スーパーロボット大戦

〜OVER THE GOD〜

第四章         宇宙混沌編

第一話 機械の心

 

宇宙・・・そこはこの地球圏において重要な役目を担っている。

増えすぎた人が移住するコロニー。

資源採掘用の衛星。

数多くの工場や会社の存在する月も重要な場所といえるだろう。

これらのものが無ければ現在、地球は存続することが出来なくなっていた。

 

遂、一ヶ月前この宇宙で一つの大きな作戦が行われていた。

それは地球人類全ての運命を決定付ける作戦だった。

その時、人々の心は一つに団結していた・・・

いや、そのように見えただけかもしれない・・・

人は住む場所の拡大によりその思想をより複雑なものとしていった。

地球原理主義者の集団ティターンズ。

コーディネイターこそが人類の新たなる始祖となるべきだと主張するザフト。

その二つは決して相容れることは無かった。

一つの大きな事件がおきた。コーディネイターとスペースノイドの自治権要求を繰り返す一つのコロニーに

ティターンズが毒ガスを注入したのだ。

それは30番地事件と呼ばれ連邦軍でも特に極秘とされることとなる。

だが、その所業にザフトは激昂しティターンズ、地球連邦に戦争を仕掛けた。

スペースノイドたちは反地球連邦組織エゥーゴの活動を活発にさせる。

宇宙・・・人が目指した新たなる新天地で人は醜い争いを続けていた。

 

一機のロボットが宇宙空間で作業をしている。

どうやら戦闘で発生したデブリの回収作業を行っているようだ。

そのロボットはモビルスーツではなかった。

大きさは同じぐらいなのだがその構造はモビルスーツとは違う。

赤と白をメインカラーとして構成されたボディは美しく女性的なフォルムだ。

マニピュレーターは複雑でより人間に近い形状をしている。

モビルスーツよりもエステバリスやアームスレイブに近い感じがする。

そのロボットは一つのデブリに取り付くと何かを感じて顔を上げた。

「ルクティ、デブリの回収はそこまでにして艦に戻ってきてくれ」

「はい、分かりました」

そのロボット・・・ルクティと呼ばれ者はそのデブリを持ったまま近くに見える艦へと飛んでいった。

 

「ハーディン博士、ロストレスボディの動作は順調のようだな」

反地球連邦組織エゥーゴ所属の新造戦艦アーガマの艦長ヘンケンが椅子に座る長髪の青年に話しかけた。

「ヘンケン艦長、彼女はルクティという名前があります」

「すまないな。それにしても・・・大した機体だな。モビルスーツとは違う技術で作られていると聞くが・・・

スーパーロボットか何かなのか?」

「いえ、スーパーロボットというのは超エネルギーで動いてたった一機で戦局すら変えうる力ですからね。

ルクティにはそんな力はありません・・・それにこんなご時世でなければルクティはあの姿になることはなかった」

「そうだったな・・・彼女には悪いことをしている」

「いえ、貴方たちエゥーゴは少なからず分かってくださっている。それは感謝しても仕切れないぐらいです」

「よしてくれ博士。結局、我々はルクティの持つ力を当てにして戦争を行うんだからな」

「えぇ・・・」

ハーディンは悲しそうな表情でメガネを上げた。

 

格納庫にルクティが降り立つ。

実際の名前はルクティオンスと呼ばれるロボットでロストレスボディと呼ばれるモビルスーツとは違う機種に

分類される。実際にロストレスボディは二体しか存在しないので機種と分類するには不釣合いだが

その性能、こと機動性に関しては現存するモビルスーツを超えていると言われている。

「にしても・・・整備マニュアルをもらってもまだ、よく理解できないな」

アーガマの整備班長アストナージは目の前に立つロボットを眺めながら呟いた。

装甲材質、動力炉ともにモビルスーツとは異なるもののどちらも性能面ではガンダリウム合金や核融合炉と大差は無い。

しかし、この機体がモビルスーツと最も異なる点が一つだけあった。

それは・・・

 

