力?」

牙王は今まで見たことも無い力の流れに困惑している。

石を中心に機械が融合を開始し人型へと組みあがっていく。

「な・・・なんだ?ロボット・・・」

ハジキは目の前で組みあがったロボットを見上げて呟いた。

全長は4メートルほど、車が大量に混ざったためか肩からマフラーが伸びている。

「鉄鋼人・・・貴様もか」

ガドを取り戻しにきたカタナがその姿を見て驚愕している。

「鉄鋼人・・・こいつが」

ハジキはそれに触れるとそのロボットは反応した。

まるで鼓動が聞こえてくるかのようだ。

ハジキはそのまま鉄鋼人に飛び乗った。

「ふん、だが鉄鋼人を手に入れた程度でオレに勝てるか」

カタナは後ろにおいてあったトラックの荷台に飛び乗るとそこに鎮座してあるロボットに手を触れる。

左腕がガトリング砲となっている鉄鋼人。

「あいつも同じ・・・」

「同じ鉄鋼人同士・・・負けるわけが無い。いくぞ、ゼロ」

カタナが叫ぶと鉄鋼人はガトリング砲を撃った。

弾丸がアスファルトを撃ち抜く。

素早い身のこなしでハジキと鉄鋼人はそれを回避した。

「やめろ!何で攻撃して来るんだ!」

ハジキは突然、ガドを奪おうとしてきて更には攻撃を加えられ驚いている。

「オレの目的がガドの回収だからだ。そして、鉄鋼人は極めて貴重なサンプルだからな」

「サンプル・・・何が目的なんだ」

「オレがブラックロッジだと言えば分かるだろ」

ゼロはガトリング砲でハジキを攻撃する。

ハジキの鉄鋼人は足のローラーを回転させ回避させる。

「ブラックロッジ!」

ハジキだって良く分かっている。

それがどういう組織なのかということが。

関わっちゃいけない。関わればたちまちにその理不尽な暴力にその命を落とすこととなる。

ハジキとカタナの間に牙王が立ちふさがる。

「逃げるぞ。ハジキ」

牙王は刀を後ろ手に構えてカタナを睨みつける。

「逃げるって・・・生身で立ち向かうつもりか!?」

ハジキはいきなり刀を構えて割って入った牙王に驚いている。

「まさか・・・出ろ、極点王!」

牙王が叫ぶと眼前の空間が極点王へと変換されていく。

50メートルを超す異様がその場に出現した。

「何だと!?」

カタナは突然、出現した極点王に驚愕している。

普通に考えてこの体格差はおおしがたいように思える。

だが、それでもカタナはガトリング砲を極点王に向けた。

極点王は光り輝く瞳をカタナに向けた。

負けじとカタナはその威圧を睨み返した。

だが、その瞬間、極点王は霧散しその存在を突然と消した。

「消えた・・・」

そして、前を向き直るとその場にもはやハジキ達はいなかった。

逃げたのだ。

極点王を出現させたその隙をついて。

「逃げた・・・逃がしたか・・・くそっ!」

カタナはゼロから降りると悔しそうにゴミ箱を蹴り飛ばした。

その瞳はギラギラと光る刃のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

アーカムシティに隣接する大都市パラダイムシティ。

そこはメモリーを失った街と呼ばれている。

そこの住人は総じて40年前からの記憶を失っていた。

だが、そんな都市でも犯罪が収まることは無かった。

そこで活躍するのがネゴシエーターという職業だ。

そして・・・そこにはメガデウスと呼ばれる巨大ロボットが存在していた。

 

次回

スーパーロボット大戦〜OVER THE GOD〜
第三章      地球混迷編

第四話 ビッグオーショータイム

命を護る牙となれ、牙王