「クワトロ=バジーナ大尉だ」

「始めまして。ハーディン=エルブというしがない博士です。貴方の噂は聞いてますよ」

「こちらも貴方の噂は聞いてます。ロストレスボディと言ったか・・・優れた機体だな」

「見たのですか?」

「あぁ、艦に乗るときにデブリを回収しているのを目撃した。あれほど人間に近い動きが行えるとはな。

ティターンズの新型・・・いや、モビルファイターに通じるものがある」

「流石は大尉ですね。ルクティオンスの間接などはモビルファイターを参考にしてるんですよ」

ハーディンは驚いた表情で言った。

目の前にいるクワトロ大尉はモビルスーツのパイロットだ。

彼がそこまで見れているとは・・かなりの洞察力を持っているということだろう。

「戦闘経験はあるのか?」

「残念ながら。実際に起動してから数日しか経ってませんので」

「そうか・・・では、私と模擬戦を行うとしよう」

「!」

ハーディンは驚いた。

クワトロといえばエゥーゴでも屈指のエースパイロットだ。

彼はエゥーゴの新型モビルスーツ赤いリックディアスに乗りティターンズと交戦している。

そのデータを見せてもらったがその動きは鮮やかでここまでモビルスーツを巧く扱えるものがいるのかと

驚かされたものだ。

そんな彼との戦闘は大変貴重なデータとなる。

「うわぁ!凄い、いきなりニュータイプと戦えるんですね!!」

突如として館内に女性の声が響き渡った。

いや、女性というよりも少女といったほうが良いだろう。

その声は無駄に明るいとしか言いようが無い。

そして、その声は通信機から発せられていた。

「ルクティ!いきなりすぎるぞ」

「えぇ、博士。博士が呼んだんですよ」

モニターに一人の少女の姿が写る。

年は16あたりだろうか、ロングヘアーのかわいらしい少女だ。

その少女は不機嫌な表情でぶつぶつと言っている。

「彼女は?」

「彼女がルクティ・・・貴方の模擬戦の相手です」

クワトロはモニターを見つめる。

「君があの機体のパイロットか」

「いえ、違います」

「?どういうことだ?」

即答で否定されてクワトロは怪訝な表情を浮かべる。

彼女が模擬戦の相手ならばあのロストレスボディルクティオンスのパイロットのはずだ。

でなければ・・・

「クワトロ大尉にはお話ししてませんでしたね。彼女はルクティ・・・ルクティオンス自身」

「!何だと!?」

クワトロはたいそう驚いている。

それもそのはずだ。

確かにAIは発展してきている。

だが、人と同じように思考するAIなど聞いたことがなかった。

いや・・・

「まさか・・・超AIだと言うのか?」

地球に存在する組織GGGが持っているといわれている技術だ。

その確証はなく、噂程度のことでしか聞いたことがなかったが

「惜しいですね。確かに獅子王博士から頂いた超AIの技術を使ってはいますが超AIではありません。

彼女はロストレスボディに宿る心。マシンハート、ルクティです」

クワトロはその言葉に更に驚く。

この男は機体の設計・・いや、装甲や動力機関、更にはパイロットまで作り出したというのか・・・

そんなことが出来る天才がいるというのだろうか・・・

クワトロは不信な視線をハーディンに送る。

「話は分かった。一つ、聞いておく。君は我々の仲間なのだな?」

「えぇ」

ハーディンは即答した。

その笑顔は一切の邪気が感じられない。

「流石のクワトロ大尉も驚いたようだな」

「あぁ、あのモニター越しに写る少女・・・彼女は実在しないのだな」

「そういうことらしい。マシンハートの処理能力で作り出した3Dモデルなんだそうだ。

既に彼女は艦の中ではアイドル的な存在になっているよ」

「そうか。それは良い事だな。これならば誰も彼女を機械としてみようとはしないだろうさ」

クワトロは笑顔でハーディンと話しあっているルクティを見て呟いた。

その表情はまるで本当の人間のような温かみを持っている。

 

宇宙空間

赤いリックディアスとルクティオンスが向かい合うように浮いている。

リックディアスは一見、鈍重そうな外見だがその機動性は中々のもので宇宙空間での戦闘力はかなり高い。

ルクティオンスは機動性は実証済みだがそのほかの性能については全くの未知数だった。

「弾は全てペイント弾を使用します。先にコックピット・・・ルクティオンスの一応、中枢はモビルスーツと

同じ場所ですから。そこを撃てば終わりです」

ハーディンが二人に通信で説明する。

「了解した」

「了解です」

ルクティは張り切っていた。

初めての戦闘だ。演習とはいえ相手はエースパイロット。

一切の気の緩みなんて許されない。

自分の中には数々のモビルスーツ、スーパーロボットなどの戦闘データが入力されている。

それを使えばクワトロ相手でもそれなりに戦えるはずだ。

「では、開始してください」

その声と同時にルクティオンスは腰に装着されたハイスピードライフルを抜いて撃った。

通常のライフルよりも弾速が上げられているそれは一瞬にしてリックディアスに向かう。

だが、既にそこにリックディアスの姿は無かった。

「甘いな」

リックディアスはルクティオンスの足に向かってペイント弾入りのマシンガンを撃った。

「きゃっ!何時の間に」

ルクティはバーニアを噴射し何とかそれをかわすが直ぐに進行方向に対し弾丸が飛んできた。

「きゃっ!弾道計算、パターン入力、虚数演算」

ルクティは相手の動きを見て思考すると急激な減加速を繰り返し器用に弾丸を避けていく。

「ほぉ、機動性は中々のものだな」

クワトロは追撃しつつその動きを見て感心していた。

パイロットが生身の人間でないルクティオンスはそのスピードに限界は無い。

あるとしてもそれは人間よりもよほど頑丈な機械の限界だ。

この程度の動きでは壊れはしない。

「うぅ、計算・・・間に合わないです。射撃パターン複数化・・・ついていけません〜」

ルクティは細かい動きでこれ以上の回避は不可能だと判断し急加速で一気にリックディアスを引き離す。

「真っ向勝負は諦めたか」

「無理です!私のデータにもこれほどのパイロットなんて・・・二件該当・・・

って、アムロ=レイとシャア=アズナブルじゃないですか!

そんなレベルの人に勝てるわけがありませんよぉ〜」

ルクティは既に諦めモードに入っていた。

クワトロは的確に動き正確な射撃を繰り返している。

ただ、正確なだけならまだ良い。それだけ計算がしやすいからだ。

だが、クワトロの射撃はそれだけではない。確実に虚を突いてくる。

まるでこっちがどうやって動くかが分かっているかのように。

「あれが優秀なモビルスーツパイロットが見せる先読みですか・・・アレを封じるには」

ルクティは自分のデータベースにアクセスをかける。

先読みの打開方法・・・

そして、出てきた答えた。

「相手の意表をつく動きか相手の更に先を読む・・・です!」

ルクティは急旋回するとリックディアスに向かっていく。

リックディアスはそれを迎撃しようとマシンガンを撃つがことごとく外れていく。

その軌道が可笑しいのだ。

通常の人間ではありえない軌道で回避していく。

一見、無駄に見える動きもさほどの負荷を受けないならその意味を失っていく。

「いけぇ!」

次はルクティの反撃の番だった。

ハイスピードライフルをリックディアスにロックオンし撃ちつづける。

だが、リックディアスはそれを紙一重で回避していった。

そして、次第にリックディアスの攻撃がルクティオンスの動きをとらえ始める。

どうやら、想定以上の動きに慣れ始めているらしい。

なんという順応性だろうか・・・

「そ・・・そんな。あれが本物のエースパイロットの動きなの」

ルクティオンスは旋回を繰り返し撃ちつづけるが一向にリックディアスを捕らえられない。

だが、ルクティは遂にその足に被弾を受けてしまう。

「きゃぁ!脚部異常・・・ということにして機能停止・・・そんな」

ルクティは律儀にダメージを受けたフリをして足の動きを止める。

それによりルクティの機動性が一気におちた。

足のバーニアをフルに活用して急旋回を繰り返していたのだそれが無くなれば機動性はおちる。

それでルクティに勝てる見込みなど一切無かった。

あえなく撃墜されてしまう。

 

「はわぁ〜・・・やっぱり強いです」

ルクティは自分の体の前でため息をついていた。

「何故、君がそこにいる!?」

それを見たクワトロは驚きの声を上げる。

ルクティの少女姿は仮想の姿のはずだ。

だが、その少女が実際に目の前にいるのだ驚かないはずが無い。

「あぁ、クワトロ大尉。私は本体のある程度の周囲でなら映像を写せるんです」

ルクティはそういうと近くのものを触ってみせる。

それは触れずに通過していた。

「なるほど・・・とんだオーバーテクノロジーの塊だな君は」

クワトロは納得すると素直に驚いていた。

この地球圏にこれほどの技術が存在しているとは・・・

「えへへ、良く言われます。でも、どんなに凄い技術力で作られてても本物の技術ってのには敵わないんですね」

ルクティはクワトロを見て呟いた。

自分はありとあらゆる戦闘データを入力されている。

だから、それらを用いれば撃破も夢ではないと思っていた。

だが、実際に叩きつけられた現実は厳しいものだった。

全く歯が立たない。

「そんなことは無い。実際に君の動きには驚かされた」

「でも、一発も当てられなかったです」

「戦闘は時の運で決まるものだ。次はどうなるかは分からないさ」

「そうですか・・・?」

「あぁ、君の力・・・あてにしてるぞ」

「本当ですか!?やったぁ!」

ルクティは飛び跳ねて喜んでいる。

その姿はもはや人間にしか見えなかった。

「(人間同士分かり合えない中で機械が意思を持ちこうも友好的とはな・・・これはなにかの皮肉か)」

クワトロは目の前のルクティを見てそう感じていた。

これほどまでに人に近い心を持つルクティ。

それは新たなる時代の到来となにかの終わりを暗示しているかのようだった。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

アーガマの戦力として運ばれてくる二機の機体。

だが、それを狙い突如としてティターンズの部隊が襲来する。

運び屋アイビスはその機体を守り抜くことが出来るのか!?

おちこぼれアラドは自分の実力を証明して見せるのか!?

二人の意地が宇宙で激突する

 

次回

スーパーロボット大戦〜OVER THE GOD〜
第四章     宇宙混沌編

第二話 バニシングトルーパーと銀の流星

機械の心は人に何をもたらすのか・・・?